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【DV、虐待、モラハラ加害者の頭の中とは?(3)】

モラハラ夫だった僕がそれに気づくまで――解決に向けた手掛かり(前編)

※イメージ画像

 農林水産省の元事務次官の熊澤英昭容疑者が44歳の長男を殺害した事件では、息子による家族への暴力が背景にあったと報道されている。悲惨なDV、虐待のニュースは後を絶たない。また、配偶者からのモラハラで苦しんでいる家庭は多いはずだ。しかし、その時「加害者側」は何を考えているのだろうか? モラハラ夫として妻に去られた経験から回復し、現在は日本家族再生センターでカウンセラーとして被害者、加害者双方の支援活動を行っており『DVはなおる 続』(ジャパンマシニスト社・味沢道明著)の共著者でもある中村カズノリ氏に話を聞く。今回のテーマは「解決に向けた手掛かり」について。 

*これまでのインタビューはこちらから(1) (2)

『DVはなおる 続 被害・加害当事者が語る「傷つけない支援」』(ジャパンマシニスト社)

 

依存対象を分散させる――依存力スカウターを意識する

――2回にわたって加害者当事者の頭の中について伺っており、特徴として「頭の中は地雷がいっぱいで、自分を守るために相手を攻撃してしまうこと」や「家族、家庭願望が人一倍強く、そればかりに依存してしまうこと」などがありました。

 解決策について今回は伺っていきたいと思います。

中村カズノリ氏(以下、中村) まずは「家族、家庭願望が人一倍強く、そればかりに依存してしまうこと」への解決法ですが、依存対象は複数あった方がいいですね。一つがダメになっても他がありますから。依存対象を一つに寄せすぎるのは、なんであれ危険です。

――依存対象をどう散らしていけばいいでしょうか?

中村 依存の対象は人でなくてもいいんですよね。仕事でも趣味でもいいし、それこそオタク趣味のように、フィクション作品やキャラクターに向けてもいいんです。SNSでもいいですし。

 自分の中で「依存力」を数値化してみるといいんです。それこそ『ドラゴンボール』のスカウター的な。依存力が100 万あって、それを家族だけに全部ぶつけてしまったら、ぶつけられた方はきついですよね。そしてぶつける方とて、依存する対象がいなくなってしまったらその行き場のない感情が負の感情として自分の中に溜まっていってしまいます。

――加害者も被害者も仕事をしたり、家族以外の交友関係や趣味があったりと「家族の構成員として以外の自分」がすでにいるはずなのに、そこに関心が持てず「家族であること」ばかり考えてしまう、というのが問題なのかもしれませんね。

 

 

自己肯定と自己受容を養うのは「おしゃべり」

中村 次に「頭の中は地雷がいっぱいで、自分を守るために相手を攻撃してしまうこと」の対策についてです。

 これに効くのは、日常のたわいもないおしゃべり、雑談だと思います。

――「おしゃべり」とは、ちょっと意外ですね。

中村 私は「自分も相手も尊重するコミュニケーション」に慣れていませんでした。もちろん頭では、そういうコミュニケーションが理想的であることは分かっているんです。でもできなかった。原家族(※自分が育った家族)が厳しく、そういった体験をしてこなかったんです。

 野球のバットをただやみくもに振るだけではボールに当たらないですよね。当てるにはキレイなフォームで素振りを繰り返して、習得する必要がある。私の場合「人とのコミュニケーション」という分野において、ずっと間違ったフォームで素振りをし続けてきたんです。

――スポーツなら学校の授業で、クラス全員で同じ競技をやるので、自分がどのくらいうまいか下手なのか把握できますよね。一方で家庭環境って閉ざされていますから、自分の育った家庭のおかしさってなかなか気づけないですね。

中村 はい。私自身人とのコミュニケーションを学べたのが、カウンセリングのグループワークを通じてでした。おしゃべりはコミュニケーションの基本、「素振り」なんです。

――カウンセリングのグループワークではどういったことを話すのですか?

