宮下かな子と観るキネマのスタアたち45

『サマーフィルムにのって』誰かの物語が観た人の人生を変える―エンタメの価値

文=宮下かな子(みやした・かなこ)

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イラスト:宮下かな子

 夏の終わりは突然ですね。朝夕空気が冷え込んできて驚いています。皆さんの夏は如何でしたか?

 私は今更ながら、昨年の夏に公開された松本壮史監督の『サマーフィルムにのって』を鑑賞して、夏を満喫した気持ちに満たされています。素麺と西瓜はたくさん食べたけど、花火もお出かけも帰省もしなかったわたしの夏。そんなわたしに夏をくれた! あぁ~こんな爽やかな青春映画観たの、久しぶりだなぁ。

 主人公は、時代劇が大好きな映画部所属の女子高生ハダシ(伊藤万理華)。キラキラ青春映画ばかりを作る部に馴染めずにいた彼女の前に、自身が脚本を書いた時代劇の主人公にぴったりの男・凛太郎(金子大地)が現れる。彼を見て時代劇制作を決意したハダシは、集めた仲間と共に学園祭上映を目指して……というあらすじ。

 よくある青春映画のようにも聞こえるけどここにSF要素も加わって、時代劇好きな高校生のギャップ感といい、映画愛といい、諸々ぎゅうっと凝縮されていて、そうきたか! と目から鱗な新感覚。元乃木坂46の伊藤万理華さんのボーイッシュさとがむしゃら感も良く、共に映画を作る仲間、河合優美さんや祷キララさん等、新星若手俳優たちも適役。キャッチャーミットの音で投手を当てられる男子生徒だったり、ハダシのライバル花鈴も実は憎めないチャーミングなキャラだったり、面白くて愛すべきキャラクターも魅力的。凛太郎を演じる金子大地さんのお芝居も毎シーン面白くて、ニヤニヤ笑みが溢れてしまう。

 ちなみに金子さんは同じアミューズ所属で、いつも作品の選び方が素敵だなぁと思っている先輩だ。

 松本監督の演出なのか、台詞の言い回しや抜け感の笑いのセンスがツボで、映画を観ながらケラケラ声を出して笑ったのは久しぶりだった。脚本は劇団ロロ主宰の三浦直之さん。

 映画は過去・現在・未来を繋ぐものだということを、SFの設定を用いながら取り入れているのが感慨深くて。今の時代に向けてのメッセージに感じたのは、未来には映画がなくなっているという設定。〝未来じゃ誰も、他人の物語に使う時間なんかないんだよ〟と。

 東日本大震災の時にも、コロナが流行し始めた時にも感じたことだけど映画って、エンターテイメントって、なくても生きていけるものなんですよね。コロナで撮影が中断され、仕事がなくなって、なかなか復旧するまでに時間がかかって、すごく痛感したことだった。世の中絶対に必要な仕事もあるけれど、私たちの仕事は必ずしも生活に必要なものではなくて。

 だけどやっぱり、映画があると心が豊かになる。凛太郎が、「(映画を観て)人生変わったんです」と口にするが、なくてもいいものが人生を変えることだってあるのだ。私も何度、映画を観て人生を考えさせられただろう。

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