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一番“ガッカリ”は『元彼の遺言状』か『インビジブル』か? 春ドラマ序盤ランキング

文=新城優征(しんじょう・ゆうせい)

  春ドラマ新作の主要作がすべて出揃った。一番放送開始が遅く、4月23日に発生した北海道・知床での海難事故を受けて第2話の放送が急きょ延期となった『金田一少年の事件簿』はまだ第1話までしか放送されていないが、多くの作品がすでに第4話まで進んでいるので、このタイミングにて今期ドラマを振り返りたい。

 今回もまた、序盤までの内容から、今後も楽しく観られそうな「期待作」と、期待に反して……な出来だった「ガッカリ作」を3作ずつピックアップしよう。なお、シリーズ物の新作(『特捜9』『探偵が早すぎる』など)や、期をまたいで放送されるNHK大河や朝ドラは除外している。

期待のドラマ3位 『正直不動産』火曜22時~(NHK総合)

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ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
登坂不動産の営業マン・永瀬財地(山下智久)は、“嘘もいとわない”セールストークで成績ナンバーワンを維持し続ける、やり手の営業マン。ある日、アパートの建設予定地にあったほこらを壊したことから、たたりで嘘がつけない体になってしまう……。言わなくてもいいことまでペラペラとしゃべる永瀬に、当然お客は激怒。契約寸前の案件まで次々と台なしに――。はたして、正直すぎる不動産屋となった永瀬は生き残れるのか!?

 ある日突然、本音しか話せなくなるという設定は古典的だが、不動産営業と絡めたヒューマン・コメディというところがやはりポイントだろう。原作は『クロサギ』の夏原武が原案を手がける人気マンガだ。『監察医 朝顔』シリーズ(フジテレビ系)や『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(日本テレビ系)の根本ノンジ脚本、『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)『闇金ウシジマくん』(テレビ東京系)の川村泰祐らが演出を担当。山下智久のジャニーズ退所後初の地上波主演ドラマということで大きな注目を集めたが、コメディ作品として手堅い作りだ。

 気取ったイケイケの営業マンが、得意の嘘が吐けなくなる状況に振り回され、“正直な営業”をやらざるをえなくなる……という展開だが、山下の演技の塩梅がほどよく、コミカルな芝居は大げさになり過ぎず、顧客と心を通わせるシーンも響く。ライバル役の市原隼人を始め、福原遥、草刈正雄、倉科カナ、泉里香ら、脇を固めるキャストもいい。部長役のシソンヌ・長谷川忍もいい味を出している。個人的には慣れてしまったが、本音を口にしてしまう演出(毎回、風が吹く)は少々野暮ったくもあり、ここが引っかかるかどうかが分かれ道になりそうだ。とはいえ、「嘘が吐けない」という状況をさっそく武器にする展開を見せる第2回から本作はおもしろくなっていく。主に新人の月下(福原遥)への教育という形で不動産営業のテクニックや業界の内情を学ぶことができるシーンも多く、しかし気軽に見られるヒューマン・コメディとして完成度も高い。

 なお、本来登場する予定だった上司の瀬戸が、演じる予定だった木下ほうかの降板により完全に存在を抹消され、本当に一切登場していないのもすごい。編集スタッフの苦労の賜物だろうが、その点だけとってみると、ある種の現代ホラーのようでもある。

期待のドラマ2位 『卒業タイムリミット』月曜~木曜 22時45分~(NHK総合)

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〈あらすじ〉
黒川良樹(井上祐貴)は高校卒業を3日後に控えた朝、差出人不明の挑戦状を受け取る。「水口里紗子誘拐の謎を解け 真相は君たちにしかわからない」という言葉とQRコードが。同じ挑戦状を受け取ったのは同級生の高畑あやね(桜田ひより)、荻生田隼平(西山潤)、小松澪(紺野彩夏)。QRコードを読み取ると英語教師・水口(滝沢カレン)が監禁されている映像が! タイムリミットは72時間。4人は水口救出に向けて走り出す。

 今期は、コメディ探偵モノまで含めるとミステリー系がかなり多く、玉石混交といった印象だが、後述の『マイファミリー』とともにシンプルに続きが気になるのがこの『卒業タイムリミット』。NHKが若年層を意識して新たに設置した「夜ドラ」第一弾作だ。

 原作は、『夢のトビラは泉の中に』で第13回このミステリーがすごい!大賞の優秀賞に輝いたことで知られる辻堂ゆめの同名小説。「夜ドラ」は月曜から木曜まで15分で展開されていき、本作は全24話で完結予定。といっても、15分×4話が毎週放送されるわけで、実質上は1時間ドラマ6話ぶんだ。だが、毎話15分という縛りがあるため、見せ方や展開を工夫する必要があり、結果として通常の1時間ドラマよりも無駄が削ぎ落とされ、惹きつけられる作品になっている。

 第1週こそ、設定や人間関係を把握する必要があるため盛り上がりに欠けたが、以降は回を増すごとにおもしろくなっていく。登場人物、舞台が限定されていることでじっくり物語に集中できるのもいい。主人公を演じる井上祐貴を始めキャストもよく、特に中尾明慶が演じる倫太郎は誰もが「こんな教師いてくれたらな~」と思わせられるのではないだろうか。主人公の名前が黒川だからなのか、安田大サーカス・クロちゃんが三つ子役でちょくちょく顔を出したり、本人役で増田明美が出てきたり、飲食店のしゃべらないマスターが本間朋晃だったりと、”邪道”なキャスティングもニヤリとさせられるし、本筋とは関係のないところであえてモザイク処理がかけられたりするようなコメディ的な部分も、いいスパイスになっている。

