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ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

若手俳優の登竜門『仮面ライダー』の注目株! 井桁弘恵の“微妙な違和感”

ほかの出演者に比べ、ぎこちなさが目立つ井桁弘恵

 何より楽しいのは、若手俳優の活躍だ。主人公の飛電或人を演じる高橋文哉。或人と一緒に戦う仮面ライダーバルカンこと不破諌(ふわ・いさむ)を演じる岡田龍太郎。或人のサポートをする女性ヒューマギアのイズを演じる鶴嶋乃愛が今のところ好評だが、筆者が最も注目しているのが、刃唯阿(やいば・ゆあ)を演じる井桁弘恵(いげた・ひろえ)だ。

 井桁は映画『イソップの思うツボ』やゼクシィイのCMに出演している22歳の若手女優。本作で演じる刃唯阿は、人工知能特務機関『A.I.M.S』の技術顧問であると同時に、仮面ライダーバルキリーに変身する女戦士だ。

 まだ始まったばかりなので、彼女がどういうキャラクターなのかという細かい設定は不明だ が、ライダーに変身するぐらいだから、男勝りの科学者兼上官という感じだろう。

 唯阿は「~だからな」「~だ」「~するんだろ」といった語尾でしゃべるクールなキャラクターだ。アニメや漫画ならともかく、実写作品でこういった口調の女性キャラクターを女優が演じると、どうしても存在感が浮き上がってしまい、前出の3人と比べても、微妙な違和感が常に漂っている。

 ヒューマギアのイズを演じる鶴嶋に違和感がないのは、感情の起伏がない記号的なキャラクターを演じているからだ。ほほえみながら丁寧な口調でしゃべれば、こういうキャラクターは実写でも成立するのだが、井桁演じる唯阿は複雑な内面を抱えた女性で、なおかつ口調が特殊なので演じるのがとても難しい。

 仮に米倉涼子や天海祐希のようなベテラン女優が演じていたら、強い女上司という印象がわかりやすく際立ったのだろうが、22歳の井桁は線の細い新垣結衣タイプの女優で、時々、少女のようなかわいい表情が漏れ出してしまい、クールにも徹しきれていない。

 ただ、この不安定さは、必ずしも欠点とは言えず、劇中では彼女の複雑さを強調する面白い効果を生んでいる。だから彼女を見ているとドキドキして、次は何をするのかと、目で追ってしまう。

 長丁場の『仮面ライダー』には役者の成長を見守る楽しさがあり、序盤はぎこちなかった俳優が、みるみる変わっていくこと自体が見どころのひとつだったりする。

 自分のキャパを超えた難しい役を与えられた井桁が、今後どのように刃唯阿を演じるのか? 1年間じっくりと見守りたい。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2023/07/14 00:56
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