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聴覚だけでなく視覚も満たす「抖音神曲」たち

爆発的ヒット曲を生み出す中国版Tik Tok「抖音」、テクノロジーで急速に広がる“中国の最新音楽市場”

Photo by Scott Dudelson/Getty Images

 周傑論(ジェイ・チヨウ)や林俊傑(ジェイジェイ・リン)などが代表するC-Popや、Higher Brothersといったチャイニーズヒップホップが一世を風靡する中、中国国内の音楽事情にも劇的な変化が起きている。

 これまでミュージシャンのデビュー経路といえば、ライブなどインディーズの活動を続けて、レコード会社の目に留まることか、レコード会社または音楽事務所が主催するオーディションに参加することだろう。

 その構造は中国でも同じで、少し前には中国湖南テレビ局が企画・放送していた「快楽女声」(Super Girl)やその男版である「快楽男声」(Super Boy)などのオーディション番組が人気を博し、最近ではオランダの「The Voice of Holland」の版権を取得し、後にリメイクした「中国好声音」(SING!CHINA)や、ラップ番組であり、中国でラップ人気を巻き起こした「中国新説唱」(The Rap of China、旧名中国有嘻哈)などがある。これらオーディション番組で勝ち抜き、マスメディアやSNSで自身の影響力を上げれば、自分の音楽人生を切り拓くことができるだろう。

 しかし、その従来のレコード会社に対する売込みや、オーディション以外にも、第三のデビュー経路が中国で主流になりつつある。それはショートビデオのプラットフォーム上で動画を撮る、または自身が作成した音楽をアップロードすることだ。

 そして最近、最も可能性を示しているアプリがある――中国版Tik Tokである「抖音」(ドウイン)だろう。

 まずTik Tokについては、もう説明不要だろう。世界最大のショートビデオプラットフォームとして、中国のみならず、日本やインドネシア、タイ、インド、アメリカなどといった国々でも人気を博している。手軽にアプリを用いて動画を制作することができ、また多種多様な映像エフェクトや、映像加工なども若者に人気の理由の1つ。この中国版Tik Tokである「抖音」が駆け出しミュージシャンたちの絶好のデビュー経路となったのも、つい最近のことだ。

 ご存じかもしれないが、Tik Tokまたは抖音は、同じ中国の会社である「字節跳動」(バイトダンス)が提供するサービスだ。だが、各国でのプラットフォームは各々独立しており、提供されているコンテンツもまったく違う。中国のUGC(ユーザー生成コンテンツ)は、ほかの国々とは一線を画し、とてもバラエティ性に富んだ動画がアップされている。

 日本を例にとると、高校生がダンスを踊っている動画やシンプルに歌っている動画などがある。しかし、中国の抖音に目を向けると、UGCのクオリティは非常に高く、ダンス動画1つ取っても、動画構成から選曲、振り付けや背景など凝りに凝っている動画が多数上がっている。また、企業のアカウントはもちろんのこと、官公庁や軍隊、共産党のアカウントもあり、これらのアカウントがアップロードしているコンテンツもとても目を見張るものがある。

 官公庁や、軍隊、共産党は国の機関だが広報にはかなり力を入れており、特に若者向けのコンテンツには、ポップでわかりやすく、選曲にもこだわっている。その「選曲」の部分に駆け出しのミュージシャンたちは活路を見出しているのだ。

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