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白鴎大学ビジネス開発研究所長・小笠原教授「勘違いの地方創生」【2】

若者は地方から追い出されている!? 人口流出を止めたい自治体がみるべき現実

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 いま日本各地で注目を浴びる「地方創生」。2020年からは、政府が策定する「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が第二期に入った。出生率の低下と東京圏への人口の集中による地方の人口減を解消するために、何ができるのかが全国で問われている。

 本連載では、栃木県小山市にある白鴎大学で、都市戦略論やソーシャルデザイン、地域振興を中心とした研究を行う小笠原伸氏と、各地方が抱える問題の根幹には何があるのかを考えていく。出生率の上昇と、人口の定着に欠くことができないのは、「若者」の存在だ。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」第一期でもこの点は重要視されていたが、人口流出には歯止めがかからない。若者が地元を離れる真の理由とは、なんなのか。

◇ ◇ ◇

――連載第1回目となる前回(https://www.cyzo.com/2020/02/post_230609_entry.html)、進学で地元を離れた学生さんが、地元に就職したくても仕事がない、というお話がありました。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では「若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現」が課題のひとつとされていますが、大学で学生さんと接している小笠原先生は、今の若者と“地元”の関係はどうとらえていますか?

小笠原 最近、地方自治体の方と一緒に研究会を開いたのですが、参加した学生から非常に興味深い発言がありました。「大人は若い人が地域に残りたいと思っていないというが、逆に若者向けの都市の機能や空間がないので、若者としては『追い出される』という印象のほうが強い【「Governance」2019年7月号P70~71より】」というんですね。

 これはとても重要な指摘だと思います。

 都市圏への若者の流出に歯止めがかからない現状の中で、なんとなく都会に憧れて地元から出ていく人は、実はそう多くないと思っています。地元を出ていくだけの理由があって、出ていっている。自治体で地方創生にかかわる方は、その現実をちゃんと見ないといけないんです。ですが、なかなかそうはなっていない。自治体に勤めているかたがたはおおむね、自分の地元が好きでその職についていて、同じように地元を愛している人に向けて動いている面が大きくて、居づらさを感じている人にはなかなか目を向けづらい。それはもったいないんじゃないかと思っています。

――「なぜ出ていくのか」を知らなければ、「どうやったら残ってもらえるか」を考えることはできないですよね。

小笠原 自治体の人は、「なぜ出ていくのか?」を仕事として考え調べることができるポジションにあります。若者が本当は地元に残って何かをしたいと思っていても、環境や機会が得られない状況があって「私たちは追い出されている」と感じているなら、それは変える必要があります。

 たとえば、私はいまサードプレイスの研究を行う中でコワーキングスペースやシェアオフィスに関する考察を行っています。地方創生の取り組みとして、そういう事業を行う自治体も増えています。

 でもじゃあ、コワーキングスペースをつくったら若者は戻ってくるのか? そんな簡単な話ではないですよね。

 私は仕事でかかわった自治体さんに「場所をつくるのはいいけれど、閑古鳥が鳴いている施設は全国にたくさんありますよ」という話を必ずしています。あるいは、近年流行している、図書館をリニューアルして人が集まれる場所にするという取り組みもそうです。大切なのは、取り組みの結果として地方都市での生活が充実して定住者が増えたり仕事をする人が増えたりすること。ハコをつくるところで歩みを止めてしまうと、効果は期待しづらくなります。

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