日刊サイゾー トップ  > 高畑充希、このままで大丈夫?
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

『同期のサクラ』でまたロボット・ヒロインに……“朝ドラ女優”高畑充希はこれでいいのか?

名脇役から朝ドラ女優へ大飛躍も……

『Q10』を筆頭に、自分に自信のない女性の繊細な内面、男には若干めんどくさく見える鬱屈した内面を抱えた女性を演じさせると、高畑は突出した魅力を見せた。

 中でも坂元裕二脚本の『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)や『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(同)では、一見社会に適応している社会人だが、その奥底に不安やいらだちを抱えた不安定な女性を見事に演じていた。

 当時の高畑は二番手、三番手の役が多く、社会に過剰適応した優等生的な内面を抱えた女性を演じさせたら右に出る者がいない名脇役というポジションだった。

 そんな高畑の立ち位置は、朝ドラの『とと姉ちゃん』で連続ドラマ初主演を務めたことで大きく変化する。彼女が演じたのは亡き父に代わって、2人の妹と母親を支えようとする“とと姉ちゃん”こと小橋常子。物語は王道の朝ドラで、出版社の編集長へと成長していく常子の姿を半年間かけて演じ、高く評価された。

 その後、高畑は主演の仕事が増えるのだが、主演を演じるようになると、求められる役割はめんどくさい内面を抱えた鬱屈した女性から、わかりやすい記号的なキャラクターへと変化し、『過保護のカホコ』や『忘却のサチコ』(テレビ東京系)など、感情を表に出さない(もしくは極端に記号的な振る舞いをする)ロボット・ヒロイン路線が続いている。

 一方で、ドラマ『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)の女刑事や地方在住のギャルを演じた映画『アズミ・ハルコは行方不明』など、人間的な役も演じてはいるのだが、やはり印象に残るのは『同期のサクラ』のようなロボット・ヒロイン路線で、後者が高畑のパブリック・イメージになりつつある現況を見ていると、果たしてこの方向性でいいのだろうかと思ってしまう。

 もちろんロボット・ヒロインといっても、高畑が演じているだけあって、もう少し複雑だ。サクラも、感情を表に出さない機械のように見えながら、時々、人間らしい感情がにじみ出る瞬間があり、そこで物語の感動が生まれる作りになっている。

 そんな、微妙な感情のゆらぎを見ていると、高畑自体は今も変わっておらず、求められる役割をクリアしながら、なんとか自分の持ち味を出そうと模索している渦中なのかもしれない。そんな高畑のけなげな姿には、やっぱり真面目な優等生だなぁと感心する。しかし一方で、昔からのファンとしては、もっとめんどくさい高畑が見たいと思ってしまうのだ。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2023/02/27 20:03
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