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アレのどこが面白いの? ~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~

『魔女の宅急便』は「上京あるある」 心細さ切なさ満載で何度も見てもいい

新天地での新しい人間関係に共感する

『魔女の宅急便』の序盤は「雨でずぶ濡れになる」からの「風邪をひく」からの「深く落ち込む」という王道の上京あるあるで話が進んでいきます。

 上京後、人が落ち込んだ時に行く場所といえば「海・森・山」が相場。キキが移り住んだ町は都会でありながら海に囲まれているため、落ち込みながら海を眺める描写が何度かあります。山はありませんが、キキが居候しているパン屋は町を見下ろせる小高い場所の頂上にあり実質、山と言っていいでしょう。そして、偶然出会った(ちょっとエロい)女子の家は、森の中にありました。キキがどん底の時にその森に行っています。

 映画・ドラマ・小説などでは、物語の中盤から終盤に必ずと言っていいほど「逆境」「ピンチ」が描かれますが、この映画では「ホウキで飛べなくなる」ところがそれにあたります。ホウキで飛べなくなること自体には共感出来ませんが、抽象化すると「今まで当たり前に出来ていたことが突如出来なくなるスランプ」ですから、多くの人が共感できると思います。これも上京あるあると言っていいと思います。

 私は高校を卒業して大阪の大学に行ったのですが、入学直後に「あれ?友だちってどうやって作るんだっけ?」「どうやって話しかければいいんだっけ?」と“コミュニケーション・イップス”に陥りました。バイト先では相手の言ったことが聞き取れなくても聞き返すことが出来なくて、聞こえたフリをしてその場をやり過ごすという“遠慮イップス”にも陥りました。それによって仕事でミスをしてしまったのは言うまでもありません。今となってはいい思い出です。

 ここまで書いていて思いましたが、ここまで「上京物語」「上京あるある」という言葉を使ってきましたが、地元を離れて都会に行った人でなくとも、誰にでも人生の転機に、新天地で人間関係をゼロから始める経験はしているもの。「魔女の宅急便」は誰もが通過してきた人生の転換期を描いた作品なんですね。おそらく、ほぼ全ての大人が「魔女の宅急便」を見て、潜在意識で「分かるわ~」を連発しているのだと思います。きっとこの「分かるわ~」は世代や出身地などは問わない普遍的なもの。だからこそ「何度見ても心が動かされる」「何度見ても面白い」「自分の子どもに見せてあげたいと思う」のでしょう。改めてこの映画を見て、1番強く感じたのは「圧倒的・潜在的共感」でした。

 そのほか、細かいテクニック的なところで気づいた点を2つ挙げます。

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