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戸田恵梨香『大恋愛』が『紅の豚』に惨敗……視聴率1ケタ転落で大丈夫?

■作家が“女神”を求める心理

「20年間、書きたいネタも書きたい言葉も何一つ浮かばなかった。そのオレにもう一度書きたいと思わせた女、その女の運命の相手は、オレではなかったのだ。彼女はオレに小説を書かせるために遣わしてくれた女神だったに違いない」

 21歳で文壇に躍り出たものの、40歳になるまで2作目が書けなかった小説家の真司くんが、尚ちゃんに「別れよう」と告げた直後のモノローグです。真司くんは今回、尚ちゃんとの出会いと恋の顛末を小説にすることを決意していました。それにしてもまあ、「女神」とは身勝手な言い草です。1人の人間を“神聖視する”ということは、その人を“人間扱いしない”のと同じことであって、尚ちゃんを「女神」と呼んだ時点で、真司くんは尚ちゃんの将来から目を逸らしたことになる。あるいは、目を逸らした自分の後ろめたさへの言い訳として「女神」という、いかにも心地よい称号を与えることで誤魔化しているわけです。

 でも、このあたり、やけにリアルに感じたんです。書けなくなった作家にとって、「書くことが頭に浮かぶ」というのはそれほどまでに、とても自発的な何かとは思えない、天啓としか言えないくらい奇跡的な悦びなのだろうなと。あのスティーブン・キングだって「ずっと妻に読ませるためだけに書いてる」って言ってたし、脚本の大石静さんは女性だけど、このような“この人が書かせてくれてる”という瞬間を体験したことがあるんだろうなと思わせる、血の通ったセリフだったと思います。

 ついでに技巧的なところだと、尚ちゃんが買っておいた2つのアップルパイを、急な来客のために結局2人で食べられなかった場面。これまで、美味いものをさんざん一緒に食べてきた2人だけに、さりげなく別れを予感させていて、いいシーンでした。

 

■ところで「LINEを見ろ」じゃダメなのか

 2008年に公開された『ガチ☆ボーイ』という映画があります。主人公の大学生・五十嵐は高次脳機能障害による記憶障害を負っていて、朝起きると、昨日までのことを全部忘れている。その彼は毎日、必死でノートに日記を書いて、部屋中に「日記を見ろ!」という貼り紙をしていました。昨日日記を書いたことも忘れるから、起きたらその貼り紙を見て日記を見返し、それまでの人生を把握することから1日を始めていたのです。

 今回、MCIの進行を示す場面として、尚ちゃんが「着替え持って行く」と紙に書いて玄関の内側に貼り付けるシーンがありました。物忘れを自覚している尚ちゃんが、これだけは忘れないように、真司くんからLINEで頼まれたことをメモ書きする悲しいシーンです。

 これ、以前もちょっと引っかかったんですが、尚ちゃんが何度かLINEで送られてきた物事を忘れちゃうシーンがあったんです。マンションの内覧をすっぽかしたりとか。2人はたびたびLINEでやり取りしてるし、ちょっと前の会話なんて嫌でも目に入るし、そもそも電話だと忘れちゃうことにエビデンスが残るというのもLINEがこれだけ普及した要因だと思うんですが、日常的にLINE見るだろうし、それも忘れるようだったら、予定をなるべくLINEに記録を残すようにしつつ、全部ひっくるめて「LINEを見ろ」って玄関に貼っとけばいいんじゃないかと。

 この「LINE(によるエビデンスの保全)と物忘れの関係」みたいなものが、ドラマの中でうまく処理できてない感じがしたんです。大したことじゃないし、それによってドラマがつまらなくなってるわけでは全然ないんですけど、そんな矛盾ともいえない矛盾が生じてしまうのも時代の流れだよなーなどとしみじみしました。もう少ししたら、このへんもうまく使えるデジタルネイティブなシナリオライターが出てくるんでしょうね。

 というわけで、今夜放送の第5話も楽しみにしたいと思います。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

最終更新:2018/11/09 17:00
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