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『激レアさん』SMA芸人たちのジャイアントキリングと“芸人の墓場”の17年史

文=寺西ジャジューカ(てらにし・じゃじゅーか)

『激レアさん』SMA芸人たちのジャイアントキリングと芸人の墓場の17年史の画像1
『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)Twitter(@geki_rare)より

 2月28日放送『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)が取り上げたのは、“お笑い界をカオスにしている人”であった。ソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)芸人部門を統括する部長・平井さんが登場したのだ。お笑いファンにはもはやおなじみ、伝説の人である。

「(平井さんを見て)あ、ソニーのお笑い部門の部長さんなんだ」(若林)

 とぼけてはいるが、若林が平井さんのことを知らないわけがない。SMAには奥田民生、木村カエラ、LiSAといったアーティストが所属しており、ユニコーン「スペースカウボーイ」のMVにはSMA芸人が大挙出演した。もしかすると、これは彼の手腕だったのかもしれない。

ブレイク前のオードリーも惹かれたSMAの方針

 平井さんが芸人部門を立ち上げたのは2004年。このとき、SMAが選んだのは「年齢制限なし」という方針だった。来る者は拒まず“誰でもOK”的な姿勢で芸人を所属させた理由は、「フリーの芸人を集めたらどこかからお宝ものが見つかるんじゃないか?」という平井さんの考えだ。確かに、かつてのSMAは芸人界隈で“最後の砦”“芸人が最後に行き着く事務所”と呼ばれていたものだ。

 番組内では当時のSMA所属芸人リストが公開されたが、感慨深い。33番にはモダンタイムスがいるし、85番にいるセクシーチョコレートはアルコ&ピースの平子祐希が組んでいたコンビだ。若林が指差したマッサジルは錦鯉・長谷川雅紀が組んでいたコンビだ。

「マッサジルさん、知ってます? 作業服で2人で漫才する。よく一緒のライブ出てた」(若林)

 オードリーとマッサジルは、2008年4月24日放送『爆笑オンエアバトル』(NHK)で共に初オンエアを果たした、旧知の間柄。オードリーは苦節10年の下積みを経て2008年『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)でブレイクを果たすが、長谷川に至っては苦節30年だった。

 ハリウッドザコシショウ、バイきんぐ、錦鯉と、みんな元・吉本勢である。まさに、“平井再生工場”と言っていい。結果、ソニーのブランドイメージとかけ離れた者ばかり集まる部門になってしまった。ハゲ、裸芸人、おじさん……。そういえば、音楽部門のCBSソニーにもプロダクションを頼らず自力でタレントを発掘する精神があった。完成済みの芸人を引き抜くのではなく、未完の人材を自力のマネージメントでブラッシュアップする。ソニーが新規事業を始める際のエピソードは、どの分野もドラマがあって面白い。

 当時のSMAについて証言してくれたのは、同事務所の生き証人であるハリウッドザコシショウだ。

「(当時、他の事務所からは)大概、30歳以上の奴は毛嫌いされてましたから、ソニーくらいじゃないですか? 上限なかったの。ヤベェ奴、ヤベェ奴、ひっきりなしに入ってきましたからね。芸も何もないお婆さんとか入ってきましたから(笑)。あと、銀行強盗のネタをやる芸人がいて、『なんか包丁が光るなあ』と思って見てたら、マジの包丁でやってたんですよ」(ザコシショウ)

 ザコシが“ヤベェ奴”と言うのだから、よっぽどだ。ブレイク以前、この頃のオードリーにはソニーに惹かれていた時期があったという。

「そういう噂あったんだよね、『ソニー入れるぞ』っていう。それで、『事務所に“その芸風やめたほうがいい”とか止められないらしいよ』っていう噂もあったから。俺たちは『なんだ、その胸張ってるの』とか言われてたから、『そうなの、ソニーって?』って思ってたときありますもん」(若林)

 もしも彼らがSMAに所属したら、誰にも邪魔されずアメフト姿でショートコントを繰り出すコンビになっていたのだろうか? 

“救世主”コウメ太夫が作家の助言でブレイク

 

 SMAの“救世主”はコウメ太夫である。大衆演劇「梅沢劇団」の座長だった梅沢武生(梅沢富美男の兄)の弟子につき、そこから芸人に転向したコウメ。どの事務所のオーディションにも受からなかったが、「ソニーは誰でも入れるよ」という噂を聞いて、実際にあっさりSMA入りした。

「『免許証だけ見せて』って言われて。『年齢さえ嘘ついてなければいいよ』って」(コウメ)

 派遣アルバイトの面接レベルで緩い。ここまで来ると、年齢詐称にだけ厳しい点が逆に気になってしまう。というわけで、念願の事務所所属が叶ったコウメ。しかしある日、彼は平井さんに「もう、芸人辞めます」と相談したそうだ。

「基本、あの原型の『○○すれば○○でした』みたいなネタを作家さんに見せたら、その作家さんは『ワケわからないなあ』ってうまく噛み合わなくて、『自分の居場所がない』と思って、『辞めます』って話だったんですけど」(平井さん)

 ワケわからないのはしょうがない。その作家さんは正しい。でも、そこが彼のいいところのはず。Twitterで意味が通じることをつぶやいていると、逆に心配されるのがコウメだ。「作家さんと気が合わないだけで辞めるのは……」と不憫に思った平井さんは、違う作家にネタを見てもらうようアドバイスを授けた。

 結果、その作家とはケミストリーが起こったコウメ。「裏声使うのはどうですか?」「出囃子を口で言うのはどうですかね?」と助言を受けた彼はすべてを受け入れ、舞台で爆笑をさらうようになったという。その作家がまた、有能すぎて恐れ入る。確かに、あの出囃子を口で言わなかったら普通すぎだ。伝説のネタ「チクショー1週間」も、もしや作家のネタだったのか?

 こうして誕生した“新生コウメ太夫”は、SMA所属5カ月で『エンタの神様』(日本テレビ系)に初出演を果たした。事務所初の大ブレイク芸人はコウメ太夫。彼がSMAのファーストインパクトを起こしたのだ。今では、「コウメ太夫がいなかったらSMAは潰れていた」が定説となっている。そして、このブレイクはSMAに推定数億円の“コウメマネー”をもたらしたという。

「(1回の営業で)新入社員1カ月分の給料くらいが本人に入るんで」(平井さん)

 ちなみに、今のコウメがブレイク時に購入したマンションによる家賃収入で生活しているのは有名。彼の行く末を案じ、実家が不動産屋を営むマネージャーがアドバイスしたのがきっかけだったそうだ。もしかして、平井さんなのか? 何にせよ、いい事務所だ。

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