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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.552

不寛容さが生み出す最凶ヴィラン『ジョーカー』 物議を醸す問題作だが、現実社会と大きな相違点

文=長野辰次

「いつも笑顔でいなさい」という母の教えを守るアーサー(ホアキン・フェニックス)の心の中は、負の感情で溢れ返っていた。

 ホアキン・フェニックス主演の『ジョーカー』が話題を呼んでいる。アメコミヒーロー・バットマンの敵役(ヴィラン)として知られるジョーカーを主人公にした物語だが、アメコミがベースとは思えないほど現実社会に渦巻く不条理さや不安感をえぐり出した強烈な作品となっている。観る人によって、大きく賛否が分かれる内容だ。

 これまでにも『バットマン』(89)ではジャック・ニコルソン、『ダークナイト』(08)ではヒース・レジャーら名優たちが演じてきたバットマンの宿敵・ジョーカー。カオスを愛するこの希代の悪役がどのようにして誕生したのかを、本作はオリジナルストーリーとして描いている。まるで実録犯罪映画のようなリアルさを感じるだろう。

 アーサー(ホアキン・フェニックス)の職業は大道芸人。ピエロの派遣会社から給料をもらい、年老いた母ペニー(フランセス・コンロイ)の介護をしながら暮らしている。生活は楽ではないが、母の教えである「どんなときも笑顔で、人々を楽しませなさい」という言葉を胸に、慎ましく生きてきた。人気コメディアン、マレー(ロバート・デ・ニーロ)のトーク番組を、母と一緒に視聴することが数少ない楽しみだった。

 いつか、マレーの番組に呼ばれるような一流のコメディアンになろう。そんな夢を持つアーサーだったが、ピエロメイクで街頭宣伝中に不良少年たちに暴行を受けるという事件が起きる。被害者であるはずのアーサーだが、派遣先の職場を無断で放棄したと会社の上司から咎められてしまう。同僚から「護身用に」と拳銃を渡されるが、この拳銃がアーサーの運命を大きく変えていく。

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