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給付金裁判で国側が「性風俗業は不健全」と断言!の波紋… 国から見捨てられる風俗業界を予言した女性作家を直撃

文=野口英明/フリー編集者

画像はイメージです

 先日、一部話題となった記事「コロナ禍で大手メディアが『風俗産業』と『フリー売春』の実態を伝えない理由」(ビジネスジャーナル)で、見捨てられている風俗業界に目を向けてほしいと訴えたノンフィクション作家・酒井あゆみさんだが、今度は一転、いま話題になっていることに対して、怒りとあきらめが同居した複雑な心情だという。

 4月15日、関西地方でデリバリーヘルス(無店舗型性風俗店)を運営する会社が、新型コロナ対策で支給される「持続化給付金」の対象から性風俗事業者を除外することは憲法違反だとして、国に給付金を求めた訴訟の第1回口頭弁論が東京地裁で行われた。ここで国側は「性を売り物とする性風俗業者は本質的に不健全」と断定し、給付対象外としたことは合理的だと反論したのだ。

 酒井さんの現在の怒りとあきらめはここに起因している。国から「不健全」のレッテルを貼られた風俗業界、風俗嬢はどうなっていくのか。酒井さんに聞いた。

パパ活(フリー売春)に向かうしかない状況

――コロナ禍の給付金支給を巡って、関西地方でデリヘルを経営する30代の女性が国を相手取った訴訟を起こしていますが、国側の方は、風俗業界は「本質的に不健全」なので支給対象外とするのは合理的だとして、争う姿勢を鮮明にしました。

酒井 「本質的に不健全」という言葉が飛び交った日、都内のストリップ劇場(シアター上野)が摘発されました。従業員だけでなくダンサーまで。ひどすぎる。さらに「女」の生き場所を削る気か。

――「性を売り物とする性風俗業者は本質的に不健全」ということから給付対象外になっているので、これは「差別ではない」「区別だ」という認識を示したことになります。

酒井 いっそのこと完全に差別すればいい。中世半端に「許可」なんか出すから余計に腹が立つ。水商売の店舗には給付金を支払っている。なのに、なぜ同じ許可を取っている風俗店は駄目なのか。法律も同じ「風営法」で許可を受けていて、税金だけ取って、給付金は支払わない、都合が悪くなったら摘発。これではますます、管理売春の世界で生きる女たちを「フリー売春」に追いやっているのと同じではないですか。見てください!

(そう言って酒井さんは、取材者にスマホを近づけ、画像を見せる)

 連日、「ギャラ飲み&パパ活」のスレは盛り上がりを見せています。そこに書かれた「条件」は「写真と実物が違ったら帰ってもらいます」は当たり前で、提示額は日増しに超激安化し「決定者のみに詳細を連絡します」という「買い手」が強すぎる条件ばかり。届けている業者が摘発されるわ、給付金ももらえないわ、フリー売春でもふるいにかけられ「リスクはすべて引き受けて、失職したら自己責任でお金を稼げ」と言われているのと同じことです。

風俗業界、裸業界に関わっている人たちは国を信用していない

――その憤りの一方で、すでに酒井さんはこの裁判について、国側の判断を予見しています。近著の『東京女子サバイバル・ライフ ~大不況を生き延びる女たち~』(コスミック出版)には、初老の風俗店経営者とのこんな会話があります。

「提訴したのは30代の女経営者ということですよね。この人は開業してから日が浅くて闇社会とのしがらみがない、つまり健全経営をしているんだと思います。だから、堂々と提訴できるんじゃないかな。長い歴史のある風俗店だと、今は闇社会と手が切れて健全経営だとしても、過去にさかのぼればいろいろでてきますから。老舗経営者ほど、提訴したデリヘル経営者と共闘するのが難しいと思います。

 だいたい、風俗業界、裸業界に関わっている人たちのほとんどが国をまったく信用していない。国から持続化給付金をもらって借りを作った場合、店が今後どんなことになるかくらいの想像力はあります。だから、国からの援助は最初からあてにしてないですよ」

酒井 そうですね。この風俗店経営者の方は、私が言いたかったことを代弁してくれました。例えば、この発言。

「でも、税金をたくさん払っている風俗店は多い。なんていうか、私たちの存在を許してくれている社会やお国に対して、僅かな懺悔というのがあるのかもしれません。厳密に言えば、幾ら許可をもらっているからとはいえ、違法な部分がまったくない経営をしているかといえば口ごもってしまいますから。だからといって、この業界でしか働けない事情がある女が大半なので、廃止されるのはすごく困りますね。