 惜しむらくは新設の枠、しかも22:45-23:00という中途半端な時間帯のため、ついつい番組表で見落としてしまいがちなところ。もっとも、NHKプラスで全話見逃し配信されているのは大変ありがたい(NHKプラスのアプリがAndroid TV、Fire TV、Google Chromecastにようやく対応したのもありがたい)。1話15分は配信向きでもあるだろうし、NHKプラスのアプリがもっと使いやすくなれば「夜ドラ」はもっと盛り上がりそうだ。『正直不動産』とどちらを2位にするか悩んだが、「夜ドラ」枠そのものへの期待を込めてこちらを2位にした。

期待のドラマ1位 『マイファミリー』日曜21時~(TBS系)

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〈あらすじ〉
鳴沢温人(二宮和也)はゲーム業界の新時代を切り開く男ともてはやされている「ハルカナ・オンライン・ゲームズ」のCEO。湘南・鎌倉に家を構え、妻の未知留(多部未華子)、娘の友果(大島美優)と3人で暮らしている。ある日、都心での仕事を終えて帰宅した温人のもとに、日常を一変させる1本の電話がかかってくる。友果さんを誘拐した―― 

 日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』の黒岩勉によるオリジナル脚本で、演出やプロデューサーも一部被っていることもあり、『TOKYO MER』的なスピード感が印象的な本作。主人公夫婦の娘が誘拐された……というストーリーが全編にわたって展開されるかと思いきや、第3話で娘を無事に救出。犯人の思惑により、警察の関与を徹底的に排除しなければならない状況に追いやられ、さながら「VS警察」といった構図で進んだ第3話までも十分おもしろかったが、取り逃した犯人が1年後に新たな誘拐事件を起こすという新展開の第4話も、まだまだ謎の多い登場人物たちがこれから複雑に絡み合っていくことが予感され、毎回目が離せない作りだ。ジェットコースター的なスピード感でぐんぐん話が進むため、「視聴者のミスリードを誘うような登場人物の意味深な動き」というノイズもそれほど気にならない。

 プロデューサーが「3話までは壮大なプロローグで、第4話がやっとスタート地点」「犯人はそう簡単には分からないはず」と豪語するだけのエンターテインメント作品になっていることを期待したい、ということで1位にした。『TOKYO MER』のように、“ラスボス”が謎を残したまま姿を消すという終わり方になることだけはやめてもらいたいところだ。

期待のドラマ次点(4位)『悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?』水曜21時~(日本テレビ系)

 次点は木村拓哉主演の『未来への10カウント』(テレビ朝日系)と迷ったが、『未来への10カウント』は脚本といいキャストといい、失敗しようのない布陣という意味ではいい意味でも悪い意味でもあまりに堅実すぎる作りなのに対し、『悪女』は正直まったく期待していなかったものの、いい意味で予想を裏切られたのでこちらを選んだ。

 昭和~平成初期にかけて連載されたマンガ『悪女』の再実写化だが、ポンコツ新入社員の田中麻理鈴(今田美桜)が謎多き上司・峯岸(江口のりこ)にそそのかされて出世を目指していくという骨子はそのままに、中身はほぼ別物といっていいほど大胆にリメイクしている。原作ではコメディとはいえ目に余る問題行為も少なくなかった麻理鈴だが、そのあたりはかなり常識的な範囲で抑えられているし、出世につながる活躍も、原作では幸運が大きく影響した面が大きかった印象だったが、この令和版ドラマでは「型破りだが素直でひたむき」というキャラ造形で、努力要素も強い。麻理鈴が「み~ね~ぎ~し~さ~ん」としつこく呼んでいた姿は、どこかフジテレビの名作『ナースのお仕事』を想起させたが、ここ最近見かけなかった“とんでもなくやらかす新人”の成長物語を軸とした「お仕事ドラマ」というふうに生まれ変わっているのだ。

 さらに特筆すべきは、「コロナ年入社組」の苦労をドラマオリジナルキャラクターで描いたりと、かなり時代性を意識しているところ。特に「女性が働く」ということにかなり焦点を当てているようで、原作では峯岸が夏目の恋人を奪ったから、という理由だったふたりの因縁が、ドラマでは出世争いが原因というように様変わりしたのは象徴的だろう(その峯岸は「女にはガラスの天井がある」とも明言する)。『やんごとなき一族』がフジが得意とする女性同士のドロドロバトルものに振り切ったがために、深山家の女性たちも密かに抱いていた「男性中心主義的な価値観への疑問」という原作要素をかなり薄めてしまったのとは対照的だ。

 ここまで原作と変えたならば、いっそのこと「おかっぱ」を再現するための今田美桜の不自然すぎるカツラもやめてしまえばよかったと思わなくもないが……ともあれ、最終的な着地点は原作と同じだろうが、それまでの過程はかなりオリジナルになると見られるだけに、どんな展開になるか読めないあたりも令和版『悪女』はおもしろい。麻理鈴のキャラクターを受け入れられるかどうかで割れそうな作品だが、毎回スカッと解決するストーリー展開も含め、気楽に見られるドラマとしておすすめしたい。

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