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コロナ禍で変わる「父親と育児」──家族のタスクを管理し、家庭内分業を円滑する”ベビーテック”の最前線(後編)

家庭内で赤ちゃんの情報を共有

 では、ベビーテックは日本の子育て世代にどのようなメリットをもたらすのか。ベビーテック専門メディア「Baby Tech.jp」を運営するパパスマイル・永田哲也代表に話を聞いた。

 永田氏は2025年頃に向けて、ベビーテック市場が成長・成熟していくと予測。父親・母親問わず、子育て世代にさまざまな形でメリットをもたらしていくだろうと話す。

「ベビーテックにはまず、情報共有性を高めてくれるメリットがあります。たとえば、赤ちゃんのお世話データが可視化してくれるサービスやプロダクトが増えており、家庭内で情報をリアルタイムで共有することができます。女性にとっては、『父親が赤ちゃんのことを知ってくれている』という安心感を高める効果が期待できます」(永田氏)

 現在、妊活シーンから小学校入学前くらいの年齢帯の子供を対象にしたものまで、情報を共有・可視化するアプリベースのベビーテックプロダクトは多数ある。家族であっても互いに互いのことを常に伝え続けるという作業は必須だが、ベビーテックが介在することでそのコミュニケーションを補完してくれる。

「ベビーテックは、意思決定や家庭の悩み相談なども円滑に解決してくれるツールにもなり得ます。子どもの感情が成長してくると、親子の会話だけでは解決できない場合がありますよね。その際にダイレクトに専門家に話を聞けるサービスがあれば、便利でしょう。もしくはAIチャットボットなどで相談を受けるパターンもあり得るかもしれません。現在、夜間の往診など、フィジカルな部分ではケアできるようなサービスは登場してきている。一方で、メンタル部分は子どもの話を聞かなければならないので、空白がまだあります。そこにアプローチするプレイヤーも遠からず出てくるのではないかと予想しています」

 ベビーテックは、家族のタスクを管理したり、家庭内分業を円滑することにも利活用できると永田氏。子どもの送迎、洗濯、炊事、買い物などなど、家庭内には毎日クリアしなければならない作業がたくさんあるが、それらをひとつひとつ可視化することで、家事に不慣れな日本のパパたちも“気づき”を得ることができるようになる。

 外で働きづめの父親は、育児や家庭運営にどれだけの細かい作業があるか、そもそもわかっていないというケースが多々ある。それが関心のなさととらえられ、パートナーとのミスコミュニケーションや家庭不和につながることもしばしばだ。何より互いを知るという基本的なことをベビーテックは手助けしてくれる。

 ベビーテックの発展を見守る永田氏も、安藤氏と同様に、コロナ禍が「父親と育児」というテーゼを大きく変えたのではないかと考えている専門家のひとりだ。

「戦後から続く日本的な家父長制度、そして男性と育児の状況は、ここ7~8年で徐々に変化の兆候が目立ってきています。そこでコロナ禍が起きたため、父親たちが家庭と向き合う時間は強制的に増えることになりました。コロナ禍は災難ですが、男性たちにとっては気づきを促す機会であるとも思います」

 父親が育児に参加する欧米各国でも、それが常識となるまでには20~30年の年月がかかったという。日本ではここ十数年の間に父親と育児がフォーカスされ始めているが、社会制度や企業の変化とともに、テクノロジーがそのスピードを加速させていくはずだ。

河 鐘基(ジャーナリスト)

リサーチャー&記者として、中国やアジア各国の大学教育・就職事情などをメディアで発信。中国有名大学と日本の大学間の新しい留学制度の設置などに業務として取り組む。「ロボティア」「BeautyTech.jp」「Forbes JAPAN」など、多数のメディアで執筆中。著書に「ドローンの衝撃 」(扶桑社新書) 「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」 (扶桑社新書)、共著に「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」 (光文社新書)など。

Twitter:@Roboteer_Tokyo

はじょんぎ

最終更新:2023/01/26 18:31
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