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スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会【19】

アメリカで注目されるワクチンを「打つ自由」と「打たない自由」―反ワクチンいじりは賛否両論

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写真/Getty Imagesより

 7月4日の独立記念日、バイデン大統領はホワイトハウスに医療従事者を含めたおよそ1000人のゲストを招き、アメリカの復活ぶりを世界へアピールした。

 現在、ワクチンの接種の広がりとともに、イベントもソーシャルディスタンス不要、かつフルキャパシティでの開催が可能になるなど、日常が戻りつつある。祝日のこの日も多くのアメリカ人がパーティーや家族とのひとときを楽しんだ。

 ファイザー社やモデルナ社製のワクチンのように2回受ける必要がある場合、2度目を打ち終えてから14日経つと「Fully Vaccinated(=完全にワクチンを接種した状態)」とみなされ、多くの制限が取り払われるのだが、レストランやスーパーの入り口にも「Fully Vaccinatedの方はマスクをしなくても結構です」という注意書きが貼られていることが多い。

 そもそもバイデンは大統領就任時、「独立記念日までに、成人の7割にワクチンを接種すること」を目標に掲げていた。4月ごろは一日180万人が接種するなど予想を超えるペースで進んだが、このところややペースが落ち、目標の1億6000万人にはわずかに届かなかった。

 州単位で見てみると、達成されたのは全50州のうちわずか20州にとどまっており、7月5日現在、最も接種が進んでいるバーモント州でも、Fully Vaccinatedの割合は66.0%でニューヨーク州が54.6%、カリフォルニア州では50.4%という結果だった。最も低かったのはミシシッピ州で29.9%、ついでアラバマ州も32.9%と州による開きがあるのが現状だ。南部を中心とした保守的な州ではワクチンの接種率が低い傾向にあり、今後も接種しない意向の人々が多いと言われている。

 テキサス州ヒューストンのメソジスト病院では、医療従事者に対しワクチン接種を義務付けていたが、そこで働く看護師の女性が接種を拒否したために失職したことで、「解雇は不当だ」とし、病院を相手取り訴訟を起こし大きな話題になった。結局、裁判所は原告の女性の訴えを退けたが、全国で「ワクチンを打たない自由」を求める抗議運動が起こった。

 フロリダ州やテキサス州ではすでに「ワクチン接種の義務付けは違憲」とする法案が通過している。

 そうした中、コメディアンのジミー・キンメルが自身の冠番組『ジミー・キンメル・ライブ!』の中で、ワクチンを接種しない人々を茶化してみせた。ジミー・キンメルは2003年からレイトショーと呼ばれる深夜帯のトーク番組の司会者として人気を博し、今やアメリカの「夜の顔」ともいうべき存在。とりわけ、昨年までは番組内でトランプ前大統領に対して辛辣なコメントを繰り返し行ってきたため、リベラル層からの支持は厚い一方、保守層からは度々標的にされ、炎上することも少なくない。あまりの忖度しないジョークに、トランプ本人から司法省を通じて番組に圧力がかかっていたことも公表し話題になった。

 スタジオでの有観客収録に戻り、いつものようにこの日も上品なスーツ姿で舞台に上がったキンメルは客席に向かって、そしてカメラの向こうの多くの視聴者に向かってこう言った。

「最近インターネット上に、医者の資格もないくせにワクチンへの陰謀論を吹聴してる輩がたくさんいるらしいじゃないか。ひとりのやつのプロフィールを見てみたら、『私は大学でウイルスに関する専門的な勉強を100時間にわたって行いました』って書いてあったけど、100時間って、平日の朝8時から夕方5時までを2週間続けただけじゃないか。エリック・クラプトンが2週間でギターをマスターできないのとおんなじでそいつも何もわかっちゃいない。そんなど素人の馬鹿げた嘘を真に受けるな」

 そして、舞台上に注射器の被り物をしたゲストを登場させ、そのような陰謀論を代弁させるコミカルな唄を歌わせてみせた。

「みんな、ワクチンは怖いんだよ。打つとジェンダーが変わっちゃうかもしれないんだって。それにビル・ゲイツがマイクロチップを埋め込んでるかもしれないんだ」

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