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史上最悪の大量殺人事件を再現した衝撃作が劇場公開!!

7.22銃乱射事件は現実と非現実との壁を壊した!? ノルウェー監督が語る『ウトヤ島、7月22日』

ウトヤ島のキャンプ場には、当時与党だったノルウェー労働党の青年部に所属するエリート候補の若者たちが集まっていた。

■犠牲者たちの尊厳を損なってはならない

──家族想いのカヤを熱演したアンドレア・バーンツェンをはじめキャストはみんな新人だったと聞いています。リハーサルに3カ月を費やしたそうですが、打ち合わせの際にどのような話し合いを行なったのでしょうか?

エリック ディテールを大切にしようと話しました。ディテールをきちんと再現することで、あの日のウトヤ島で何が起きたのかを正しく伝えることができると考えたんです。アンドレアが演じたカヤは特定の1人の人物ではなく、生存者たちの証言をもとに集約したキャラクターとなっています。フィクションの存在ですが、ウトヤ島で起きたことをより正確に理解することができるキャラクターです。脚本を用意して、彼女たちはアドリブを交えることなく一字一句そのまま脚本どおりに演じてもらいました。大変な作業でしたが、その分しっかりとリハーサルを重ねたんです。生存者たちは撮影現場にも付きっきりで立ち会ってくれました。精神が今にも壊れてしまいそうになったとき、彼らはお互いに冗談を言い合ったり、歌を歌ったりしたそうで、そのことも映画には盛り込みました。生存者たちが繰り返し言ったことは「犠牲者たちの尊厳を失うことなく、誠実に演じてほしい」ということでした。そのことには充分こだわって撮影しています。

──アドリブはなかったとのことですが、銃弾から身を守るために森に身を潜めたカヤの腕に一匹の蚊がとまるカットは印象的です。殺人鬼から命を狙われているカヤは、自分の腕にとまった蚊を叩き潰すことに躊躇してしまう。命の重さを考えさせる、とても重要な場面になっていると思います。あのカットはどのように撮ったのですか?

エリック あの蚊がとまるカットだけが、この映画の唯一のアドリブでした(笑)。あのカットに気づいてもらえると、うれしいです。何度もリハーサルを繰り返したことで、逆に生まれた余白のような瞬間でした。私はこの映画を撮っている間、ずっと命の在り方について考えていました。SF映画の中では人類は宇宙人と戦争を繰り広げ、SF映画でなくても多くの映画の中にはアクションシーンがあり、命の奪い合いが描かれています。我々はそれらをエンターテイメントとして楽しんでいるわけです。今回、この映画では試してみたいと思っていたことがありました。1人の人間の肉体から命が抜けていく瞬間を、自分たちはカメラで撮ることができるのか。はたして映画にはそんな力があるのか。我々の鈍化した感覚は鋭敏さを取り戻すことができるのか。そのことをこの映画では試してみたかったのです。

──逮捕されたブレイビクは裁判を経て、現在は21年の禁固刑に処せられています。ノルウェー以外の国では「なぜ死刑にしないんだ」「21年は短い。終身刑にすべき」という声もありました。そのことをエリック監督はどう考えますか?

エリック ノルウェーでは21年の禁固刑がいちばん重い刑罰です。ノルウェーの刑務所は受刑者たちの更生に重きを置いており、彼らに治療を施すために受刑させているという側面があるんです。それもあって、ノルウェーには死刑制度は存在しません。「ブレイビクは21年後に出所するのか」と不安に思う海外の人は多いかもしれません。ですが、それはないと私は考えます。刑期を終えた際にブレイビクは自分が更生していることを裁判所でもう一度証明しなくてはいけないんです。恐らく、彼にはそれができないはずです。21年の刑期を終えた後も、ブレイビクは刑務所内で生き続けることになるでしょう。

 * * *

 国連が発表する「世界幸福度ランキング」では常に上位にランキングされ、移民や難民に対しても支援政策を打ち出していた“幸福と寛容の国”ノルウェーを襲った空前の大量殺人事件。2011年7月22日、ウトヤ島でいったい何が起きたのか。72分間にわたる衝撃を劇場で体感してみてほしい。
(取材・文=長野辰次)

『ウトヤ島、7月22日』
監督/エリック・ポッペ 脚本/シブ・ラジェンドラム・エリアセン、アンナ・バッヘ=ビーク 撮影/マルティン・オッテルベック
出演/アンドレア・バーンツェン、エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン、ジェニ・スペネピク、アレクサンデル・ホルメン、インゲボルグ・エネス
配給/東京テアトル 3月8日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9ほか全国ロードショー
CopyrightC) 2018 Paradox
http://utoya-0722.com

●エリック・ポッペ
1960年ノルウェー・オスロ生まれ。83年からロイターなどの新聞カメラマンとしてキャリアをスタートさせ、国内外の紛争ニュースに従事。『BUNCH OF FIVE』(98)で映画監督デビュー。ジュリエット・ビノシュが戦場カメラマンを演じた『おやすみなさいを言いたくて』(13)はモントリオール映画祭で審査員特別賞を受賞。『ヒトラーに屈しなかった国王』(17)はアカデミー賞外国語部門のノルウェー代表に選ばれた。『ウトヤ島、7月22日』は第68回ベルリン映画祭エキュメニカ審査員賞、スペシャルメンションを受賞。

最終更新:2019/03/06 22:30
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