中村 グループワークにはいくつかのルールがあります。まず自分自身の体験を語ることです。一般論や他人のことを話しても仕方ないですし。また、内容は何を話しても良くて、どエライ下ネタでもいいし、「あいつを殺したいくらい嫌いだ」でもいいんです。

――家族の話題だけではないんですね。

中村 そうなんです。お昼何食べた? とか、むしろ雑談がいいんです。雑談という形でコミュニケーションの正しいフォームの素振りをしていくんです。

 

話したくないことを「今は話したくない」という自由

中村 グループワークのルールには「話したくないことは話さなくていい」というものもあります。あるテーマについて話をしたくない時は、この話は自分にはしんどいのでパス、ということもできます。

 地雷が多い人の特徴として、地雷を他人に踏まれそうになったときに、嫌なのに、それを断れないんです。「そのことは話したくない」と言えない。嫌な話題を振られて、断れずイライラを溜めていく。

――いじめ、モラハラ、パワハラ、セクハラなんてまさにそうですよね。大なり小なり、したくない話題を振られ、上手な対処ができず、自己嫌悪や苛立ちを抱えている人など、ゴマンといるのではと思います。

中村 そういったシチュエーションで、適切に自分を守ることができるかどうかですよね。

 第1回で、DV は攻撃ではなく防衛だとお話ししました。嫌なことを言ってくる相手に対しては防衛をする必要はあるんです。ただそれを「暴力や暴言」で解消するのか「このことは話したくない」などの相手を尊重した平和的なやり方で解消できるかで、まったく結果は変わってきますよね。

 

「怒ってはいけない」が逆効果な理由

――防衛の「手段」が変わるということで、防衛する必要自体はあるということですね。

中村 そうなんです。嫌なことを言われて腹が立っているのに「怒ってはいけない、怒るのはダメだ」と自分に言い聞かせるのは無茶です。

 怒りって、2次感情なんです。怒りのもとになる感情があります。寂しい、悔しい、憎らしい、妬ましい、悲しい……。その感情が自分を押しつぶすのを守るために怒りにして外に出すんです。

 ですので「怒っちゃいけない」では、フタをし続けた感情がいつか爆発してしまいます。怒りの1次感情に目を向けることです。今なぜ自分はイライラしているんだろうと自分を見つめる。それがわかれば怒りの条件が揃わないようにすることもできますよね。

 

 

おしゃべりを通じて、過去が変わる

――嫌なことがあったとき、世間話などのささやかなおしゃべりで気持ちが少し和らぐことってありますよね。

中村 おしゃべりには効能があります。内容は天気の話とか他愛のないことでいいんです。

 ただおしゃべりのポイントとして「自分の思ってもいないようなこと」を話さないことですね。自分の思っていることとしゃべってることがずれていくと自己不一致が起きてきてしまうので。

――しかし大人で、特に職場なら、ある程度本音と建前の使い分けは宿命ですよね。

中村 はい。だからこそ、思ってもいないようなことを話さずに済む「気楽なおしゃべり」の場は大人ほど大切です。

――今この流れで思い出したんですが、冬の終わりにちょっと気難しい人と歩いていた時に、今日はあったかいですねと話したら「そんなにあったかいと思わない」とぶっきらぼうに返され、それすら否定かと、もや~っとしたのを思い出しました。でも今ここで、この話をして、それを聞いてもらうことで、なんだか成仏できた感じはあります。笑い話になったというか。

中村 それがまさにおしゃべりの効能です。会話を通じ、過去のモヤモヤが「成仏」するんです。過去そのものは変わりませんが、自分が捉える過去の意味づけが変わるんです。それが傷が癒えるということなんですよね。

――「過去と他人は変えられない」的格言がありますけど、「過去の意味付け」は変えられるんですね。しかも、何も本人に「あのときは傷ついた!」とか問いたださなくても、他の人と話すことで成仏させられるというのは希望のある話ですね。

中村 カウンセリングはまさにそういう作業ですね。そういった作業を通じ、これからの自分の物事の受け取り方も変わってきます。心地いいコミュニケーションができるようになり、自ずと問題も起きにくくなってきます。

 私の場合、雑談でのコミュニケーションを通じ、“何を言っても大丈夫”と受け入れてくれる環境で自己肯定と自己受容を回復させることによって、頭の中の地雷の数を減らしていくことができました。

 * *

『DVはなおる 続 被害・加害当事者が語る「傷つけない支援」』(ジャパンマシニスト社)

 DV、虐待、モラハラの処方箋の1つは「おしゃべり」。気軽にくつろいだ雰囲気の下でのおしゃべりは人を和やかに幸せにする。しかし、気軽なおしゃべりができる相手がいないから困っているのだという人も多いはずだ。最終回となる第4回では、引き続き解決のための手がかり編。中村氏に「おしゃべり」のコツについて聞いていく。

(文/石徹白未亜 [https://itoshiromia.com/])

 

 

◆石徹白未亜の過去記事はこちらから◆

 

 

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最終更新:2019/06/18 20:00
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