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一番“ガッカリ”は『元彼の遺言状』か『インビジブル』か? 春ドラマ序盤ランキング

ガッカリドラマ3位 『恋なんて、本気でやってどうするの?』月曜22時~(フジテレビ系)

一番“ガッカリ”は『元彼の遺言状』か『インビジブル』か? 春ドラマ序盤ランキングの画像4
ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
桜沢純(広瀬アリス)は、若きチーフとして上司からの信頼も厚い洋食器デザイナーだが、27歳で恋愛経験ゼロ。その上、結婚どころか恋愛への興味もゼロ。仕事も趣味も充実しているから恋なんていらない、が彼女のポリシーなのだ。ある日純は、街中でふと目にとまったフレンチビストロで一人ランチを楽しむ。その店は、イケメンのギャルソン・長峰柊磨(松村北斗)目当てに女性客が殺到する人気店なのだが、純は柊磨にまったく興味を示さない。それどころか、「私の人生に恋愛みたいな不確定要素はいらない」と豪語する。そんな彼女に興味を持った柊磨の“ある言葉”に、純は思わずドキッとさせられて……。

 ノリにノっている広瀬アリス主演、旬の男・松村北斗(SixTONES)が共演。主題歌にあいみょん。さらにサプライズでSixTONESの新曲を挿入歌に。月曜22時に移動して第3弾となるカンテレ制作・フジテレビ系列放送のドラマ枠だが、気合が感じられる布陣だ。しかしどうにも「既視感の詰め合わせ」といった印象は拭えない。3人の女性のガールズトーク、主人公はクールなイケメンに振り回され、ネイルサロンを経営する女性がいたり、不倫をする女性がいたり……『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)がちらつく部分も多い。

 ラブストーリーなのでどこかで見たような設定は別にいいのだが、問題はその既視感が「古い価値観」で占められていることと、ストーリーがなかなかのトンデモ展開である点だ。主人公・純(広瀬アリス)の“推し”だった高校時代の先輩・坂入(古川雄大)に「折り入って話したいことがある」と高級ホテルのレストランでの食事に誘われ、期待して行くと、なんと純の後輩・岡(牧野莉佳)と結婚するとの報告。「結婚報告」がSNSでトレンド入りするほど視聴者をざわつかせ、純に対する岡のマウンティングではないかとの疑惑まで持ち上がった。第2話では、男性経験がない純が、純の会社の元先輩(香椎由宇)らから執拗に初体験を済ませるよう言われ、高校時代のラクロス部の同期・大津(戸塚純貴)と関係を持とうとするも、すんでのところで思い切れず、純は逃げ出す。純を密かに想っていた大津があまりにかわいそうだと同情の声が上がった。第3話では柊磨(松村北斗)といい感じになるも、ラストでは誕生日プレゼントを渡しにきた柊磨に対し、純はプレゼントを道に叩きつける。純の過去のトラウマの影響ではあるが、さすがに純は自分勝手すぎるという声も出始めた。

 こうしたトンデモ展開をツッコみながら見るぶんにはなかなかおもしろい「実況向き」の作品だと思うのだが、制作側は違う意見のようだ。プロデューサー氏の「放送中はひと時も逃さずガン見して頂き、放送後に一斉ツイートをお願いできましたら」とのツイートが一部視聴者の反感を買い(そもそも放送中にトレンド入りできているのはリアルタイムで見ている視聴者がツイートしているからだ)、「今の恋愛をリサーチしてリアルなラブストーリーを作ろうと、一瞬一瞬を構築しました」というコメントにもツッコミが殺到。「パパ活」「レンタル彼氏」といったワードを担わされている、ひとり『明日カノ』状態のアリサ(飯豊まりえ)はその“リサーチ”の犠牲者と言えそうだ。

 純は、男にうつつを抜かしてばかりで育児放棄状態だった母親への怒りと嫌悪感から、恋愛を自ら遠ざけているようだが、そもそも「リアルなラブストーリー」にそんなトラウマ設定は必要なのだろうか。坂入と柊磨が腹違いの兄弟という設定もツッコミ待ちをしているようにしか思えない。むしろこのまま昼ドラ的な展開をしていったほうが大いに盛り上がりそうだが……。

