「鎌倉殿」という言葉が背負う背景と、「階級闘争」としての大河『鎌倉殿』

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

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源頼朝(大泉洋)|ドラマ公式サイトより

 『鎌倉殿の13人』第10回「根拠なき自信」は、八重(新垣結衣さん)に言い寄るも冷たくあしらわれてしまい、腐った草餅を食べて腹を壊す平六(=三浦義村、山本耕史さん)などに代表される、コントっぽいシーンが際立っていたように思われます。

 八重を頼朝の前妻だと知った亀(江口のりこさん)が、対抗心をむき出しにし、頼朝と二人でいる寝所までわざわざ八重に夜食を持って来させるなど、今後の女性陣の波乱が予想されるシーンもありました。ああいう小憎たらしい亀=亀の前であれば、たしかに北条政子も怒り心頭のあまり、彼女の住まいをぺっちゃんこに潰させてしまうかもな……などと考えたものです。

 また、戦に出たこともないのに、己の必勝を信じている源義経(菅田将暉さん)の姿(まさに「根拠なき自信」)には、空回り感だけでなく、なにか底知れぬ不気味さを感じてしまった筆者でしたが、みなさんはいかがご覧になられたでしょうか。実は頼朝と涙の再会を遂げた後、木曽義仲追討軍の指揮で頭角を現すまで、義経の姿は歴史の記録からは消え去ってしまっています。どこで何をしていたかの記述がないのです。もちろん、『吾妻鏡』に政子の膝で甘える義経のシーンなどは出てきません。ドラマの中で上総広常(佐藤浩市さん)から一喝されていたように、もしかしたら、頼朝のそばにはいたものの、本当に「小僧は黙ってろ」式で扱われていただけという可能性だってありますね。

 このように振り返ればいろいろと見どころが多い回でしたが、筆者が最も驚かされたのは、第11回の予告映像でした。北条時政の台詞でしょうか、「北条の血を引く者が鎌倉殿となるのじゃ」などと言う声が聞こえたからです。

 普通「鎌倉殿」というと、源頼朝その人、あるいは頼朝が開いた通称・鎌倉幕府(『吾妻鏡』では「関東」という単語で呼ばれていたりする)を指すとされています。それを「北条の血を引く者」の呼び名として使うのは、かなりの三谷流翻案が入っているなぁと思われました。

 今年の大河『鎌倉殿』は、源頼朝とその血を引く者たちを利用し、セレブリティへと成り上がる北条家のサクセスストーリーとして描かれているのですが、まさに本題に入ってきたという感じがしますね。日本史の試験で「鎌倉殿=北条の血を引く者で、坂東武者たちを統べる存在」などと書いてしまうと失点しますから気をつけてください。ということで、今回は「鎌倉殿」とは何か?という問題を改めてお話しようと思います。

 筆者が小・中学生だった頃、鎌倉幕府の成立は1192年だと教えられていました。何の疑いもなく、「いい国(1192)作ろう鎌倉幕府」という語呂合わせで覚えたものです。1192年は源頼朝が朝廷から征夷大将軍の官位をいただいた年です。征夷大将軍の存在=幕府の成立と見た、江戸時代の大学者・塙保己一(はなわ・ほきいち)の見解を、2000年代になるまで中学の歴史の教科書は踏襲し続けていたのでした。

 ところが2000年代に入ってから、中学の歴史教科書の記述が変わり始めました。というのも、もともと頼朝は「官軍」平家に反抗して立ち上がった謀反人にすぎず、それが短期間のうちに坂東武者たちを吸収して強大になってしまった存在です。その一連の過程の中で鎌倉幕府というべき政権が成立したのをいつとするのか、考えるのは実は困難なんですね。鎌倉幕府の成立年については、大きく分けて6通り(か、それ以上)もの可能性があるというと驚くかもしれません。

1.   1180年(治承4年)10~12月 鎌倉を拠点に軍事政権が成立
2. 1183年(寿永2年)10月 「寿永宣旨」によって頼朝が東国支配権を朝廷から認められる
3. 1184年(元歴元年)10月 公文所・問注所の開設
4. 1185年(文治元年)11月 守護・地頭の設置
5. 1190年(建久元年)11月 頼朝の右近衛大将など複数の官位の獲得(※この5項を細分化する考え方もあり、その場合は7通りということになる)
6. 1192(建久3年)7月 頼朝が征夷大将軍に任命される

 本連載は教科書の内容をわかりやすく解説することが目的ではないので、個々の事象についてはあえて触れません。ただ、『鎌倉殿』では、頼朝が鎌倉を拠点とする軍事政権を作った時点という一番早いポイント(1)で幕府(=鎌倉殿の異名)が成立したと考えているのだな、ということは面白く感じたので、覚えておくとよいかもしれませんね。

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