 人権派やフェミニストのなかには、性風俗産業をなくせという方もいますが、働く女たちの昼職に参入できないこれまでの人生や生活実態、セーフティーネットの利用実態もわかっていないのだと思いますよ。それに私たちの業界がなくなったら社会にますます性犯罪が増えて、直引きするしかなくなった女たちはもっと立場の弱い存在になり、コロナ禍の自殺者増に拍車をかけるだけです。公助によって売る女たちを救って、売春を社会からなくそうなんて腹のくくり方、この国がするわけないんですから」

 そして私は、次のように述べました。

「そうなのだ。風俗業界がなくなればどうなるのか。それは国が一番よく知っている。だからなくす気はない。風俗業界は社会にとっての必要悪として、風俗嬢は公助があっても実質的に公助を受けにくい者として、これからも存在するしかないのだ」と。

風俗嬢の9割は給付金の申請をしていない

――国側は「性風俗業は本質的に不健全」との見解ですが、現実を直視していないのではないでしょうか。

酒井 これまで、自身の風俗嬢経験を踏まえ、セックスワーカーも職業の一つだと著作で述べてきました。実際に現代では、いわゆる「副業」としても見られているし、お金を稼ぐ手段の一つのジャンルとしてすでに成り立っている。それで生活している人間も多い。昼間の一般職(昼職)をやりながら副業としてやっている人もいれば、昼職と兼業しないで裸業界一本で複数を掛け持ち(例えば、ソープとデリヘルなど)して生活している人も多い。

「売り人口」(管理売春、フリー売春を問わず、体を売って稼ぐ女たちの数)は表に出ている数よりもはるかに多いんです。それは、体を売ったお金で成人している子どもが驚くほどいるということです。しかしコロナで管理売春の世界は死に体です。

――風俗店とはちがって、風俗嬢は給付金申請ができるという声もあります。

酒井 風俗嬢個人は、給付金の支給対象にはなっていても、さまざまな事情で申請できない。私の取材による実感では9割の風俗嬢が申請していません。これについては少々複雑な事情があるので、近著で、性産業に従事する女たちの納税事情から取材し、確定申告できない理由を明らかにしました。

体を売る仕事は「見守ってくれる人」がいるからこそできる

――性産業は究極的に貧困に陥ったり、社会からはじかれたりした女性の居場所として法的に認められるべきだ、性産業は性犯罪の抑止にもなっているという立場です。

酒井 私はそう考えていますし、実際、コロナ禍で性風俗店は青息吐息ですが、存続している店はあります。つまり、国は性風俗業界をなくす気はなく、ただ事態を静観しているだけで、しかし公助からは除外するという、生かさず殺さずの状態にしている。まさしく見捨てられた業界です。

 国側に風俗業界を認めてもらいたいという想いはありましたが、「本質的に不健全」発言は、やはりという気持ちもあり、怒りとあきらめが同居した分裂した気持ちです。ただ、このままでは、生活に困窮した女たちがますますフリー売春に向かい、危険に陥る可能性が高くなることを危惧しています。

 この仕事は本質的にお金でつながった男女関係ですから、些細なすれ違いで揉め事になる。女は命綱一本で仕事しているのと同じことなんです。そんな危うい仕事を管理し、見守ってくれる人たちのおかげで安心感が生じるから、自分の体を商品にできるのです。店舗はそのシステムの構築にお金をかけ、商売にし、税金を収めている。それなのに、性風俗店を一般社会から排除していくのは、危ういとしか言いようがありません。

――コロナ禍でますます困窮する体を売る女たちに向けて、どんなことを伝えたいですか。

酒井 まさしくその点を、『東京女子サバイバル・ライフ』で突き詰めました。いま、管理売春で稼ぐこととパパ活(フリー売春)で稼ぐことの違い、コロナを含めた病気のこと、パパ活で市場がどんなことになっているか、そして泣き寝入りしている被害、表にでない事件がどれだけあるか。

 これらは、いつ生活が破綻するかわからず、そのときに公助も期待できない全女性にとって必要な情報ばかりです。“生きるとは” “金を稼ぐとは”を真剣に考えない女はあっという間に淘汰されていきます。それは苦しいことですが、その一方で、苦しさを乗り越えた人間は人生を劇的に変えることができます。それを体現した、セックスエリートたちの話も紹介しているので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

(構成=野口英明/フリー編集者)

『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女』

●酒井あゆみ
福島県生まれ。主な著書に『レンタル彼氏』『セックスエリート 年収1億円、伝説の風俗嬢をさがして』(ともに幻冬舎)、『売春論』(河出書房新社)、『売る男 買う女』『ラブレスセックス』(ともに新潮社)などがある。風俗業界と売る女たちを机上の知識ではなく、痛みを伴う性と生の経験から描きだす文章は人の心を打ち、著書は20冊以上に及ぶ。近著は、『東京女子サバイバル・ライフ ~大不況を生き延びる女たち~』(コスミック出版)。

最終更新:2021/04/27 13:30

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