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タカ&ユージのあぶないお笑い批評

「IPPON女子グランプリ」が浮かび上がらせた『IPPONグランプリ』のホモソーシャル性

文=タカ&ユージ(たか・あんど・ゆーじ)

「IPPON女子グランプリ」が浮かび上がらせた『IPPONグランプリ』のホモソーシャル性の画像1
フジテレビ『まっちゃんねる』HPより

お笑いブームがいよいよ極まってきている。ただただ楽しく観るのもいいが、ふとした瞬間に現代社会を映す鏡となるのもお笑いの面白いところ。だったらちょっと真面目にお笑いを語ってみてもいいのではないか──というわけで、お笑いウォッチャー・タカ&ユージが気になる動きを勝手に読み解く!

「女性向け」お題を並べる必要は本当にあったのか?

ユージ 『まっちゃんねる』第3回で「IPPON女子グランプリ」が放送されました(フジテレビ/6月25日放送)。滝沢カレン強かったですね~。YouTubeチャンネルでずっと大喜利トレーニングをやってきた成果が完全に出てました。

タカ 王林も強かったですね。まぐれじゃなくてちゃんと、当てている答えがときどきあって、野生のテクニックみたいなものを感じました。特に「コンパで横の席になったケンタウロスを褒めてあげて下さい」のお題のときがすごかったです。

ユージ 印象に残ってる答えはありますか?

タカ 「下にも乳首があるんですねぇ!」と、「終電逃しても大丈夫ですね!」ですね。

ユージ 「終電~」はバシッと決まってましたね。お題の「コンパ」というシチュエーションもちゃんと汲み取っていて。

タカ 無意識にいじっているというか、考えすぎてないけどちゃんと考えられているんですよね。個別の答えはそれぞれに面白かったですが、その上で、ここではまずお題の話がしたいです。今回、男性芸人たちが考えたお題がありましたよね。あれ、どうでした?

ユージ 「女性タレント版」の1問目で、松本人志考案の「壁ドン以上のキュンキュンを教えて下さい」が出てきたときの脱力感がすごかったです。

タカ そうなんですよね。大悟考案の「下着売り場で言ったことの無いセリフを言って下さい 」も、バカリズム考案の「かわいくないことをかわいく言って下さい」も、芸人考案ではないけど「あなたがおっさんと体が入れ替わったとき、相手に伝えておく注意事項とは?」も、どれも女性ならではの答えを求めたお題だと思います。全体にその比率が高くて、それだけでこの番組自体の狙いにげんなりするところがありました。もしかしたら「女性が答えやすいものを」と考えた結果の、ある意味の気遣いなのかもしれないですが、それは無用の気遣いじゃないですか。

ユージ “女性向け”を意識したときに出てくるワードが「壁ドン」なのもちょっと古いですし。一方、川島考案の「そんなこと5・7・5で伝えるな! 何?」はストレートで良いお題でした。川島はエンディングで「大喜利に男女の差はまったくない」と言っていて、本人の大喜利観が感じられましたね。オープニングで「あまりにもな場合はカメラ止めてスイーツ入れてあげて」と言っていたときはちょっと首をひねりましたが。

タカ そこは一瞬引っかかりましたけど、もしかしたら『ラヴィット!』(TBS系)でのぼる塾とかを思い浮かべて出てきたワードなのかなとも思いましたね。「女子=スイーツ」という偏見に基づいているというより、「コーヒーブレイクにしましょう」的な気遣いなのかも、と。

ユージ なるほど。あの瞬間の川島の脳裏に田辺さんが浮かんでたら面白い(笑)。ともあれ、出場者が女性であることを変に意識したお題の数々は自分も気になりました。「女性だけの大喜利大会」をやるにあたって、本家『IPPON』とはお題からトーンを変えたほうがより違いが出るだろうという製作側の意図なんでしょうね。

タカ それこそがもう、時代に逆行してるのでは?

ユージ もちろんそうです。だから結局、『IPPON』に女性出場者がほとんどいなくて、こうして「女性」でくくって企画を成立させる環境を、制作側はなんとも思ってないんだろうな、と。

タカ 『まっちゃんねる』が“実験”をコンセプトにしていることは承知の上で、番組冒頭で「今までとはまったく違う実験を試みました」「無謀やという声もあった」「あなどってはいけない」と強調するのも失礼な話だと感じました。「『IPPONグランプリ』のべ出場者270人のうち女性芸人はたった7人」とナレーションでの説明もありましたけど、自分たちでキャスティングしてるわけで、それで「少ない」と言われましても。

ユージ みんな「お台場笑おう会」に選ばれて招待されて出ている、という設定ですもんね。2017年を最後に、予選番組『IPPONスカウト』も行われなくなりました。毎回同じような顔ぶれに、そのときブレイク中の人が加わる程度の代わり映えしない中でぐるぐる回っている。今回優勝したハリセンボン・はるかは「ダイナマイト関西」でも活躍していて、若手の頃から大喜利巧者として知られていたわけですし、もっと本家に出ていてもおかしくなかったはずですよ(第1回、第5回に出場)。

タカ 本家の『IPPON』のお題も女性だからといって答えられないわけじゃないし、“男性ならではの答え”を求めるものがどれくらいあったのか。男性ならではの答えがあるとしたら、それはホモソーシャルなワードだったり内容だったりするわけで、結局やっぱり彼らに有利になっている。『IPPON』は男性が考えて男性が答える番組なんだということをあらためて考えました。ヒコロヒーがみなみかわとの漫才で「『刃牙』みたいな男寄りのお題ばっかりでうんざりする」というようなことを言っていたのを思い出します。

ユージ ヒコロヒー、大喜利のお題に『キャプテン翼』とか『北斗の拳』とか出てきがちだからそのへん全部読んだ、とも過去に言っていましたね。でも男性側はそういう“勉強”をすることはない。

タカ そしてそういうことはお笑い以外の世界でもたくさん起きているわけです。そう考えると『千原ジュニアの座王』(カンテレ)はそれがないのが良いですよね。お題に「女性向け」とかないじゃないですか。全員共通のお題をイス取りゲームでやっていく。

ユージ 最近の『座王』で天才ピアニスト・ますみがR藤本に「『ドラゴンボール』知らん」とキレる流れが何度かあって、面白いです。「なんでもドラゴンボールで例える男、嫌いなんすよ」って(笑)。

タカ 『ドラゴンボール』の知識がないまま勘で出した答えがウケてましたよね。ジュニアをはじめ周囲も「なんで知らんねん」じゃなくて「それでいいんや」みたいになっていたのも良かったです。

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