ガッカリドラマ2位 『元彼の遺言状』月曜21時~(フジテレビ系)

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ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
剣持麗子(綾瀬はるか)は、大手法律事務所に勤務する敏腕弁護士だが、クライアントの利益のためには手段を選ばない剛腕ぶりが仇となり、有力クライアントを失ったことがきっかけとなって、事務所を辞めることに。飲み仲間を求めて片っ端から知り合いにメールを送ると、大学時代の元カレ・森川栄治(生田斗真)から返信が来るが、そのメールの中身は「森川栄治は永眠しました」という訃報だった。そしてまったく面識がないはずの男・篠田敬太郎(大泉洋)から、栄治が遺した奇妙な遺言書のことを聞かされる。そこには「全財産は僕を殺した犯人に相続させる」と記されていたという。そこで篠田は「代理人になって僕を犯人に仕立ててほしい」と麗子に持ちかけて……。

 ほとんどの視聴者が、なぜ原作となる長編小説を2話でさっさと終わらせてしまったのか、と首を傾げたのではないだろうか。視聴者を離さないためにスピード感ある展開を意識しすぎたのかもしれないが、あまりに細部を端折りすぎ、あっけなさすぎた。第3話以降は、同シリーズの短編集(『剣持麗子のワンナイト推理』)と、ドラマオリジナルストーリーとで展開されているが、ずっとスピンオフを見せられている気持ちになる。どうやら、原作では大して出番のなかった篠田(大泉洋)をキーマンにし、篠田と栄治(生田斗真)の関係性がドラマ版全体を貫く謎となりそうだが、はたしてそれが連ドラ1クールを引っ張るほどの謎となりうるだろうか。

 「綾瀬はるかと大泉洋の壮大な無駄遣い」などとも一部で揶揄されているが、確かに、最大の見どころであるはずの、麗子(綾瀬はるか)と篠田の掛け合いがいまひとつ盛り上がらない。原作者は「欲しいものは自分で手に入れる。男が何度変わっても、女ともだちは変わらない。そんな女たちの、当たり前の日常を伝えたくて書きました。令和の女は強いぞ!」とコメントしているが、ドラマの麗子は今のところ、頭は切れるが金に汚く、口が悪いだけだ(今カレも登場しない)。そしてドラマオリジナル要素の強い篠田は、麗子の助手を務めてはいるものの、淡々と“捜査”する場面が続くため、バディ感はやや乏しい。『鎌倉殿の13人』が放送中ということもあって、やはり大泉洋がうまく生かされていないという印象は否めないだろう。

 原作をここまでひねってまでドラマ化する必要があったのか、疑問は尽きないが……。あとはドラマオリジナルストーリーが“原作超え”の謎と真相を生み出すことに期待するのみだ。

ガッカリドラマ1位 『インビジブル』金曜22時~(TBS系)

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〈あらすじ〉
渋谷の駅前広場で、多数の負傷者が出る爆発事件が発生した。警視庁刑事部特命捜査対策班の警部補・志村貴文(高橋一生)が応援を待つ中、街頭ビジョンには新たな爆破予告映像とともに、謎の人物が次の爆破の情報と引き換えに志村の身柄を要求する。志村が指定された場所に行くと、待っていたのは謎の女・キリコ(柴咲コウ)。キリコは、街頭ビジョンをジャックしたのは自分だと告げ、再び爆発事件が起こると予告する。さらに、実行犯は“花火師”と名乗る爆破の専門家で、過去に事故として処理されたいくつかの爆発事件も花火師の仕業だと言う。キリコの言葉を信じられない志村だが、さらなる爆破を阻止するために、警察庁監察官の猿渡(桐谷健太)や捜査一課課長・犬飼(原田泰造)の制止を振り切り、キリコと共に行方をくらませる。一方、捜査一課は不審者の捜索とキリコが挙げたいくつかの事故の洗い直しを行うことに。するとその事故の一つに、凶悪犯罪者たちの取引を仲介する犯罪コーディネーター“インビジブル”の関与が疑われていたことが判明する。

