深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.516

往年のカルトホラー映画が続編vsリメイク対決!! 衝撃の展開『ミスター・ガラス』『サスペリア』

2019/01/26 21:00

リメイクという概念を変えてしまう新作『サスペリア』。過激なダンスが、人間ならざるものを呼び寄せる。トム・ヨークの音楽もせつない。

 SNSの世界が多様な価値観で成り立っているように、集団創作によって生まれる映画も様々な価値観を内包しており、それゆえに観る人によって異なる解釈が可能となっている。イタリアンホラーの巨匠ダリオ・アルジェント監督の代表作『サスペリア』(77)、毎回のように“ドンデン返し”が話題を呼ぶM・ナイト・シャマラン監督のヒット作『アンブレイカブル』(00)がそれぞれ新解釈によって生まれ変わった。どちらも深遠なテーマをはらんだ、進化したドラマとして楽しませてくれる。

“決して、ひとりでは観ないでください”というキャッチコピーによって日本でも大ヒットしたカルトホラー『サスペリア』。性的マイノリティーたちの純愛もの『君の名前で僕を呼んで』(17)で知られるルカ・グァダニーノ監督も13歳のときにテレビ放映された『サスペリア』にハマった一人だった。西ドイツの名門バレエ団の寄宿学校を舞台に、バレリーナを目指す少女たちの思春期ホラーといった趣きのあったオリジナル版から、学校の創立者は魔女だったという伝説部分にルカ監督は着目し、独自にストーリーを膨らませたものにしている。

 名門バレエ学校からコンテンポラリーダンスカンパニーへと設定をアレンジされたリメイク版で強烈なインパクトを与えるのは、ダンスカンパニーならではの舞踊シーン。ダンサー特有の常人離れした身体性を、ルカ監督は呪術思想と結び付けた。秘密の多い寄宿舎から逃げ出そうとした女の子は、カンパニーでの活躍を夢見る主人公スージーの願いが込められたダイナミックな踊りが呪いへと反転することで、直視しがたいほどに人体破壊されることになる。舞踊とは人間ならざるものに捧げる神事であり、また舞台とはあの世とこの世とを仲介する空間でもあるという、いにしえから続く芸能の在り方をまざまざと思い出させてくれるシーンとなっている。

ダンスカンパニーのカリスマ振付師役を演じたティルダ・スウィントン。名前を伏せた形で、3役を演じ分けている。

 ダンサーならではの選ばれし特権的肉体性に加え、ルカ監督はオリジナル版が公開された1977年という時代性にも注目した。終戦から4年後に東ドイツと分裂した西ドイツは、1970年代に入るとドイツ赤軍による政治テロによって街は騒然としていた。ダンスカンパニーの背後でうごめく不可解な事件、さらに頻繁に起きるテロ騒ぎによって、もうひとりの主人公である心理療法士クレンペラーの脳裏に、第2次世界大戦中に妻と生き別れた暗い記憶が甦る。あの大戦のさなか、多くの人たちが愛する恋人や家族と再会することを願いながらも、その願いは叶えられなかった。叶えられなかった強い願いは、やがて深い呪いへと姿を変えていく。祈りと呪いは背中合わせの関係であることを思い知らされる。東日本大震災が起きた2011年に放映されたダークファンタジーアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(毎日放送、TBS系)を連想する人もいるかもしれない。

 SMの世界に身を投じるヒロインを演じた『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(15)でブレイクしたダコタ・ジョンソンが、リードダンサーを目指す主人公スージー役。『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(13)や『ドクター・ストレンジ』(16)などで人間を超越した存在を演じてきたティルダ・スウィントンが、カリスマ振付師のマダム・ブランほか複数の役を演じ分けている。尖った作品が大好きなクロエ・グレース・モレッツも意外な場面に登場。また往年のファンには、オリジナル版のスージーを演じたジェシカ・ハーパーが重要な役を演じているのも見逃せないところだ。

最終更新:2019/01/28 18:47

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