『カモン カモン』フォトジェニックなモノクロ映像が描き出す、ホアキン・フェニックスと9歳子どもの友情

『ジョーカー』（2019）の怪演が記憶に新しいホアキン・フェニックスであるが、ホアキンといえば、モキュメンタリーであるということを隠しながら、本物のドキュメンタリーのように偽りながら制作した『容疑者、ホアキン・フェニックス』（12）で、本当に心配した業界関係者やファンから、その行き過ぎた悪ふざけが批判されたり、デモに参加して逮捕されるなど、ゴシップ誌の常連客のような俳優でもある。

　破天荒なイメージが定着してしまっているホアキンが『ジョーカー』の次に選んだ作品が、A24製作映画『カモン カモン』となるわけだが、今作はなんと、ハートフルな人間ドラマ、しかも相手は子ども（天才子役のウディ・ノーマンが演じている）だ。

　ホアキンと子どもの組み合わせなんて、ミスマッチだと思った人も多いのではないだろうか。そんな一見、ミスマッチな映画『カモン カモン』が2022年4月22日から公開される。

　狙ってキャスティングされたわけではないが、ホアキンは実生活で、2020年に、パートナーのルーニー・マーラとの間に第一子が誕生している。偶然にも父親となったホアキンの心境がリンクする部分も多くあったはず。

　今作の着想元は、監督であるマイク・ミルズが体験した、子育ての大変さを反映した物語であることからも、変に子どもに慣れた俳優ではなく、逆にミスマッチなほどに子どもといる印象のない俳優を選ぶ必要性があったのだ。

『人生はビギナーズ』（10）では、監督の父親が同性愛者であることをカミングアウトした実体験を描いているが、今作は子どもや甥っ子がいれば、誰もが経験したことのあるような、ありふれた物語と言える。シンプルなストーリーであるがゆえに、俳優自体のもつ印象をメタ的に利用しながら、奥行きを出すという点では、ホアキンの起用は、ベスト・キャスティングと言えるだろう。

　ホアキン演じるジャーナリストのジョニーは、アメリカという国のさまざまな環境の中で生きる子どもたちにインタビューを行うことで、リアルな子どもたちの声を集めている。今まではプロとして子どもたちに接してきたジョニーであるが、それが甥っ子・ジェシーとなると話は別。

　身内だからこその距離感で、短期間とはいえ、予測不能な行動をするジェシーに手を焼く姿からは、答えのない子育てへの不安と緊張感を感じさせる。その中で、父性とはまた少し違った、大人と子どもの独特な友情関係が構築されていく様子は、感動すること間違いなし!!

【ストーリー】
ニューヨークでラジオジャーナリストとして1人で暮らすジョニーは、妹から頼まれ、9歳の甥・ジェシーの面倒を数日間みることに。LAの妹の家で突然始まった共同生活は、戸惑いの連続。好奇心旺盛なジェシーは、ジョニーのぎこちない兄妹関係やいまだ独身でいる理由、自分の父親の病気に関する疑問をストレートに投げかけ、ジョニーを困らせる一方で、ジョニーの仕事や録音機材に興味を示し、二人は次第に距離を縮めていく。仕事のためNYに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが……。

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