 高橋一生と柴咲コウの共演による犯罪エンターテインメント。そして『アンナチュラル』『大恋愛~僕を忘れる君と』『MIU404』『最愛』『俺の家の話』『妻、小学生になる。』など高い評価を集める作品を多く生んでいるTBS金曜ドラマ枠のオリジナル作品となれば、期待していた人も多かったのではないだろうか。しかし悲しいかな、蓋を開けてみると「思っていたのと違う」と肩透かしを食らってしまった。これこそ「高橋一生の無駄遣い」ではないだろうか。

 すでに多くの人が指摘しているだろうから野暮ではあるが、オリジナル作品と謳うわりには、海外ドラマ『ブラックリスト』に設定が酷似している。犯罪コンシェルジュ(『インビジブル』では犯罪コーディネーターの“インビジブル”)が免責と代わりに凶悪犯罪者の情報提供をすると突然やってきて、特定の捜査官を連絡係に指名。凶悪犯罪者にはそれぞれニックネームがあり……というあたりはそのまんまだ。

 しかし何よりも、シリアスな犯罪ドラマかと思いきや、ツッコミどころが多いチープな内容なのが引っかかる。そのあたりは昨年10月期のフジテレビ系月10ドラマ『アバランチ』をどこか彷彿とさせるが、『アバランチ』はストーリーや設定に”甘い”部分が目立ったものの、雰囲気や世界観はしっかり統一され、深く考えずに作品の“ノリ”と「アバランチ」の面々の活躍ぶりを楽しめばいいのだと割り切って見れば、なかなかおもしろいドラマだった。だが『インビジブル』は、ハードボイルドというほどハードボイルドでもないがために、作中のちょっとした“抜き”の部分もしまらない。そもそも『インビジブル』の世界では、何かの部活か?と思えるほどに警視庁がゆるゆるで、主人公の志村(高橋一生)がどれだけ独断専行しても、特に処分されることなく、大して咎められない。いくら“インビジブル”=キリコ(柴咲コウ)が志村を指名しているとはいえ、ちょっと甘すぎる。志村の左遷先である特命捜査対策班が、「心優しい班長」と「優秀な警察官僚との結婚を最大の目標にしている巡査」しかおらず、いつも捜査一課の隣でのほほんとしているのも謎だ。

 そもそも、監察官の猿渡(桐谷健太)は、キリコが志村を指名した時からふたりが共謀関係にあることを疑っており、志村が犯罪者の「花火師」を追う際には”監視”の名目で行動を追跡していたのに、志村がキリコと初対面する際はなぜか”監視”は外れていたようで、ふたりはあっさりと行方をくらますことに成功した。志村がキリコとともに一時警察の前から姿を隠すという展開を作りたいがためのご都合主義という印象がどうしても拭えない。なんというか、警察側があまりに「バカっぽい」のだ。志村の演技がシリアスになればなるほど、警察側の面々はあたかも張りぼての背景かのように見える。

 「クリミナルズ」もおマヌケである。警察すら存在を知らなかったという凶悪犯罪者たちのことだが、キリコがその存在を教え、ちょっとしたヒントを与えただけで毎回あっさり見つかり、捕まってしまっている。第2話のクリミナルズ「調教師」(久本雅美)にいたっては、自身が関わる少年院から殺し屋を育成するという、コストパフォーマンスも高ければ、足がつくリスクも高そうな手段を取っていた。

 もっとも、こちら側の期待こそが的外れだという面があるのも否めない。誰も正体を知らなかったことから警察の間でも都市伝説的に語られていた「犯罪コーディネーター」の通名が「インビジブル」で、「裏社会を牛耳り、あらゆる凶悪犯罪者たちの取り引きを仲介する」との説明からして、“厨ニ感”がプンプン漂っていたことに気づくべきだったのだ。第2話の「トンデモ粉塵爆発」や、第3話の「やたら強い要潤をプールに落として感電させる作戦」も、マジメには見ていられないが、“厨ニ病ドラマ”と受け止めれば、次はどんなトンデモ展開があるのかと楽しむことができそうだ。

新城優征(ライター)

ドラマ・映画好きの男性ライター。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。

しんじょうゆうせい

最終更新:2022/05/07 12:00
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