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『ハロウィンKILLS』のブギーマンは何を語りかけているのか? 時代を映し出す最新ホラー映画4作品を一挙レビュー

文=バフィー吉川(ばふぃー・よしかわ)

 2021年10~11月にかけて多くのホラー映画が公開された。これは新型コロナウイルスによって公開が渋滞していたという事実もあるが、決してそれだけではない。ホラーは常に現実社会を映し出す鏡である。それだけ描くべきテーマが現代に溢れている証拠だともいえるだろう。

 60~70年代にかけては、多くのカメラマンが戦地に渡り、日常的にテレビで死体が映し出されていた。フィクションのホラーよりもテレビに映し出される現実の方が恐怖であるため、ホラー映画があまり制作されなくなっていたこともある。さらに、アメリカでは「ヘイズ・コード」によって、グロステスク、性的なもの、あるいは国に反発的な政治的思想などの表現に大きな規制がかかっていた。

 そのため、規制のない海外ホラーに観客が流れたことで、ルチオ・フルチの『マッキラー』(1972)や、ダリオ・アルジェントの『サスペリア』(1977)といった、イタリアなどヨーロッパからの輸入系ホラー「ジャッロ映画」が人気となっていた。

 ヘイズ・コード撤廃後は、カウンターカルチャーも後押しとなり、奇抜な映画が常にひしめき合うことになる。

 そして1978年、32万5000ドルの低予算で制作された『ハロウィン』(1978)が4716万ドルの全米興行収入大ヒットを記録した。低予算であり、しかも有名俳優を起用せずともヒットを狙えるという点から、こぞって若手クリエイター達が飛びつき、『13日の金曜日』(1980)『プロム・ナイト』(同)『血のバレンタイン』(1981)といった作品が大量に製作され、アメリカにおけるホラー映画が活性化。それに伴い「スラッシャー映画」「スプラッター映画」というジャンルが確立されていった。

 映画において「ホラー」というジャンルを語るには、ちょっとした論文レベルになってしまうので、今回は現在公開中、または公開予定の作品を例として、ホラー映画界に今、何が起きているかを語っていこう。

「不安」や「恐怖」による暴力性は受け継がれる──『ハロウィンKILLS』

『ハロウィンKILLS』のブギーマンは何を語りかけているのか? 時代を映し出す最新ホラー映画4作品を一挙レビューの画像1
『ハロウィンKILLS』(C)UNIVERSAL STUDIOS

 1978年から始まった「ハロウィン」シリーズは、スラッシャー映画として有名になっていった。本作が一貫して描いていたことは、「不安」や「恐怖」が人々の人生にどう影響をもたらすのかの問題提示。社会派ホラーの走りであったといえるだろう。

 ただし、シリーズ化によって、どうしてもジャンル映画としての印象が強くなってしまい、根幹にある社会問題が見えづらくなっていた。

『ハロウィンKILLS』のブギーマンは何を語りかけているのか? 時代を映し出す最新ホラー映画4作品を一挙レビューの画像2
『ハロウィンKILLS』(C)UNIVERSAL STUDIOS

 しかし、デヴィッド・ゴードン・グリーンによって制作された『ハロウィン』(2018)は、そういった「ハロウィン」シリーズが持つメッセージ性をより強調させていた。スラッシャー映画という枠を超えて、「虐待」「PTSD」「ヘイトクライム」などさまざまな現実問題を連想させる、社会派な作品にまでアップデートさせたのだ。

 2018年版では、ジェイミー・リー・カーティス演じるローリー・ストロードと、「ブギーマン」ことマイケル・マイヤーズとの因縁が描かれる過程において、「恐怖」や「不安」による暴力性が次世代にも感覚的に受け継がれてしまうという構造を描いていた。

 2018年版のテーマが「因縁」とするならば、『ハロウィンKILLS』のテーマは「暴力」だと言えるだろう。

『ハロウィンKILLS』では、惨劇の舞台となったイリノイ州ハドンフィールドの人々に視点が切り替わる。ブギーマンによる恐怖を経験した世代、そして感覚的に知っている世代、そして新たな世代が、直面する不安や恐怖によって暴徒化していく。

 これはブラック・ライヴズ・マターにおいても同じことが言えるだろう。黒人を射殺した警官は銃を抜かれると思って、その恐怖感から先に撃ったと主張する者が多い。これは罪を軽くするための発言という可能性もあるが、本心でそう思っている者も、実際問題として多いのだ。

『ハロウィンKILLS』のブギーマンは何を語りかけているのか? 時代を映し出す最新ホラー映画4作品を一挙レビューの画像3
『ハロウィンKILLS』(C)UNIVERSAL STUDIOS

 恐怖や不安が暴力に走らせ、時に間違った正義の名のもとに、さらなる暴力を生む構造を描いているのだ。

 暴徒化した人々の様子は『ハロウィンII』(1981)『ハロウィン4 ブギーマン復活』(1988)でも描かれてはいたが、あくまで作品のギミックとして消費されていただけに、そこを徹底的に描いてみせたという点においても、納得の傑作だ。

『ハロウィンKILLS』

監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン 
脚本:ダニー・マクブライド、デヴィッド・ゴードン・グリーン、ジョン・カーペンター
製作:ジェイソン・ブラム、ジョン・カーペンター、ジェイミー・リー・カーティス、ダニー・マクブライド
出演:ジェイミー・リー・カーティス、ジュディ・グリア、アンディ・マティチャック、カイル・リチャーズ、ジェームズ・ジュード・コートニー
配給:パルコ 宣伝:スキップ  
(C)UNIVERSAL STUDIOS

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