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『女帝 小池百合子』はフェミニズム的にやや古い? オジさんに媚びを売って成り上がる女性像

小池のキャリアアップと女性の地位向上は無関係

 とはいえ、昭和から平成を駆け抜けた女性を描いたという意味では、『女帝』はひとつのエンターテインメントとして成功しているといえるだろう。

「これまで女性初の防衛大臣、都知事に就き、さらに女性初の総理になるのではともささやかれる小池さんは、女性が少ない政界で女性には難しいとされるポジションを得て、従来のフェミニズムが目指していた女性の社会的地位の上昇を体現してきました。しかし、そこに至るまでに用いたのは、オジさんにミニスカートで媚びる、政党の広報的な役割としてメディアの前で華やかに振る舞うといった手法。フェミニズム的に良しとされることとは真逆の、女性的なものを売りにしてのし上がりました。

 そんな小池さんの姿は、キャリアアップという目標さえ達成すればいいのか、という問いを女性たちに突きつけてきます。07年に防衛大臣に就任するのを見たとき、フェミニズムは敗北したと感じたんです。こういう女性しか成功できない――すなわち、女性の社会進出は結局、女性全体の地位向上と関係ないところで進んでいくものなのだ、と。そうした意味では、小池さんはフェミニズムが目標としてきたある種の女性像を批判的に見るきっかけをくれる存在であり、『女帝』はそのことを明らかにしてくれる本です」(田中氏)

「『女帝』は小池さんの“物語”に踊らされてきたマスメディアも批判しており、その点はフェミニズム的にも重要です。昨今の『#MeToo』に代表されるセクハラ告発の流れでフェミニズムの運動が進んでいるかのような報道がありますが、メディアが先走っている面も大きい。現実にはもっと根強い女性差別がありながら、そこを報じず、『ハリウッドのセレブが……』といったことばかり取り上げるので、ある一定の傾向に誘導されてしまう。メディアが現実から遊離して報道することを小池さんは利用してきたわけですが、フェミニズムはそこに乗らないようにしなければなりません」(菊地氏)

 キャッチーな面だけを見て物事を鵜呑みにしないこと。小池氏という女性の生き方も、そして彼女を描いた『女帝』も、そんな示唆を与えてくれる。

(取材・文/安楽由紀子)
(写真/五十嵐佳代)

※「月刊サイゾー」9月号より転載(関連記事は「サイゾーpremium」からお読みいただけます)

最終更新:2020/12/23 09:00
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