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コミカライズが物議の『ヒプノシスマイク』、同人イベントはお通夜か、はたまた大盛況だったのか?

コミカライズ第一号『少年マガジンエッジ2019年1月号』(講談社)は異例の完売にもなった

 オタクコンテンツは「ちょっとしたブーム」という言葉では収まりきらない、一時代を牽引する「覇権コンテンツ」がたまに生まれる。女性向けコンテンツにおいて今、覇権に近い位置にいるのが男性声優によるラッププロジェクト『ヒプノシスマイク(以下ヒプマイ)』だろう。2017年9月のサービス開始からおよそ1年、それまでラップとドラマが収録されたCDとライブだけという絞った供給でオタクの妄想を掻き立てて続けてきたが、一転、18年12月より3誌でコミカライズ展開といういきなりの超供給に舵を切った。しかし、その肝心のコミカライズの内容は物議を醸している。コミカライズでヒプマイは詰んでしまったのか、レポートしたい。

■「ヒプマイはコミカライズで終わった」とググれば、
  同じ考えの人しか引っかからない

 まず、個人的にはヒプマイのコミカライズにはがっかりしており、百瀬祐一郎氏(ヒプマイシナリオ担当)は私の中で「買い換えたばかりのスマホを紛失して欲しい人ランキング」上位にいるほどだ。

 ネットを使えばコミカライズにがっかりした人の声や、大きくバズった批評ブログも簡単に見つけられる。こういったものを見て「そうそう、やっぱり百瀬氏は買い換えたばかりのスマホを紛失すべきだし、スマホカバーに買ったばかりの六カ月定期もはさんでて欲しいよね」と自分の意見を強化させるのはネットの楽しさでもあるが、ネットの短所でもあり恐ろしさでもある。

 ネットは検索で同じ意見の人を見つけやすく、そのため、自説により固執してしまいがちだ。しかしそれはあくまで自分の検索で作り出した仮想世界であり、実態から乖離しているかもしれないのだ。

 それでは実態はどうなのか。著者は物議のコミカライズから約1カ月後の19年1月27日に、全国の都市部で各種同人イベントを主催する赤ブーブー通信社が主催のヒプノシスマイク同人イベント『Crazy Lyric Battle 2』に参加した。

 こちらは同日、多くの他ジャンルの同人イベントも併催される同人誌即売会だ。赤ブーブー通信社の発表によると、当日の参加サークルは14,201、そのうちヒプマイでの参加サークルは1,556と、二次創作において最多だった。

 ただし『Crazy Lyric Battle 2』のサークル申し込み締め切りはコミカライズ発表前だった。それからコミカライズが発表され、ガッカリして筆を折ったサークルもいるかもしれないし、欠席した人だっているかもしれない。

 当日、実際にイベントの様子を見てみたが、感想は「ヒプマイ、限りなく覇権」だった。著者はいくつかの同人ジャンルで同人誌を買ったり、また、同人誌を出す側になることもある。しかしこれだけ人でごった返したイベントは初めて見た。少なくともイベントの雰囲気で見る限り「コミカライズでお通夜」どころか、大盛況だったのだ。

 

■若者が多いジャンルは短命なのか?

 また『Crazy Lyric Battle 2』における来場者や、同人サークルの大多数が20代に見え、若々しかった。

 ファンが若者中心のジャンルは廃れやすいとも言われる。しかしこれも本当だろうか。若者は移り気だからというのがこういった意見の根拠で挙げられるが、飽きっぽい中年もいる(ソースは自分)。ただ、加齢に伴い腰が重くなるため中高年は一途に見えがちな傾向はあるとは思うが。

 むしろ「若者が多いジャンル」ならでは利点もあるだろう(当原稿において、若者とは「新社会人~アラサーまで(30ちょいすぎ)」とする)。まずメリットとして、この世代は、中年よりも確実に金を落とすと思う。

 これが「学生」まで若くなると、西野カナばりに震えるほど金がなく、東京ビッグサイトに行くまでのりんかい線やゆりかもめの、あの微妙に高い運賃でもうライフが削られてしまうだろうが、働き出し、かつ親元で暮らすなど低コストだったり、勤務先の給料がよければ、財布は一気に火を吹くことができる。

 収入が増えること以外にも、そもそも若者は中高年より消費に意欲的だ。自分が20代のころを思い出しても、学生時代から使えるお金が増えたことでの消費へのピュアな喜びがあったと思う。

 私は本来ドケチで、家でネットしながらビール飲めれば何もいらないし、オタクのわりに収集癖もコンプ欲もまったくない。そんなドケチでも20代はお金を使える喜びで結構あれこれ買っていた。デパートの一階で化粧品を買うなど、お金を使うことで世界が広がっていくことが嬉しかったのだ。

 ただ、これがさらに年を取りアラサーを超えると「子どもなど、オタ活より優先順位の高い課金対象ができる」など社会的事情でオタ活への課金を抑えざるを得ない人も出てくる。

 また、そういった事情がなくても、あれだけ熱狂的にものを買っていた「消費だんじり祭」のテンションは年とともに薄れていく。化粧品はドラッグストアで十分だ、など、それぞれが自分の好みやこだわりに応じ、出費のオンオフのスイッチを調整できるようになっていく。「熱狂」を失う代わりに「分別」がついてくるのだ。

 もちろん大人でも分別をつけられない人もおり、多重債務者からのウシジマ君コースになれる才能があるともいえる。しかしそんな、いくつになっても金をパカパカ楽しそうに使う人は、消費への熱狂を失っていないのだ。気持ちが若いとも言え、生まれてこの方ドケチの私からしてみれば皮肉でなくまぶしくも思う。

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