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一時は公開が危ぶまれるも…ロシアの“一般市民”から見た原発事故映画『チェルノブイリ1986』

原発事故を経験したスタッフが多数参加したことで説得力を増したパニック映画

一時は公開が危ぶまれるも…ロシアの一般市民から見た原発事故映画『チェルノブイリ1986』の画像4
C)≪Non-stop Production≫ LLC,C)≪Central Partnership≫ LLC,C)≪GPM KIT≫ LLC, 2020. All Rights Reserved.

 チェルノブイリといえば、第76回アカデミー賞の短編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『チェルノブイリ・ハート』(2003)や、HBOのリミテッド・ドラマシリーズとして、第71回エミー賞において多数の賞を受賞し、多くの批評家から絶賛された『チェルノブイリ-CHERNOBYL-』など、多くのドキュメンタリーや劇映画、ドラマが制作されてきた。

 そういった作品の印象からも、チェルノブイリは、原発事故といえば……といった“負のロールモデル”として全世界に知られており、日本でも東日本大震災の原発事故は、チェルノブイリとたびたび比較されてきた。

 実は本作、なぜ爆発が起きたのか? という原因究明や、国としての対応といった政治的駆け引き、社会問題としての視点から描いた作品というよりは、愛する人や家族の未来を守りたいと願い、奮闘する消防士の雄姿を描いたものとなっていて、直球のパニック・アクションとなっている。

一時は公開が危ぶまれるも…ロシアの一般市民から見た原発事故映画『チェルノブイリ1986』の画像5
C)≪Non-stop Production≫ LLC,C)≪Central Partnership≫ LLC,C)≪GPM KIT≫ LLC, 2020. All Rights Reserved.

 本作は2020年の作品で、当時はウクライナ軍事侵攻が現実になるとは想像していなかった。ヒロイックな娯楽映画という意識が強かったのだろう。モスクワ出身、本作の主演兼監督のダニーラ・コズロフスキーは、今回のウクライナ侵攻に対して、SNSで戦争反対を訴えている。

 その点では、『ポセイドン・アドベンチャー』(72)や、そのリメイクの『ポセイドン』(06)に通じる部分もあり、目に見えない放射能を相手にする心理状態としては、『エイリアン4』(97)や『アナコンダ』(同)、『ザ・グリード』(98)のように、水中で得体のしれないものと戦うようなシーンがある作品に共通する演出を参考にしているようにも感じられた。

 つまり、どこか懐かしいハリウッドのパニック映画を感じさせる作風なのだ。

一時は公開が危ぶまれるも…ロシアの一般市民から見た原発事故映画『チェルノブイリ1986』の画像6
C)≪Non-stop Production≫ LLC,C)≪Central Partnership≫ LLC,C)≪GPM KIT≫ LLC, 2020. All Rights Reserved.

 本作のダニーラ監督は、18年の『Тренер』(日本未公開)に続き、長編映画2作目。最近はドラマ『Karamora』(22)のシリーズ監督を務めるなど、作り手として実績を積んでいるが、まだ手探りな部分があるのも事実で、本作においても、はっきり言って、パニック映画としては演出的に地味な部分もある。

 一方で、とても説得力のある作品といえるのには理由がある。それは、あくまであの事故を一般市民の目線から描くことを徹底的に意識したことと、86年の事故発生当時、チェルノブイリで現地取材を敢行した経験を持つアレクサンドル・ロドニャンスキーがプロデューサーとして参加しているのが大きな要因だ。

 スタッフの中にも当時の悲劇を経験した者が多く関わっていることも、その恐怖や、これからどうなってしまうのだろうか……という不安が自然と演出されているといえる。

 日本では、本作の興行で得た収益の一部をユニセフなどウクライナの人道支援活動を行う団体に寄付することが決定している。制作陣としても、少しでもウクライナの助けになればと思っているはずだ。

『チェルノブイリ1986』
5月6日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー!

製作・監督・主演:ダニーラ・コズロフスキー『ハードコア』
製作:アレクサンドル・ロドニャンスキー『殺人狂騒曲 第9の生贄』
出演:オクサナ・アキンシナ『ミッション・イン・モスクワ』、フィリップ・アヴデエフ『LETO-レト-』ほか
2020年/ロシア/ロシア語/136分/シネスコ/5.1ch/原題:ЧЕРНОБЫЛЬ/字幕翻訳:平井かおり/字幕監修:市谷恵子/配給:ツイン 
公式サイト:chernobyl1986-movie.com

 

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

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ばふぃーよしかわ

最終更新:2022/05/07 08:00
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