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「性別変更したらクビ」と脅す上官も

米軍では入隊制限への反発も! 我が国ニッポン「自衛隊とLGBT」の知られざる現状

ホルモン治療や性別適合手術は「上司によって対応が分かれる」

イメージ画像/出典:dronepc55

 ただ、ホルモン治療や性別適合手術の相談をすると、「上司によって対応が分かれる」とのこと。

「理解のある上司のもとでは、ホルモン治療や胸の手術が認められた隊員もおり、航空自衛隊の幹部には性別適合手術まで終えた方もいるそうです。私の場合も、最初の上司は理解のある方でしたが、その次の上司は治療の相談に対して『それだけお金があるなら俺に原付を買ってくれ』と言うような人でした。その上司は私が女性の隊舎に住むことも問題視し、『監視が必要だから一人部屋も認めない』とも言われました」(松﨑氏)

 松﨑氏によると、別の部隊に在籍したFTMの隊員には、事実無根の噂や悪口を周囲やネットに広められた人や、「男なら胸や尻を触っても大丈夫だろ」とセクハラをされた人もいたという。ハラスメントは実態として存在していたのだ。また入隊時は全員が基地内で生活する自衛隊では、共同浴場での入浴もハードルになる。

「FTMの人にとっては共同浴場での入浴は苦痛なのですが、下の階級の隊員は個別のシャワーを利用できない駐屯地(陸上自衛隊の基地)もあります。そのため水しか出ない消灯後のシャワーで、こっそり体を洗っている隊員もいました」(松﨑氏)

 GID(性同一性障害)の診断やホルモン治療、性別適合手術を行う自由が丘MCクリニックの大谷伸久氏も次のように話す。

「一般企業ではGIDの診断書を提出すれば、トイレや更衣室の問題も対応してくれるところが増えていますが、共同浴場もある自衛隊では柔軟な対応はまだ難しい。また規則に基づいて行動するのが原則の組織ですから、GIDの隊員への対応も部隊内で目立たない範囲で行わなければいけないでしょう。対応が上司次第になるのはそのためでしょうし、当院を利用した自衛隊の方によると、『手術したらクビにするぞ』と言った上官もいたそうです」(大谷氏)

 自衛隊はもともと男女の扱いの違いがハッキリした組織であり、「男らしさを中心原理に動く組織」(菊地氏)でもある。「そのため男性から女性へと性別変更するMTFの人は、FTMの人以上に苦労することが多いのではないでしょうか」と菊地氏。実際に松﨑氏の周囲のトランスジェンダーの隊員はほぼ全員がFTM。MTFの知り合いの隊員は、「『なよなよしている』『女とばかり仲良くしすぎ』などといじめの対象になりやすかった」とのこと。ゲイやレズビアンの隊員については「カミングアウトをせずに働き続けている人が多いのではないか」と松﨑氏は話す。

「FTMの隊員が性別変更まで進むのは今も難しいでしょうし、自分らしく生きることをあきらめて自衛隊に残るか、自衛隊を出て性別を変えるかの選択を迫られることになるはずです。私は手術と性別変更のために退職しましたが、自衛隊の仕事は好きで、男性として戻ることも考えました。ただ、問い合わせをすると、『入隊はできても訓練やお風呂等の対応はどうなるかわからない』との回答でした」(松﨑氏)

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