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30歳オーバーのアイドルオーディションが大ヒット! BL二次創作戦争も勃発!? 激動&波乱の中国アイドル事情

文=はちこ

──2020年は新型コロナウイルスに振り回される一年だったが、それでもエンタメ業界は暗いムードの世間を盛り上げようと奮闘していた。ここではさまざまな分野の識者に、今年特に熱かった作品を総括してもらう。ここでは、中国オタクカルチャーに詳しいはちこ氏に、2020年の中国アイドル事情を3つのキーワードから解説してもらう。

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「中華オタク用語辞典」(文学通信)

 はじめまして、はちこと申します。

 私は中国出身で、とにかく日本のアニメが大好きです。それにプラスして、就職活動がうまくいかなかった学生時代に、中国(本稿では「中国」を中国大陸側の文脈で解説を行う )の男性アイドルグループに出会い、ドはまりしました。アニオタの私にとって、中国のアイドル文化から中国独特の事情を読み取れるし、日本のジャニーズ系やAKB系、韓流スターの影響も見えてくるので大変興味深く観察しています。その観察の結果は拙著『中華オタク用語辞典』にもまとめさせていただきました。

 同書を執筆していたのは2016年から2019年で、「愛豆」(中国語でアイドルの意)が徐々に一般人に浸透し、中国独自のアイドル文化が成長していた時期でした。ところが、2020年はアイドルファンと一般人との対立が激しくなったり、毛色の違うアイドルグループが出来上がるなど、これまでと少し変わった動きが見えてきました。

 本稿では、その「少し変わった動き」を代表的な三つの中国語キーワードとして取り上げ、解説していきたいと思います。

キーワード1:挙報

解説:「通報する」の意。インターネット上で使われる際は、運営に対応を求めること、政府のインターネット情報管理部門である「網信辦」(中国インターネット情報弁公室。インターネットの検閲や管理などを行う政府機関)に報告することを指します。

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『陳情令』公式サイトより

 皆さんもご存じの通り、中国ではインターネット上の検閲制度がありまして、わいせつなモノや政治的に正しくない表現は規制の対象になります。しかし具体的な細かいガイドラインは公表されていないため、通報されてしまうと、画一的に該当のコンテンツを削除させたりするなど、乱暴なやり方が採用されてしまうことが多いです。

 なので、武闘派ファンは度々この仕組みを悪用して、「自分が想う」推しによくない発言や情報などを徹底的に排除しようとしています。そして2020年、中国アイドル業界で一番大きな炎上事件はまさにこの「挙報」がきっかけで起こりました。

 事件の通報者は「肖戦」という若手俳優のファンです。肖戦はテレビドラマ『陳情令』への出演で大人気となり、そのドラマの原作がBL小説だった経緯もありまして、肖戦ともう一人の主演俳優である「王一博」とのカップリングは大変人気があり、二次創作も盛んです。

 そうした二次創作のひとつに、通報者が気に入らない作品があったのです。作品の中での肖戦は性同一性障害を持つ生物学的には男性で普段は女性装で生活しています、さらに仕事はセックスワーカーとの設定でした。かなり特殊設定が入っている二次創作物なので、作者は作品の傾向を明記したうえ、R18のタグをつけていました。それにもかかわらず、武闘派ファンは作品自体が肖戦本人への中傷に当たると断定し、掲載していたサイトはわいせつだという理由で政府に通報しました。

 問題の同人小説が掲載されていたのは「Archive of Our Own」、通称AO3と呼ばれる同人プラットフォームです。このサイトは中国人ユーザーの利用も多いのですが、中国国外に拠点があるために中国政府のチェックがありません。アイドルファンに限らず、さまざまな分野のオタク、同人作家が活用している総合投稿プラットフォームであり、大陸内の二次創作への制限が増え続けている中では自由に投稿できる貴重な交流の場です。通報者は自分の気に入らない小説を消すために、このサイト全体を中国からアクセスできなくなるよう求めたのです。

 となると、当然、AO3を活用していたオタク、創作者たちは怒りますよね。彼らはSNS上に抗議のハッシュタグを付けて発信します。ただ、抗議のメッセージを送るだけではなくて、肖戦がイメージキャラクターを務める商品をボイコットしようと呼びかけました。

 このあたりの事情はきわめて中国的なので、ぴんとこない方が多いかもしれません。アイドルがCMを務める商品が販売されるのは日本も中国も一緒ですが、中国のほうが「買い支える」意識が強いのです。その商品が欲しいからじゃなくて、CMが続くように買って応援するという気持ちです。アイドルファンは自分の推しがどれだけ人気があるかを証明するために、推しがPRした商品はとにかく爆買いするわけです。

 企業側もよくわかっていて、ファンの購買力を見て自社商品のイメージキャラクターを決定するようです。なので、AO3の創作者たちは肖戦がCMした商品をボイコットすることを通じて、肖戦ファンたちの努力を無にしようという“報復”をはじめたわけです。この事件が発生したのは2020年の2月ですが、そのボイコットは現在も継続しており、ボイコット対象となったメーカーは十数社にのぼります。ボイコット運動の影響を受け、企業はCM内容の見直しを行うなど、炎上対応に追われました。

 コロナが蔓延している真中、アイドルファンが起こしたこの騒ぎは非常に目立ち、マスコミは「ファンの暴走をコントロールできていないアイドル本人、事務所にも責任がある」と批判するなど、事態はあらぬ方向に拡散しまくりました。

 インターネット検閲、買って支えるアイドル事情など、中国独特の事情が満載の炎上事件です。中国に進出している日本のアイドルが増えている中、肖戦の炎上事件はよい教訓でしょう。日本の場合、事務所は絶対的ですが、中国の場合はファンの数が多く力もあります。そのため、最初から事務所がある程度ルールを決めておかないと、こういったファンの集団的暴走が発生した際のコントロールが効かなくなります。

 また、ファンをいかに巻き込むか、というのは今までファンビジネスの展開の仕方だと思いますが、今後は一般人から反感を買うかどうかも配慮する必要があるでしょう。

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