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スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会【12】

クリス・ロック「バイデンは老いぼれ」 アメリカ大統領選でコメディアンに寄る風刺が加熱!

クリス・ロック「バイデンは老いぼれ」 アメリカ大統領選でコメディアンに寄る風刺が加熱!の画像1
アメリカでもっともおもしろいとの呼び声高いクリス・ロック。(写真/GettyImagesより)

 前回のコラムに引き続き、10月3日に6カ月間の放送休止から復活した人気コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』を扱いたい。

 1975年から毎週ニューヨークより文字通り土曜の晩に生放送を続けてきたこの番組には、「ホスト」と呼ばれる週替わりの司会がいる。毎回冒頭のタイトルコールの後、スタジオで「モノローグ」という一人しゃべりを披露する。コメディアンの場合、この「モノローグ」はスタンダップコメディとほぼ同義で扱われ、世相を反映した時事ネタを盛り込むのが慣例だ。

 このコロナ禍での放送休止という番組の歴史上でも類を見ない緊急事態の後、満を辞しての放送のホストに選ばれたのがクリス・ロックだ。この番組のOBでもあるクリスは、御年55歳を迎えるベテラン・コメディアン。90年代にエディ・マーフィーに見出されスターダムに上り詰めて以来、フロントランナーとして常にコメディ界を引っ張り続けてきたレジェンドだ。

 その芸風は自身の黒人性を軸にしながらも、普遍的なテーマを巧妙にジョークにしてみせることが特徴で、後進のコメディアンに与えた影響は計り知れない。また演技に、司会に、プロデュースに、となんでもこなす多才さで、アメリカのお茶の間に長きにわたって笑いを届けてきた。
 
 そんなクリスの登場に、会場の熱気はテレビ画面を通しても伝わるほど。ステージ上でマスクを外すと、いつもはマイクを握る手の中に収め、いまだざわつく会場に向かっておもむろに語りかけた。

「トランプ大統領がコロナで入院したみたいだ。僕は彼じゃなくてコロナの方に同情するよ」

 いきなりの手痛いパンチに会場は、「待ってました!」と言わんばかりの大きな笑いに包まれた。これまでも幾度となく大舞台で厳しいジョークを言い放ってきたクリス。その過激さで批判を浴びたことも少なくない。とりわけトランプに対しては大統領就任直後の2017年、自身のツイッターで「時計の針を300年戻すのを忘れないで」とつぶやくなど不支持と抵抗を表明し続けてきた。
 
 彼は語気を強め、続ける。

「僕たちは今一度、政府とのあり方を考え直さなきゃいけないんだ。大統領はこの4年で何かいいことをしたか_ というかそもそも大統領って必要なのか。ジョー・バイデンが最後の大統領でいいんじゃないか」

 そしてジョークの矛先は民主党にも向けられる。

「そもそも民主党は選挙で勝つ気があるのか? なんでトランプの対抗馬に77歳の老いぼれを選ぶんだ」
 
 クリスは核心に触れる。

「今なぜ世の中がうまくいっていないか。それは特権階級の金持ちが、多くの決定をしているからさ。それはまるで、イケメンが指南する恋愛のアドバイスみたいなもんで、うまくいくわけないのさ」

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