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「キネ旬」激動の100年を綴る書籍『キネマ旬報物語』

総会屋のドンが社長に!? 元社員が語る『キネマ旬報物語』、映画ファンなら”絶対読むべき”理由とは?

文=稲田豊史

完全な他人事にすることはできない内容

 当時はまさに私(稲田)が、フットノート(前身はギャガの子会社)に在籍していた時期。そして「フットノート(“脚注”の意)」は社内公募によってつけられた社名だが、発案者は誰あろう私である。その後同社がキネマ旬報社と合併したことにより、この社名はたった3ヶ月で消滅した。なんというか、酒が呑みたい。

 なおキネマ旬報社は、掛尾が退職した2013年頃からの緊縮体制が限界を迎え、2017年、新たな株主を得て経営体制が一新された。

 400ページ超の労作。決して読みやすい本でも、快適な読後感が約束される本でもない。しかし、映画産業に少しでも関わる者、出版に少しでも関わる者ならば、本書の内容を完全な他人事にすることはできないだろう。

 映画産業の端っこで駄文をしたためる身として、出版人のはしくれとして、元キネ旬社員として、読了した瞬間の気持ちはズバリ、「胸が詰まる」であった。

 読み終えて、改めて疑問が湧く。

 これほどの大著ながら、掛尾編集長時代の誌面や編集方針について触れられていないのは、どういうわけか。そもそも、400ページのうち350ページ付近でようやく「創刊60年(1979年)」にたどりつき、以降の40年間はかなり駆け足でしか語られない。特にギャガ傘下になってから(2002年~)は20ページ程度しか割かれておらず、その間の編集長体制についても、ほとんど言及されない。

 このバランスの悪さはやはり気になる。在籍中の現役社員に対する配慮と忖度なのか、自分の采配も含めまだ評価を固めるほど時が経っていないということなのか。あるいは――。

 表紙に記された副題「前途は遥けく、行路難く」が、今さらながら身に染みる。本書が「キネマ旬報」に連載された原稿の書籍化にもかかわらず、刊行元がキネマ旬報社ではない別の出版社である、という痛々しい事実も含めて。

 嗚呼、酒が呑みたい。

最終更新:2019/10/01 23:46
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