「平家とか源氏とかどうでもいい」北条宗時の真意 ドライでシビアな当時の武士たち

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

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北条宗時(片岡愛之助)と北条義時(小栗旬)|ドラマ公式サイトより

 『鎌倉殿の13人』第5回は、源頼朝軍が手痛い大敗北を経験する「石橋山の戦い」がドラマの中心となりました。戦については後で詳しく述べるとして、主人公・義時(小栗旬さん)の「兄上」こと北条宗時(片岡愛之助さん)のお話から今回は始めましょうか。

 北条宗時という人物について、後世に伝わる情報はあまり多くはありません。ただ、彼の名前の由来を考えると、頼朝の義実家として成り上がる前の北条家がどういう生き方をしていたかが垣間見られ、面白いのです。

 北条家は「源氏の御曹司」こと源頼朝と共に平家の圧政に抗議する挙兵を行ってはいますが、以前から反・平家だったわけではありません。むしろ、頼朝挙兵のかなり直前まで、平家中枢部と少しでも強い関係を築こうと腐心していた可能性があります。

 その証拠のひとつが、北条家当主・時政の後妻となった牧の方(ドラマでは宮沢りえさん演じる「りく」)の出自です。ドラマでは「都の公家の出」くらいしか情報のない牧の方ですが、史実では、彼女の実家は平清盛の継母である池禅尼を輩出しています。そして、牧の方の父・宗親(むねちか)は、池禅尼の子・平頼盛の所領のひとつを管理する職を得ていました。つまり、頼朝挙兵時、北条家の身内には完全に平家方と言える女性がいたのです。

 また、勘の良い方はすでにお気づきかもしれませんが、「兄上」こと北条宗時の名前には、牧の方の父・宗親の一文字「宗」があります。このことから、宗時という名前は、彼が元服を迎えた時に宗親から付けてもらった可能性が考えられ、つまり北条家は以前から京都の牧家と太いパイプを持っていたのではないかと見ることもできるのです。

 牧の方も、当初の予定では、宗時の妻となるべく京都から関東に下ってきていた女性なのかもしれません(細川重男『執権 北条氏と鎌倉幕府』講談社学術文庫)。そうなると、彼女がなぜ宗時の父・時政の後妻になってしまったのかという問題がありますよね。本名・年齢も不詳の女性であり、結婚の記録も残されていないため、なんともいえない部分がありますが、宗時が「石橋山の戦い」で戦死したことを受け、時政が(年の差があるけれど)牧の方の新しい夫になったというあたりが実は正しいのではないか……と筆者は考えています。

 北条宗時について残る数少ない記録が、彼が「石橋山の戦い」で戦死したという事実です。しかし、第5回のタイトルが「兄との約束」だったことを忘れるくらい、ドラマの宗時は途中まで死ぬ気配がありませんでした。「多勢に無勢」のことわざ通り、圧倒的な兵力差がある大庭景親軍に真正面から立ち向かうなど無茶な戦い方をしたことがたたって、頼朝軍はちりぢりに敗走します。この時も宗時は傷ひとつ負っておらず、あれれ?と思った直後、死亡フラグが立ち始めたのでした。

 敗走後、“とある洞窟”に味方たちと共に身を潜めていた頼朝が不満を爆発させていました。「こんなことならご本尊を持ってくるべきであった。誰か取ってきてくれ。誰か!」などと言い出した彼の“戯れ言”を受けて、宗時は工藤茂光とふたりで北条館まで取りに戻ろうとするのですが、その道中の川辺で暗殺されてしまうのです。宗時が少し目を離した隙に工藤は伊東祐親の下人・善児(梶原善さん)の手により静かに仕留められてしまっており、続けて宗時も背後から小刀でひと刺しされ、命を奪われました。源頼朝と八重の間に生まれた男子・千鶴丸を溺死させた善児の再登場と、その“必殺仕事人”ぶりに大きな反響があったようですね。

 なお史実では、「石橋山の戦い」で敗走した際、北条家は、当主の時政と義時、そして嫡男の宗時に分かれて逃げのびようとしたそうです。この時、義時は数え年でまだ18歳でした。いちおう初陣でもありますが、史実で義時に期待されていた一番の役割は、北条の庶家・江間の人間として、なにかあれば時政の身代わりになることだったと考えられます。

 ドラマでも、宗時が義時に向かって「(戦場では)父上から離れるな!」と叫んでいましたね。『鎌倉殿』では、北条家の嫡男である宗時と、庶子の義時に大きな違いを設けていませんが、セリフの端々に史実に配慮していることを匂わせており、三谷幸喜さんの脚本は細やかな工夫で満ちているようです。

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