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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.679

社会への絶望感が自動小銃の引き金を引かせた…豪州で起きた無差別殺人描く『ニトラム』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

社会への絶望感が自動小銃の引き金を引かせた…豪州で起きた無差別殺人描く『ニトラム』の画像1
死者35名、負傷者23名を出した豪州銃乱射事件を描いた『ニトラム/NITRAM』

 日曜日の出来事だった。1996年4月28日、豪州タスマニア島の観光地・ポートアーサーで無差別大量殺人は起きた。死者35名、負傷者は23名に及んだ。ライフルを手に凶行に走った犯人は、マーティン・ブライアント。長い金髪の、ハンサムな顔立ちの20代の若者だった。「人づきあいが嫌いだった」という証言が残るマーティンだが、「シャイで優しい青年だった」という声もあった。風光明媚な観光地で、なぜマーティンは大量殺戮を起こしたのか。ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが第74回カンヌ映画祭で主演男優賞を受賞した映画『ニトラム/NITRAM』は、豪州でタブー視されてきた凶悪事件の真相に迫っていく。

 マーティン(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)はオーストラリア南部にあるタスマニア島で、英国移民である父と母と3人で暮らしていた。マーティン一家が暮らすポートアーサーは、かつては流刑地だった小さな町だ。観光以外に目ぼしい産業はない。メンタル上の問題を抱えるマーティンは、学校を出た後は仕事に就くこともなく、鬱屈した日々を過ごしていた。

 サーフボードがあれば、サーファーたちと仲良くなれる。そう考えたマーティンだが、母親(ジュディ・デイヴィス)は「あんたにサーフィンは向いてない」と、サーフボードを買うことを許さなかった。厳しい母親とは対照的に、父親(アンソニー・ラパリア)は息子に優しい。感情の起伏の激しいマーティンを、父親はいつもなだめてくれた。地元で民宿を開くのが父親の夢だ。「お前も経営を手伝ってくれ」と父親に頼まれ、マーティンはうれしそうにうなずく。だが、父親のビジネスはうまく進まない。

 閉鎖的な環境で無為な日々を過ごすマーティンに、希望の光が射し込む。サーフボードを買うためにアルバイトを始めたマーティンは、訪問先で資産家の女性・ヘレン(エッシー・デイヴィス)と出逢う。母親に近い年齢のヘレンだったが、彼女はマーティンを「ファニーで、優しい心の持ち主」と受け入れる。40匹以上の犬や猫が棲む豪邸に、ヘレンはひとりぼっちで暮らしていた。マーティンはペットたちの世話するために通うようになり、やがて一緒に暮らし始める。

 同年代の恋人たちとは異なる、ユニークな関係の2人だった。穏やかな性格のヘレンとの生活によって、マーティンの心は満たされた。だが、そんな幸せな日々は長くは続かない。2人で街へ向かった際、ヘレンが運転し、マーティンが助手席にいた車は横転し、クラッシュしてしまう。事故から生還したのは、マーティンひとりだけだった。

 不幸は続く。しばらくすると、マーティンの父親が沼地で死体となって発見された。マーティンの理解者たちが、次々とこの世を去ってしまう。ヘレンの遺産を受け継いだマーティンは、そのお金で自動小銃を購入する。惨劇へのカウントダウンが始まった。

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