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自由奔放なヴォーカルで一世を風靡! ”元祖ギター女子”川本真琴、インディーズで新境地

文=青木優

 で、当時、川本は確かに時代を代表するシンガー・ソングライターとして君臨していた……のだが。ハタから見ていて気になったのは、どうにも安定しない活動ペースだった。

 まだデビュー数年のアーティストにしては、作品ごとのインターバルがやけに長いこと。ある程度のライヴやメディア露出をしたと思いきや、その後プッツリと沈黙が続くこと。すでに人気アーティストだったから、いろんな方面からの仕事の話は多かったはずなのに、こうして沈黙する状態が続くばかりだった。おかげで本人の姿どころか、テレビや街中でも曲を耳にすることが徐々に減り、川本、大丈夫か? と思ったりしたものだった。

 結論を言うと、この90年代後半から2000年代の初頭にかけて、川本は自分のペースで音楽に向かうことに苦慮していたのではないかと思う。たぶんスタッフ側はもっと仕事をしてほしかっただろうけど、彼女本人はそこまで多作なほうでもないし、スケジュールを詰め込みたいわけでもない。このナチュラルなアーティストには、メジャーでの活動の仕方があまり合わなかったのではないだろうか。

 その後、2001年の春に、川本は2枚目のアルバム『gobbledygook』のリリースのために、ひさびさにメディア露出をしている。デビュー・アルバムから、なんと3年9カ月ぶりの2作目だ。その雑誌インタビューを読んでいたら、このインターバルについて川本自身は「長いですよね。特に9カ月ってのが長いですよね」と答えていて、僕は誌面に向かってツッコまざるを得なかった。いやいやいや! 9カ月でなく、3年のほうが長いでしょ! あの天然ぶりは健在だったのである。

 ただ、このアルバムから、川本の動きはまた鈍化していった。当時は把握していなかったのだが、9枚目のシングル「ブロッサム」を最後に、メジャーとの契約が終了。それ以降、彼女は表舞台から去ってしまった。

 それから時が経過し、川本のことを忘れかけていたゼロ年代の半ば頃のことだ。彼女がインディーズのアーティストたちと活動しているというウワサが耳に入ってきた。数年の潜伏期間を経て、再び動き始めているようだった。

 05年の暮れには、シンガー・ソングライターの豊田道倫のアルバム『東京の恋人』に参加していて、驚いた。豊田は非常に生々しい歌を唄うシンガーだが、このタイトル曲は名曲で、その後半でほんの少しだけ聴こえる川本のコーラスはあまりに優しくて、じつに感動的だった。

 川本は、豊田のこのアルバムの発売記念ライヴにもゲスト参加していて、僕はそこでひさびさに彼女の姿を見ることができた。川本は、東京のインディ・シーンのミュージシャンたちに混じって、確かに舞台にいたのだ。

 この頃から彼女は、たとえばタイガーフェイクファという名義でリリースするなど、自分なりの新たな活動の仕方を展開するようになる。

 やがて僕のところに、そうしたミュージシャンたちと交流する川本に取材する話が来て、インタビューすることになった。時は2011年になっていた。その場所が、あの渋谷公会堂のすぐ近くのカフェだったのだから面白い。


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