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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.578

日本最古の学生寮はどうすれば存続させられる? 壁を乗り越えたい『ワンダーウォール 劇場版』

経済効率よりも、もっと大事なもの

大学の職員・香を演じる成海璃子。他にも若葉竜也など、オーディションによって注目の若手俳優たちがキャスティングされている。

 その日の夜が更け、学生課の窓口にいた香が学生寮に現れた。彼女も同じ大学の卒業生であり、派遣スタッフとして学生課の窓口に配属されたことをキューピーたちは知ることになる。香役を演じる成海璃子の台詞が耳に残る。

「経済至上主義が社会にとって本当に得策なら、若者の自殺はこんなにも増えないと思うんです。私はこの寮には特に思い入れはありませんが、こんなにボロくて汚い寮を歴代の寮生たちが残そうと努力してきたのは、ここには人間の幸せにとって必要なものがあるからじゃないのかなって気がするんです」

 現実の世界が経済効率で回っていることは、優秀な大学生である彼らは教わらなくても分かっている。古い学生寮にいつまでもこだわっていても、勝ち目はないことにも気づいている。でも、彼らが大学を出て、現実の世界へと飛び込むまでの数年間を、自由に伸び伸びと過ごす場も必要ではないのか。この学生寮には、年齢や性別や国籍による壁がまったくない。そんな自由な空間で、いろんな価値観に触れ合いながら共同生活を送ることは、経済効率よりももっと大切なものではないだろうか。

 テレビ放映されたオリジナル版とは異なるエンディングが、劇場版には用意されている。フィクションと現実との壁を乗り越えようとする試みだ。映画館でじっくりと向き合ってもらいたい作品だが、上映館になかなか足を運べない人は、NHKオンデマンドで配信中のオリジナル版を試聴してみてもいいと思う。まずは京都で学生寮の存続をめぐる問題が現実にあることを知ってほしい。そして、ウイルス騒ぎが落ち着くまで、本作のロングラン上映が続いていることを願う。

『ワンダーウォール 劇場版』
監督/前田悠希 脚本/渡辺あや 音楽/岩崎太整
出演/須藤蓮、岡山天音、三村和敬、中崎敏、若葉竜也、山村紅葉、二口大学、成海璃子
配給/SPOTTED PRODUCTIONS 4月10日(金)より全国順次公開(公開劇場は公式HPでご確認ください)
(c)2018 NHK
https://wonderwall-movie.com

最終更新:2020/04/10 20:00
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