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『麒麟がくる』スネる足利義輝、戦国を“高級愛人”として生き抜く遊女…etc.フィクションに散りばめられた史実を紐解く

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

新型コロナウイルスの影響で中断を余儀なくされていた大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)の放送がいよいよ再スタートした。ドラマをより深く楽しむため、歴史エッセイストの堀江宏樹氏が劇中では描ききれない歴史の裏側を紐解く──。前回はコチラ

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ちょっとめんどくさい男・足利義輝を好演する向井理(Getty Imagesより)

 『麒麟がくる』、ついに総集編ではなく本編の放送がスタートしましたね!

 とはいえ、再開第1回目の主な内容は人間関係のもつれ……もっというと「足利義輝(向井理さん)スネる」だったので、イマイチ盛り上がれず、あれれ、と思った人もいるかも。そして「スネる」どころか「キレる」将軍様の放つマイナスオーラを大きく浴びせられたのが、今回初登場の近衛前久(このえ・さきひさ/本郷奏多さん)でした。

 放送休止中には坂東玉三郎さんが、“美しすぎる”正親町天皇(おうぎまちてんのう)を演じるというニュースが話題になりましたが、朝廷の面々にもスポットが当てられるのが『麒麟~』のようですね。今回の「大河ドラマ」は「朝廷推し」とも言えるかも。

 ……まぁ、それは明智光秀が今後に起こす「本能寺の変」の黒幕として、朝廷の存在をクローズアップしようという布石なのかもしれません、が、それは今は置いておきましょう。

『麒麟がくる』スネる足利義輝、戦国を高級愛人として生き抜く遊女…etc.フィクションに散りばめられた史実を紐解くの画像2
足利義輝肖像(土佐光吉筆、光源院蔵)

 さて、劇中で足利義輝と近衛前久が激論していた「元号問題」ですが、あれは史実をベースにしています。古来、東アジアの価値観では皇帝≒天皇というのは、時間をも統治してしまう存在なのです。

 ところが、天皇に対しても絶大な権力を振るった足利義満以降、室町幕府は新元号の選定に大いにかかわることになり、天皇と朝廷は特権の何割かを失うことになりました。

 ……が、それは責任の追求を逃れる手段でもあったのです。時は戦国、普通に生きているのさえ難しい苦難の時代です。朝廷も財力に乏しく、影響力も衰退していますからね。

 元号が変わるのはおおむね「よからぬこと」が起きたケースの厄払い的な役割もありましたし、「よからぬこと」が起きる元号を決めてしまった「責任」を朝廷と幕府が共有することで、痛み分けにするという側面もあったわけです。

 ところが、劇中でも足利義輝さんがスネまくっていたように、義輝さんが三好家との権力闘争に負けて京都にいない間に、朝廷があろうことか義輝さんの確執相手である三好長慶に相談し、元号を決めてしまった事件が本当に起きているわけですね。弘治4年(1558年)のことです。

 義輝さんの不機嫌さは、「男の嫉妬」に近い気がします。

 ドラマでは「(義輝は)新元号が受け入れられなかったから、古い元号をしばらく使っていた!」というセリフがありましたが、より史実に近づけていえば、「自分が知らないうちに新しい元号になってた。悔しいー!」という、自分だけ蚊帳の外だった的な感じだったと思われます。

 それもそのはず、彼が預かり知らぬうちに改元された新元号「永禄」は、“美しすぎる天皇”こと正親町天皇の即位をお祝いしてのものだったからです!

 帝に対しても暴言を吐いて、近衛前久にたしなめられるシーンまでありましたが、あれは嫉妬の炎がメラメラだからです。「私(義輝)じゃなくて三好なんかをアテにして!」というのが彼の本音でしょう。知的な要素でカモフラージュされてはいますが、実は濃厚なBL臭がするシーンなのでした。

 だから「今後も(元号なんて)勝手に決めたらいいじゃん!」と言うわりに、本当に勝手に決めたらもっとスネるのは当然なので、『麒麟~』の義輝さん、実にめんどくさい男です。向井理さんが、『江』(2011)でアダチル気味の徳川秀忠を熱演なさっていたのを思い出しました。爽やかな顔で、ああいう陰にこもった演技が上手いですよね。今後も義輝さんとしてスネ演技に期待したいのですが、そろそろ三好家と最後の決戦が近づいているので、残念です。

「麒麟を呼びたいのじゃ」とか言いつつも、闇落ちして絡んでくる義輝さんのせいで胃痛がひどい近衛前久さんの情報も軽く補足しておきますね。

 近衛家はわかりやすく言えば、あの藤原道長の直系の子孫で、公家の中でももっとも家格の高いお家柄です。貴族の中の貴族です。お若くして関白殿下というのも納得なのですけど、その関白殿下のどうやら“乳姉妹”っぽいのが、尾野真千子さん演じる伊呂波太夫という設定には驚きました。

 遊女と関白殿下が!? と思うかもしれませんが、実は遊女は、そもそもハイソな存在なのです。遊女=娼婦というわけではありません。平安時代では「フリーランスの女官」といえるようなところから遊女の歴史は始まっています。

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