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日本だけではなく、世界的にも進行中!──おじさんのためだけのフェイスブック

──「フェイスブックを利用しているのはおじさんだけ」というイメージが、世間一般では定着しつつある。実際のデータを見ると、必ずしも「おじさんだけ」というわけではないが、なぜそのようなイメージを抱かれるのか? フェイスブックの持つ特性などからひもといていきたい。(サイゾー21年1月号「男性学」特集より一部転載)

日本だけではなく、世界的にも進行中!──おじさんのためだけのフェイスブックの画像1
20代と50代の主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率。(「令和元年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」より引用)

 いつからか、「フェイスブックを利用しているのはおじさんばかり」というイメージが定着した。単なる定量的な報告だけでなく、「エアポートおじさん」や「筋トレタグ付けおじさん」など、フェイスブックユーザーの中年男性たちを揶揄する言葉が次々と生まれることもあり、それを非好意的に取り上げたSNS上のつぶやきやネットニュースは、高い人気を集める。

 もはや見世物になっている感もあるおじさんたちだが、とはいえ現実問題、悪目立ちしているおじさんは、自分のフェイスブックを開きさえすれば簡単に見つけることができる。元はといえば、「賢い男子学生が同大学に通う女子学生の顔写真を違法アップロードし、格付けしあう」という若さに満ちた用途から始まったSNSだったのに、なぜ日本では「おじさんのためのSNS」に変貌してしまったのか? 

 本稿ではフェイスブックが持つ中年男性との相性や、中年男性だからこそ使いやすい機能などを見ながら、その謎を真面目に考えていきたい。

平成から令和にかけて若者激減、おじさん急増

 まず、フェイスブックが中年だらけで、若者は減っていっているのは、データからもはっきりわかる。

 トップ画像の総務省情報通信政策研究所の「令和元年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、2019年の全年代(10~60代)でフェイスブックの利用率は32.7%。年代別で細かく見ると、10代は28.9%、20代は39.3%、30代は48.2%、40代は35.9%、50代は33.5%、60代は12.1%となっている。この中でも数値に大きな変化が見られたのは20代と50代で、例えば20代は15年には61.6%を記録したが、19年には上記の数値に。4年で数値を約22ポイントも落としている。一方、50代は同じ期間で18.7%から上記数字へと倍近く利用率を増やしており、対照的な結果だ(なお、他の年代は微減もしくは微増で、20代・50代ほどの変化はなかった)。

 これらをまとめると「若者(20代)のフェイスブック離れは確かに進んでいる」ということになるわけだが、もっともこれは日本だけの現象ではなく、諸外国でも同じく見られる。

 例えば18年にアメリカの「Newsweek」は、フェイスブックが世界で月間20億人のアクティブユーザーを獲得するのに、おじさんたちの参入が非常に効果的であったとする一方で、おじさんたちが入ってきたせいでノックオン効果がもたらされ、10代は月に1回しかフェイスブックにログインしない「フェイスブック離れ」が起きていると指摘している。同様に市場調査会社eMarketerの18年の調査によると、フェイスブックはかなりの割合で若いユーザーを失っており、18年時点で24歳以下の推定200万人のユーザーが離れ、さらに今後10代の流入の減少傾向は続くと推測した。

 このようにして、世界中でおじさんだけが残ったフェイスブックというSNS。しかし一方で、そもそも日本の場合は上陸初期からおじさんだらけだったと、ネットメディア評論家の落合正和氏は述懐する。

「フェイスブックが日本で注目され始めたのは09~10年頃。当時は『ビジネス活用に有効』と言われることが多かったため、それを受けてビジネス目的の参加が増え、結果、おじさんおばさんが多くなった背景があります」

 今となっては昔の話だが、それまでインターネットは「匿名性」がなによりも重要だった。しかし、ご存じの通り、フェイスブックは実名制。変化に柔軟な若者ならさておき、中高年にもウケたのはなぜだろうか?

「ご指摘の通り、それまでのネットは匿名性が特徴でした。mixiは最盛期で2000万人ほどの登録者がいましたが匿名ですし、それ以前からある2ちゃんねるなどもそうです。ゆえに、09~10年頃は『顔出し必須、実名制のフェイスブックは日本では流行らない』と考えていた識者が多かったんです。しかし、11年頃には意識が変わっていきました。理由は単純で『仕事で使いたい』と思っている人からすれば、実名はむしろ必要なことだったからです。当時、フェイスブックは『人脈作りに役立つぞ』と言われたので、ビジネス目的で入った人たちがハードルを下げたのだと考えられます。もちろん、フェイスブックそのものの世界的な需要増なども背景にあったでしょうが、そういうビジネスマンたちの心理的な要因が大きかったはずです」(同)

 こうして、ビジネス利用で普及、拡大した日本のフェイスブック。今となっては人脈作りや新たな市場作りにつながったのかは正直判断が難しいところだが、それでもツイッターやインスタグラム、TikTokなどと比べて、仕事関連の人とつながりやすいSNSなのは間違いない。ランダーブルー株式会社代表でストラテジストの永江一石氏は、こう語る。

「フェイスブックは知らない人とつながらないSNSのため、知人、友人が多い人に相性が良いんです。おじさんは外で働いている分、社会的な友達が多いのでフェイスブックを始めやすかったのです」

 また、機能面に目を向けると、パソコンで見やすいところも中高年向けになったようだ。

「老眼でスマホが見にくい人でも使いやすいという理由から、パソコンの利用を好む中高年は少なくありません。実際、スマホや携帯電話という機器もある中で、パソコン利用率が全年代で一番高いのは60代なんです。そして、フェイスブックはパソコンから始まったので、レイアウトもパソコン向け。機能が多すぎて、逆にスマホからだと使いにくくなっています。最初からスマホ向けで設計されているインスタグラムやTikTokとは、そもそも作りが違います。結果的に、そのような部分もフェイスブックの年齢層が高い理由の一端になっていると思われます」(同)

 確かに、スワイプするだけでオススメ動画が次々と出てくるTikTokのようなSNSとは、発想が真逆であるといえる。

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