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あのアーティストの知られざる魅力を探る TOMCの<ALT View>#19

RADWIMPSが「人間ごっこ」に至るまで 電子音楽やトラップも飲み込むバンドの進化

文=TOMC(トムシー)

RADサウンドの転換期――山口智史の活動休止と『君の名は。』サントラ制作

RADWIMPSが「人間ごっこ」に至るまで 電子音楽やトラップも飲み込むバンドの進化の画像2
RADWIMPS

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 2015年にドラマーの山口智史が局所性ジストニアにより活動を休止したことは、RADWIMPSのファンにとって衝撃的な出来事だった。「DADA」をはじめ、非常にテクニカルかつアイデアに満ちた創造的なプレイを残してきた彼の不在の中でリリースされたアルバム『人間開花』(‘16)は、サポートメンバーの森瑞希が大部分の楽曲でドラムを務めているが、「Lights go out」「アメノヒニキク」といった楽曲ではリズムのプログラミングが展開を牽引しており、バンドが山口の不在をいかに乗り越えるか試行錯誤した跡が垣間見える。

 また、この時期のRADWIMPSは、社会現象的ヒットとなった映画『君の名は。』(‘16)の音楽を手がけている。重要なのは、「スパークル」「前前前世」などの歌入りのバンドサウンド――いわば従来通りのRADWIMPS楽曲に留まらず、サウンドトラックの大部分を占めるインストゥルメンタル楽曲も手がけている点だろう。ギターやピアノを軸にしたポップな小品のみならず、「記憶を呼び起こす瀧」のような打ち込みのビートが牽引するもの、「消えた町」のようなアンビエント調まで、多彩な楽曲が収録された本作の制作は、バンドのその後の活動にも少なくない影響を与えたように思える。

 バンドサウンドの範疇を越えた楽曲制作は、上記の活動を経て制作された『ANTI ANTI GENERATION』(2018)以降、顕著なものとなっていく。アッパーなシンセサイザーのリード音が響く「NEVER EVER ENDER」など、楽曲の高揚感を一層加速させるようなアレンジも魅力的だが、ここでピックアップしたいのはトラップビートが冴え渡る「PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~」だ。リズムパターンのみならず、エフェクトで変調されたギターとボイスサンプルが印象的な1:06~の展開。そこから視点を変えて展開される、野田やバンドを取り巻く現状を赤裸々に吐露したようにも読める物語性の強いリリックの妙。illionでの活動を含むさまざまな音楽遍歴が結実したような、分水嶺的な重要曲に思える。そして本曲での経験は、現時点での最新アルバム『FOREVER DAZE』(‘21)でも大いに生かされることになる。

進化し続けるRAD――ラップ/ヒップホップ・フィールドへの接近

 『FOREVER DAZE』で注目したい楽曲は、2010年代以降の国内ラップシーンを語る上で欠かせないビートメイカー・Chaki Zulu(チャキ・ズールー)が参加した「匿名希望」である。キックとサブベースが最大限に目立つ、引き算の効いたトラックの上で、緩急自在のライミングを用いながら攻撃的なリリックを聴かせる野田のボーカルが魅力を放つ本曲。前述の「PAPARAZZI」から更に一歩進んだ感のある本曲は、バンドがラップ/ヒップホップのフィールドでも十二分に戦っていけることを示す作品だろう。また、こうしたトラップビートの経験を従来のギターサウンドと融合させたトラックに、現代の日本を代表するラッパー・Awich(エイウィッチ)をフィーチャーした「SHIWAKUCHA」も忘れてはいけない重要曲だ。

 この2曲がアルバム序盤の2・3曲目に収録されているのも、バンドのこれからの指針を表しているようで興味深い。そして、こうした楽曲群を経てリリースされた「人間ごっこ」のアレンジが、いかに必然的なものであったかというのもここまででお分かりいただけたかと思う。

 RADWIMPSはその長いキャリアの中で、驚くほど柔軟に音楽性を変化させながら、バンドサウンドの枠に囚われない作品を残し続けてきた。近年はOfficial髭男dismを筆頭に、トラップやEDMといった非・ロックバンド的な音楽ジャンルを消化した上で取り入れたり、ギター・ベース・ドラム以外のパートの音量が大きくミックスされた作品をリリースするバンドの躍進も目立つが、RADWIMPSのようなベテランに差し掛かるキャリアを持つバンドがアルバムのたびに音楽性をアップデートし、時代の最先端にアジャストし続けるさまには痛快なものがある。これからの活動も引き続き目が離せない。

 最後に、メンバーが『FOREVER DAZE』のLiners Voiceで「デモ感・カセット感がある」という言葉を残している同作収録曲「Tokyo」について触れておきたい。現代R&B/ソウルとJ-POPの融合に定評があるアーティスト・iri(イリ)をフィーチャーした本曲は、拍のアクセントをジャストから微妙にズラしたブーンバップ・ビートが楽しめる異色作である。このサウンドは、前述のLinn Moriや、筆者である私自身も身を置く、ここ10年ほどのビートメイカー・シーンの諸作にも通じるものがあるが、それこそ、前作『ANTI ANTI GENERATION』における「PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~」のように、この曲はもしかすると今後のバンドの音楽的発展に大きく関わってくるかもしれない……という点でも注目しておきたい。

 

♦︎
本稿で紹介した楽曲を中心に、RADWIMPSの“トラックメイカー”的な感覚を想起させる楽曲をまとめたプレイリストをSpotifyに作成したので、ぜひご活用いただきたい。

B’z、DEEN、ZARD、Mr.Children、宇多田ヒカル、小室哲哉、中森明菜、久保田利伸、井上陽水、Perfumeなど……本連載の過去記事はコチラからどうぞ

TOMC(トムシー)

TOMC(トムシー)

Twitter:@tstomc

Instagram:@tstomc

ビート&アンビエント・プロデューサー/プレイリスター。
カナダ〈Inner Ocean Records〉、日本の〈Local Visions〉等から作品をリリース。「アヴァランチーズ meets ブレインフィーダー」と評される先鋭的なサウンドデザインが持ち味で、近年はローファイ・ヒップホップやアンビエントに接近した制作活動を行なっている。
レアグルーヴやポップミュージックへの造詣に根ざしたプレイリスターとしての顔も持ち、『シティ・ソウル ディスクガイド 2』『ニューエイジ・ミュージック ディスクガイド』(DU BOOKS)やウェブメディアへの寄稿も行なっている。
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最終更新:2022/09/24 11:00
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