深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.536

香取慎吾が“ギャンブル依存症”へと墜ちていく!? 石巻を舞台にしたドン底からの再生劇『凪待ち』

2019/06/21 18:00

文=長野辰次
白石和彌監督作『凪待ち』。香取慎吾演じる主人公はギャンブルに熱中するあまり、次々と問題を起こしてしまう。

  光と影の芸術だと、映画は呼ばれてきた。だとすれば、影をまとったスター俳優が主演すれば、映画はより映画らしくなるのではないだろうか。宮城県石巻を舞台にした『凪待ち』は、2017年にジャニーズ事務所を退所した香取慎吾主演映画。『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』(18)、今春公開された『麻雀放浪記2020』と、話題作・問題作を連発する白石和彌監督とのタッグ作だ。勢いのある白石監督が、潜在能力を持て余していた俳優・香取慎吾の未知の魅力をぐいぐいと引き出した力作となっている。

 香取演じる主人公・郁男は、川崎で暮らすギャンブル依存症の男。腕のいい印刷工だが、競輪通いがやめられないため仕事が長続きしない。事実婚状態の亜弓(西田尚美)が実家のある石巻に帰ることになり、郁男も石巻で心機一転を図ることになる。

 亜弓の連れ子である高校生の美波(恒松祐里)が、石巻に向かう車中で郁男に問い掛ける。「結婚しようって、言えばいいじゃん」と。部屋に引きこもって高校に行くことができずにいる美波だが、郁男には懐いていた。郁男の答えはこうだ。「言えないよ。仕事もしないで、ぶらぶらしているだけのろくでなしだし」。心の優しいダメ男、それが郁男だった。

 石巻では亜弓の幼友達の小野寺(リリー・フランキー)がとても親切に接してくれ、小野寺の紹介で郁男は地元の印刷所で働くことになる。機械に強い郁男は、新しい職場で頼りにされた。その一方、亜弓の別れた夫・村上(音尾琢真)が酒に酔って郁男に絡む。気持ちのいい人もいれば、新参者を嫌う人もいる。多分、これはどこの町でも同じだろう。

 亜弓たちの期待に応えようと、郁男はマジメに仕事に取り組む。石巻には競輪場がないことに安心していた郁男だが、好事魔多し。職場の同僚に誘われて、郁男はついついノミ屋に足を運んでしまう。最初は同僚にアドバイスを送るだけだったが、モニターに映るレースを見てしまうともう我慢できない。瞬く間にギャンブル狂の熱が蘇ってしまう。

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