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内村光良の“楽しむスタンス”が導いた『紅白』の成功──30年前の桑田ユーミン伝説の共演番組とは?

■『いいとも』最終回に似た興奮

 そしていよいよサザン。桑田佳祐ソロとしては昨年も出演しているがバンドとしては35年ぶりとなる大凱旋。まず「希望の轍」。原由子のピアノのイントロだけで会場が沸く。桑田は若いころのように変な格好をしたり奇をてらうようなことはしていない。なんならいろいろあって少々ふらついているようにすら見えたが、いい具合に力が抜けつつ、それでも振り絞るように踏ん張る様がやけにかっこよかった。そして2曲目。

 松任谷由美は自身のサプライズについて「平成最後のお祭りですから」と言っていた。北島三郎も5年ぶりの帰還で「まつり」を歌った。そしてサザン最大のお祭りソング「勝手にシンドバット」。平成どころか昭和がフラッシュバックする。出川哲朗も野村萬斎も口ずさんでいる。出川は内村と学生時代に一緒にコンサートに行っていたというから、自身のブレイクを経て、盟友司会の大舞台で共に聴く「あの時の曲」はたまらなかっただろう。

 曲の途中、舞台に集まってきた出演者の中から北島三郎にマイクを向け「今何時?」とあのフレーズを歌わそうとする桑田。誰と絡んだら盛り上がるかは嗅覚でわかっているはずだ。ところがかろうじて成功したようになっているものの、残念ながらイマイチ北島の声がマイクで拾えていなかった。

 若干のもやもやが残りかけたその瞬間、後方左端からフレームインしてくる人影が。ユーミンだ。

 誰か(位置的にaiko?)に急かされて出てきたように見えなくもないが、自分の役割を把握してるユーミンは、まず桑田のほっぺにキス、そして真横で「胸騒ぎの腰つき」とばかりに腰を振り、仲間のステージに華を添える。夢の組み合わせに沸き立つ会場。

 この場面で桑田と絡んで見劣りせず盛り上げられるのは、あの舞台上にいた中では確かに彼女しかいないだろう。

 もしこの時ユーミンが「私ごときが……」と少しでも遠慮していたなら、ここまで印象に残る回にはならなかったのではないか? いや代わりに誰かしらが出てきて(引っ張り出されて)それはそれで盛り上がったかもしれないが、それでもここまでの「ハッピー感」には至らなかったはずだ。

『いいとも』最終回でダウンタウン松本人志の「(とんねるずと共演したら)ネットが荒れる」というボケの中に潜むほんの数パーセントのフリを敏感に感じとりスタジオに「乱入」、奇跡の共演を実現させたとんねるず石橋貴明の勇気あるファインプレーを思い出す。双方が何を求められているかを感じ取り、直感で垣根を踏み越えたからこそ実現した光景。

 はしゃぐaikoやMISIA。背後で子どものようにぴょんぴょん飛び跳ねる内村。松田聖子もYOSHIKIもサブちゃんも嬉しそう。日本のニューミュジック史に残る光景だ。

「ラララ~ラララユーミンさーん」「ラララ~ラララ桑田くーん」という微妙に先輩後輩がわかる貴重な掛け合い。

「ウッチャンありがとう」「翔さんライブ行くから」「すずちゃん最高」「サブちゃんさすが」桑田が締めるところを締めつつまとめる。曲が終わると同時に内村は「NHKホールすげーぞ!」「なんだか幸せです」と叫んでいた。

■30年前の共演番組とは?

 桑田圭祐と松任谷由実は実に30年ぶりのテレビ共演。前回、共演の舞台となったのは1986年と87年に放送された日テレのクリスマス生特番『メリークリスマスショー』で、桑田自身が企画し、普段テレビに出ないようなミュージシャンも多数出演した。司会は当時まさにスターの階段を駆け上ってる最中の明石家さんま。

 紅白放送中から30年前の共演を懐かしむ声が一部ネットに上がっていたが、ユーミン当人も番組終わりの取材で、「桑田さんとは大昔『メリークリスマスショー』というテレビ番組で一緒にステージに立った以来。久しぶりで楽しかった」と振り返っている。彼女もやはり思い出していたのだ。

 この番組のために「Kissin’ Chiristmas(クリスマスだからじゃない)」(ユーミン作詞・桑田作曲)というクリスマスソングを作って歌ったり、ユーミン、原由子、アン・ルイスで「年下の男の子」をアレンジして歌ったり、オープニングから全員で「Come Together」(ビートルズのあれ)を演ったり、これを夜7時から生放送していたのだから隔世の感に驚く。

 他の出演者も豪華で、鮎川誠(シーナ&ザ・ロケッツ)、ARB、Char、吉川晃司、小泉今日子、鈴木聖美雅之姉弟……さらにVTRで、忌野清志郎、BOØWY、山下洋輔、チェッカーズ、ALFEE……と錚々たるメンバー。

 氷室京介と吉川晃司がBOØWYの演奏で「HELP!」を歌ったり、忌野清志郎が桑田と一緒に桑田書き下ろしの曲(「セッションだッ!」)を演ったり、泉谷しげるがチェッカーズをバックに「赤鼻のトナカイ」を激しめに演ったりと、今では考えられない組み合わせだらけ。

 山下達郎も出演はしていないが裏で楽譜製作などでいっちょ噛んでいたというから恐ろしい。

 ユーミンに至っては「前川清さんと付き合ってた」とアン・ルイスの過去を笑いながら暴露したりと、当時の堅苦しい歌番組では見せないミュージシャン同士のくだけた顔をたくさん見せていた(アンも「忘れてくれよー」と笑いながら認めてた)。

 大御所となった今も、紅白の大舞台で身軽にあの頃のノリを見せてくれたのは嬉しい限りだ。

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