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朝ドラWATCHコラム『ちむどんどん』第10週

『ちむどんどん』あっという間に2年経過も、主人公の成長「過程」は見えず…(第10週)

『ちむどんどん』あっという間に2年経過も、主人公の成長「過程」は見えず…(第10週)の画像
イラスト/渡辺裕子

 土曜日のまとめ放送でカビラさんが「おでん屋の立て直しから2年も経ちました、早い!」と言っちゃうくらい時間が経つのが早い、ちむどんどん世界。

 この週は「暢子が働いて5年目の秋」らしい。あきさみよー。けれど登場人物は成長しているように見えないのが謎。歌子(上白石萌歌)は枕元に古雑誌を置いたまま2年間ずっと寝込んでいるかのよう。レストランの先輩・矢作さん(井之脇海)は、料理を焦がすという初歩的な失敗をする。賢秀(竜星涼)は養豚場に数日前に来たばかりのように見える。和彦くん(宮沢氷魚)が鶴見に住んでまで書こうとしていた沖縄の話はどうなったのか。何度も「比嘉家の借金残額カウンターが欲しい」と言ってきましたが、あらたに「空白期間に何が起きてるのか年表が欲しい」という気持ちがプラスされました。

 そして最大の謎は、暢子(黒島結菜)だけが成長している「らしい」ことです。他の皆さんが2年間冷凍保存されたように変わらない中、常連客によれば暢子のミネストローネは今まで食べた中で一番おいしい「らしい」し、オーナーから大事に思われている「らしい」。「らしい」連発なのは、暢子が成長した“過程”が全然見えないからで……。「2年経ちました、みんなダメだけどヒロインだけすばらしい、理由は言いません!」では、彼女をどう応援したらいいのかわからないんです。そして暢子の髪の毛だけ退化して、ばさばさに戻ったのはなぜなんでしょう。

 とても成長した「らしい」暢子なのですが、今週はセリフで「暢子は態度と言葉遣いが悪く、謙虚さがない」と語られて、やっぱりそうですよね!と思いました。歌子についても、大きな病院で検査をするべきという話になって(なんでいきなり東京で、となるのかは謎ですが)気になっていた部分について、作り手も承知の上でドラマにしてるのがわかったのはよかった。よかったけれど、それを出すタイミングが、視聴者の「今、聞きたい、気になる」と思ったタイミングとうまく噛み合ってないのでは、という気がしました。ドラマ内で暢子の悪いところを注意する人はもっと早くから存在してもよかったし、歌子を病院に連れていけない理由を誰かが言ってもよかった。それがなかなか出てこないから「暢子がずけずけ言うのをよいと思っているの?」「何で病院行かないの?」と長いことモヤモヤしてしまう。毎朝15分が半年間続いていく朝ドラを見続けるのは、マラソンの並走のようなもの。隣を走る朝ドラに「どうして?」と話しかけたらすぐ言葉を返してほしいんだけど、ここまでずっと会話が成り立たず、困りながら走っているような気分でいます。

 順風満帆な暢子とは裏腹に、これは闇堕ちしても仕方ないという仕打ちが次々と歌子を襲う週でしたね。音楽雑誌を持ってお見舞いに来た同僚は、歌子が退職する日に、他の女と結婚すると発表。「あの雑誌は彼女がいらなくなったやつだよハハハ」とわざわざ2年前のことを蒸し返すというとんでもないサイコパス(この辺も時空の歪みを感じるので年表が欲しい)。東京では自分と母の歓迎会のはずが、智(前田公輝)が暢子を持ち上げて盛り上がり。病院で検査を受けても体調不良の理由はわからず。きついことのてんこ盛り。彼女は、このまま東京に残ったらどうだろう。落ち込んでいる時、歌子は何も歌わなかったんですよね。下地先生(片桐はいり)に手放すなと言われた歌なのに。楽しい気持ちにならないと、彼女の歌は出てこないみたい。華やかな東京のエンターテイメントに触れて、その喜びを歌うことで、周りも自分自身も癒していける歌い手になれるんじゃないだろうか。母・優子(仲間由紀恵)の「お金を稼げなくても、夢を叶えられなくてもいい」という言葉は「お前にはお金は稼げないよ、夢は叶えられないよ、お母ちゃんから離れないでね」と彼女を家に縛りつける優しい呪いにも思える。歌子にはその呪いから抜け出してほしい。

 そしてもうひとつ欲しいものを思い出した、比嘉家の家系図。レストランのオーナー・房子さん(原田美枝子)と暢子の父・賢三(大森南朋)は、結局どういう親戚関係なんでしょう。ああ、わからないことが積み重なっていく。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『ちむどんどん
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:黒島結菜、仲間由紀恵、大森南朋、竜星涼、川口春奈、上白石萌歌ほか
作:羽原大介
音楽:岡部啓一、高田龍一、帆足圭吾
主題歌:三浦大知「燦燦」
語り:ジョン・カビラ
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:高橋優香子、松田恭典
広報プロデューサー:川口俊介、鈴木 葵
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/chimudondon

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

わたなべひろこ

最終更新:2023/02/04 23:40
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