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新型コロナの感染拡大が治療体制にも影響すると示すデータ 患者の身体拘束が増加

文=鷲尾香一(わしお・こういち)

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 新型コロナウイルスの感染拡大により、コロナ感染患者を受け入れた病院では、認知症患者に対して身体拘束の実施率が増加していたことが、京都大学の研究チームにより明らかになった。

 新型コロナ患者受け入れ病院では、面会制限、医療資源不足、医療スタッフの身体的精神的負担の増加からそれまで通りのケアを行うことが、容易ではなくなった。特に認知症患者に対する包括的なケアは、影響を受けやすいとも考えられている。

 この研究では、転倒予防などのメリットがある一方で、倫理的に可能な限り避けるべきとも考えられるケアのひとつである身体拘束の実施について、新型コロナ禍での認知症患者に対する実施割合の変化を検証した。

 認知症患者に対する身体拘束とは、徘徊、転倒、自他への危害を防止するために、四肢や体幹を紐等で椅子・ベッドに縛ったり、手指の機能を制限するミトン型の手袋をつけたりすることを指す。

 例えば介護保険法では、身体拘束は原則禁止されている。ただし、「緊急時のやむを得ない状況の場合、必要最低限の身体拘束」を許可している。

 この緊急時のやむを得ない状況について、厚生労働省では「切迫性」「非代替性」「一時性」の3原則すべての用件を満たしている場合にのみ身体拘束が認められる、としている。

「切迫性」とは認知症患者本人、もしくはほかの患者の方々が危険にさらされる可能性がいちじるしく高い場合のこと。「非代替性」とは身体拘束する以外の介護方法がない場合を指している。そして「一時性」とは、拘束は一時的でなければならない、ということだ。

 その上で身体拘束としては、薬物を過剰に服用することや、自分の意思で開けることができない場所に隔離すること、ひも・柵・ミトン・つなぎ服・立ち上がりにくい椅子などを使い、行動を制限することなど11の行為が上げられている。

 2016年に全日本病院協会が公表した「身体拘束ゼロの実践に伴う課題に関する調査研究事業」によると、一般病棟の90%以上、病院・介護施設等全体で65.9%が身体拘束の11行為のいずれかを行うことがあると回答している。

 研究チームは、日本の行政データベースを用いて、19年1月6日~21年7月4日に認知症ケア加算を算定された65歳以上の患者を抽出し、新型コロナ患者を受け入れた病院に入院した9万7233症例と、受け入れなかった病院に入院した5万8623症例を対象とし、2週間毎に1000症例当たりの身体拘束実施率を算出した。

 認知症ケア加算とは簡単に言えば、認知症により身体疾患の治療への影響が見込まれる患者に対して、認知症の悪化を予防しつつ、身体疾患の治療を行った場合を指す。

 算出した身体拘束実施率の変化を、政府の緊急事態宣言を介入点として分割時系列解析を用いて検証した結果、新型コロナ患者受け入れ病院では緊急事態宣言以降の身体拘束実施率の増加を認めた。

 具体的には、認知症ケア加算のついた入院高齢者1000人当たりで見た場合、新型コロナ患者を受け入れなかった病院では、政府の緊急事態宣言前後とも身体拘束を行った人数は400人台前半だった。だが、受け入れた病院では緊急事態宣言前に400人台半ばだった身体拘束を行った人数が、宣言後には500人程度にまで跳ね上がった。

 この結果について、研究チームは、「身体拘束の実施は必要な場面も多いですが、倫理的側面や患者への臨床的なデメリットがあることも事実です。コロナ患者を受け入れている病院では医療スタッフが相応の身体的精神的負担を強いられているため、患者ケアへの影響が起こりえる可能性は大いにあると考えます」とコメントしている。

 新型コロナの感染拡大は感染患者だけではなく、そのほかの疾患による患者の治療体制にも影響し、さらには、身体拘束の増加という事態も引き起こしていた。

 この研究結果は、21年11月22日に米国の国際学術誌「PLOS ONE」にオンライン掲載された。

鷲尾香一(わしお・こういち)

鷲尾香一(わしお・こういち)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」ほかで執筆中。

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Twitter:@tohrusuzuki

最終更新:2021/12/09 06:00

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