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【インタビュー後編】

アメリカは意外に保守的! 日本人が思いがちな「F××kって表現はクール」という罠

『英語がサクッと口から出る 英語の「筋トレ」4センテンス繰り返しCDドリル初級編』(主婦の友社)

 洋画や洋楽でおなじみな「F××k」に代表されるスラング。くだけた表現では「F××k」を「超」のような意味合いで使うケースもあり、「very」を使うよりカッコいい、と思っている人もいるかもしれない。しかし、通訳、英語講師を仕事にしている、『英語がサクッと口から出る 英語の「筋トレ」4センテンス繰り返しCDドリル初級編』(主婦の友社)著者、渡部泰子氏は「スラングは危険」と話す。全3回の最終回となる今回は、日本人が思っているよりもマナーがある、保守的なアメリカの一面について話を聞く。

◆これまでのインタビューはこちらから◆
【前編】「英語が喋れるようになりたい」で毎年大勢挫折するのはなぜか? 英語のプロに聞く英語学習法
【中編】「英語を仕事にできる人」と「しゃべれるけど仕事にはできない人」は何が違う?

■英語のプロが、スラングを知っていても使わない理由

――前編で、「目的にフォーカスして英語を勉強することが大切(=なんとなく英語うまくなりたいでは上達しづらい)」という話を伺いました。

 私はゲームや漫画が好きなので、同じオタク趣味を持つ外国人(発言は英語)をTwitterでフォローしてみたんです。しかし、SNSでの英語の使い方って分かりにくいんですよね。スラングが多いし、スペースを省略したり、Youを「U」にするなど独自の省略ルールがありますし。

渡部泰子氏(以下渡部) Twitter は生きた英語だと思いますが、辞書を使うことも大切です。辞書は「これは品のない言葉なのであまり使わない方がいい」と書いてありますから。

―― Twitterを見て英語を勉強したら、英語が母国語の人たちからしたら眉をひそめるような言葉を使っているかもしれないですね。

渡部 私はあえて英語のスラングは使わないようにしています。もちろん分かった方がいいのですが使うのは友人同士など、限定的ですね。それによって人物判断がされかねないこともある言葉ですから。さらに、自分では「これはイケてるだろう」と思ったスラングでも、どう受け取るかは結局相手次第ですから。

――考えてみれば日本語でも差別用語など、その一言を言っただけで、「そんな言葉を使うような人なんだ」とドン引きするような言葉はたくさんありますよね。

渡部 私自身は帰国子女でも、英語圏の国に長く住んでいたわけでもなく、学習で英語を習得した立場です。だからこそ、英語は外国語であることを意識し、スラングには安易に手を出さないよう気を付けています。

 以前日本人の方が「F××king tired.」と話していたことがあったのですが、それを聞いた英語圏の方はかなり引いていました。ご存知の方も多いかと思いますが、「F××k」は向こうの人からすると、とても引いてしまう表現なんです。

――おそらく、日本人が洋画や洋楽からイメージする言葉としての「F××k」は、アメリカ人のイメージする「F××k」とかなり隔たりがあるのでしょうね。日本人は「F××k」を「Veryを使うよりももっと口語的でこなれていて、分かっている」というニュアンスでとらえている人も中にはいますが、これをアメリカで適用すると火傷すると。

 

■日本人のスタンダードな振る舞いは、アメリカ人から見たら「不愛想で無礼」

――しかし、日本人はアメリカ人に対し「日本人よりはっきりものを言うし、フランク」というイメージがありますが、意外と保守的なんですね。

渡部 アメリカは案外マナーに厳しいところもありますよ。あと、ないと思っている人も多いですが、英語にも敬語があります。知り合いが幼稚園の時に先生に「Can I go to the bathroom?(トイレに行っていいですか?)」と言ったら、怒られたそうです。「Can I」はカジュアルであり、先生に対しては「May I」を使えと。「よろしいですか?」ですね。

 あと、日本人は忘れがちですが、「Thank you.」と「Please」をアメリカ人はとてもよく使います。例えば買い物をする際、日本ではお客様は神様ですから「ありがとう」とお客さん側はなかなか言わないですよね。でも、向こうはお客さんも「Thank you.」と言います。

――欧米系の人を見ると、本当にお店でニコッと笑って「Thank you.」と言いますよね。電車で降りる時も「Excuse me.」と言う。言葉や行為で、害意がないことや感謝を伝える努力は、日本人よりずっとしますよね。

渡部 良家ほどそういったことを徹底的に教育されるようですね。また、喫茶店で注文する際も日本だと「オレンジジュース」みたいに品名だけ言う人は多いですよね。でも、向こうは「オレンジジュース、プリーズ」という風にお願いします。そうするとサービスの質も上がりますよ。

 

●英語で話すときは日本語の二倍話せば、通じる!

――こういったことは、英語の文法やルールを学ぶことよりも、大切なことに思えますが、あまり知られていませんよね。

渡部 そうかもしてませんね。以前アメリカ系の航空会社の飛行機に乗客として乗っていた時のことですが、日本の若い方が、機内食を何も言わず受け取ったことに、米国人の客室乗務員が怒ったんです。「あなたは人からサービスを受けておいて、『Thank you.』すら言えないのか」と。しかし言われた方も、相手が英語でまくしたてているし、そもそもおそらく「Thank you.」を大切にするアメリカ文化の事情も知らないのでしょう、キョトンとしていました。

――店員が客を叱ること自体、日本人にしてみたら「超想定外」ですもんね。「日本人のふるまいは、アメリカ人から見ると、言葉足らずで不愛想に見えがち」というのは、言葉以前に気を付けておいた方がいいのでしょうね。

渡部 アメリカ人と話す時は、日本で話す時の2倍ぐらい話さないと伝わらない、と思った方がいいかと思います。「こういうつもりで言ったんです」とか「そういうつもりではない」ということを、一所懸命伝える。日本語だと「伝わるでしょ」としてしまうことを、英語ではさぼらずに、こまやかに伝える。そうすることで伝わることも実際にあるんです。

――なるほど。最後に、何年も前から「技術の発達で英語をはじめ、外国語の勉強はいらなくなるのではないか?」という議論がありますよね。Googleのコマーシャルでも「パリ北駅に行ってください」とスマホが翻訳するシーンが出てきました。それについて渡部さんはどう考えていますか?

渡部 翻訳機が発達して、脳にチップが埋め込まれ、口から外国語が勝手に出てくる、となったらもうお手上げですが、現状の「翻訳機が進んでいる」というくらいでしたら、自分で勉強する方がいいと思います。「伝わる喜び」はこの上ないものですから。

『英語がサクッと口から出る 英語の「筋トレ」4センテンス繰り返しCDドリル初級編』(主婦の友社)

――私もフィリピンに留学した時に、外国語が通じるというのは、こんなに嬉しいものなのかとちょっと驚くぐらい感動しました。外国語を話すというのは、母国語を話すのとはまったく異質の喜びがありますよね。

渡部 ですのでもし、技術的には不要になっても、英語の勉強はやる価値があるものだと思います。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

■渡部泰子
東京生まれ。TOEIC985点。総合商社、外資系企業などに勤務後独立。株式会社マグノリア・コンサルティング代表。通訳、リサーチや海外とのコーディネーション、個人/企業向けの英語トレーニングを行っている。

◆石徹白未亜の過去記事はこちらから◆

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最終更新:2018/11/26 22:30
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