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ホラー版『魔女の宅急便』でもあった『ラストナイト・イン・ソーホー』の魅力

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 12月10日より映画『ラストナイト・イン・ソーホー』が公開されている。

 本作の​​監督・脚本を務めたのはエドガー・ライト。『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)や『ベイビー・ドライバー』(17)など絶賛された娯楽作を手がけてきた彼が、「タイムリープ・サイコ・ホラー」と銘打たれたジャンルへ挑戦していることが最大の注目ポイントだろう。

 実際の本編を観ると、なるほど映画や音楽への愛を込めながらも、オリジナリティもあり、ホラーとして恐ろしく、さらに現代でも通ずる問題提起もされた、「さすがはエドガー・ライト監督だ!」と心から賞賛できる秀作に仕上がっていた。さらなる魅力を記していこう。

多数の作品のエッセンスがあるエンタメホラー

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 あらすじを紹介しよう。ファッション・デザイナーを目指すエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は「何か」が見える不思議な力を持っており、幼い頃に亡くなったはずの母親が今も目の前に現れていた。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションに合格して大都会のソーホーへと引っ越してきたものの、寮生活に馴染めず古い屋敷の一室を借りて一人暮らしを始めたエロイーズは、その夜に奇妙な夢を見る。そこは、憧れの60年代のロンドンだった……。

 「不思議な力を持つ、憧れの仕事に就くために都会に進出したばかりの女の子が、雰囲気に馴染めずに一度は塞ぎ込むものの、自分に合った部屋を見つけて再スタートしようとする」という序盤の流れは、まるでアニメ映画『魔女の宅急便』(89)のようだ。主人公が田舎から出てきたばかりのダサさを気にする(いじられてしまう)様や、これから学ぼうとする仕事を通じて自己実現を目指す様、暮らし始める部屋の雰囲気までもどこか似ていたりもする。

 とはいえ、本作はホラーであり、夢いっぱいの楽しいファンタジーではない。主人公のエロイーズはなぜか60年代のロンドンの夢を見て、そこで歌手を目指すサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)という女性といつの間にか「シンクロ」していることに気づき、彼女の身に降りかかった筆舌に尽くしがたい「悲劇」を目撃することになる。初めこそ夢では華やかな舞台にいるものの、その悲劇が提示されるまでも「これってひょっとして…」とじわじわと(後述する)恐怖が露呈していく過程は、とてつもなく恐ろしい。

 大都会での夢と現実が混同していくような感覚は『マルホランド・ドライブ』(01)のようでもあった。他にもダリオ・アルジェントやブライアン・デ・パルマといったサスペンスの巨匠へのオマージュもあり、『反撥』(65)や『赤い影』(73)からもインスパイアされているそうだ。エドガー・ライト監督は『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』(07)では田舎の閉鎖的な価値観を恐ろしいものとして提示しており、今回はその真逆の都会の恐怖を描いているとも言える。

 そんな風に多数の作品のエッセンスがありながらも、「なぜ縁もゆかりもない女性の夢を見るのか?」という物語はミステリー的な興味をグイグイと引く。60年代のソーホーの「再現」には時間旅行をしているかのような楽しさもある。そして、その時代に夢を見ていた女性が遭遇していたであろう「恐怖」がダイレクトに伝わってくるし、派手な見せ場やスピーディーな演出もあって飽きさせない。まずはエンタメホラーとして、とても上手く構築されている映画なのだ。

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