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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.516

往年のカルトホラー映画が続編vsリメイク対決!! 衝撃の展開『ミスター・ガラス』『サスペリア』

『ミスター・ガラス』でデヴィッド、ケヴィン、イライジャの3人が集結。3人は超人なのか、それとも単なる狂人なのか?

 現在公開中の『ミスター・ガラス』(原題『GLASS』)は、ナイト・シャマラン監督の『アンブレイカブル』の続編であり、近年のヒット作『スプリット』(16)の登場キャラクターたちも巻き込んだ“シャマラン・ユニバース”とでも呼ぶべき世界となっている。『アンブレイカブル』で自分には超人的パワーが備わっていることに気づいたデヴィッド(ブルース・ウィリス)は、成人した息子ジョセフ(スペンサー・トリート・クラーク)とホームセキュリティーの店を営む傍ら、フィラデルフィアにはびこる犯罪者たちを懲らしめる自警団活動を極秘に行なっていた。そんなある日、デヴィッドは多重人格者であるケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)と路上で遭遇。ケヴィンが街で多発する少女誘拐事件と関係していると直感したデヴィッドは、ケヴィンの中に眠る23人の人格の中で最凶人格のビーストと対峙することになる。

 互角のバトルを演じたデヴィッドとビーストだが、駆け付けた多数の警官たちに捕獲され、施設へと収容されるはめに。そして、その施設には『アンブレイカブル』でデヴィッドの超人性を実証するために恐ろしい事件を企てた知能犯イライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)も幽閉されていた。精神科医ステイプル(サラ・ポールソン)は、この3人は自分のことを超人と思い込んでいる誇大妄想狂だと診断し、治療によって常人に戻そうとする。一堂に会したデヴィット、イライジャ、ケヴィンは、精神科医の常識を遥かに上回るとんでもない行動を起こす。

 邦題が「ミスター・ガラス」となっているように、今回はガラスのように壊れやすい肉体の持ち主であるイライジャが物語の核となっていく。デヴィッドやビーストのような超人的なパワーは持っていないイラジャは、どうして自分のような脆弱な存在がこの世に生まれてきたのかを幼い頃からずっと考え続けてきた。自分のような最弱の存在がいるのならば、真逆な最強の存在もいるに違いないと、不死身の体を持つデヴィッドを見つけ出した。超人に目覚めたデヴィッドの存在が、ケヴィンの中に眠る最凶人格ビーストも引き寄せることになる。3人の出逢いは偶然の産物ではなく、必然の出来事だった。

 デヴィッドが不死身の体を持っていることも、ケヴィンが24人もの人格を持つ多重人格者であることも、精神科医ステイプルによれば単なる本人の思い込みらしい。目の前で繰り広げられる超常現象を、ステイプルは薬物の過剰摂取、もしくは異常なまでの躁状態が招いたものと強引に解釈しようとする。結局、現代科学の範疇でしか物事を判断できない女医ステイプルは、イライジャたちの存在を完全には理解することができない。

 超常現象は信じる人の目にだけ映る。信じればそれは存在する。ナイト・シャマランの世界は、どこか宗教的な匂いが漂う。そして“ミスター・ガラス”ことイライジャは、フィクションとリアル、宗教と非宗教との世界を隔てる透明なガラスの壁を突き崩そうとする。ガラスの壁が取り壊された世界は、いったいどんな光景が広がっているのだろうか。

 オカルト映画のオカルトとは、occuilere(隠されたもの)というラテン語が語源となっている。リメイク版『サスペリア』とヒット作の続編『ミスター・ガラス』は、隠されたものを白日のもとに晒そうとする。我々はかつてない、新しい恐怖を体験することになる。
(文=長野辰次)

『ミスター・ガラス』
監督・脚本/M・ナイト・シャマラン
出演/ジェームズ・マカヴォイ、ブルース・ウィリス、アニャ・テイラー=ジョイ、サラ・ポールソン、サミュエル・L・ジャクソン
配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン 1月18日より全国ロードショー中
(c)2018 UNIVERSAL STUDIOS
https://www.disney.co.jp/movie/mr-glass.

『サスペリア』
監督/ルカ・グァダニーノ 音楽/トム・ヨーク
出演/ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、ミア・ゴス、クロエ・グレース・モレッツ、ルッツ・エバースドルフ、ジェシカ・ハーパー、エレナ・ファキナ 
配給/ギャガ R15+ 1月25日(金)より全国ロードショー
(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC All Rights Reserved
https://gaga.ne.jp/suspiria

 

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最終更新:2019/01/28 18:47
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