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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.707

田中裕子、尾野真千子、安藤政信ら共演『千夜、一夜』 人はなぜ失踪するのか?

文=長野辰次(ながの・たつじ)

田中裕子、尾野真千子、安藤政信ら共演『千夜、一夜』 人はなぜ失踪するのか?の画像1
登美子(田中裕子)は失踪した夫の帰りを30年待ち続けている

 年間およそ8万人。日本国内における行方不明者の数である。犯罪に巻き込まれたケース、認知症などの疾病が原因で行方が分からなくなったケースなどもあるが、原因がはっきりしないことも少なくない。人はなぜ失踪するのか、そして失踪者の帰りを待つ家族はどんな心境で過ごしているのか。そんなナイーヴな問題をドラマ化したのが、田中裕子、尾野真千子、安藤政信らが共演した映画『千夜、一夜』だ。

 本作を企画から手掛けたのは、久保田直監督。NHKスペシャル『家族の肖像』などのドキュメンタリー番組のディレクターを長年務め、震災後の福島県で長期ロケを行なった松山ケンイチ主演作『家路』(14)で劇映画デビューを果たしている。田中裕子主演作『いつか読書する日』(05)などで知られる脚本家の青木研次氏と『家路』に続いてタッグを組み、失踪した側、失踪者の帰りを待つ側、双方の心情を描いている。

 物語の舞台となるのは、北の離島にある港町。登美子(田中裕子)は島の水産加工場で働きながら、30年前に失踪を遂げた夫の帰りを待ち続けている。幼なじみの漁師・春男(ダンカン)、春男の母・千代(白石加代子)から事あるごとに「一緒に暮らそう」と言われてきたが、その度に断ってきた。夫との会話をたまたま記録していた古い録音テープを擦り切れるほど再生し、夫婦で共に暮らした日々をまるで昨日のように思い出す登美子だった。

 ある日、島の病院に勤務している看護師の奈美(尾野真千子)から、登美子は相談を持ち掛けられる。奈美の夫も2年前に失踪していた。散歩に出たまま、消息を絶ったという。海外に拉致されたのではないかと、奈美は心配していた。拉致の可能性は低そうだが、夫が失踪した原因を懸命に求め続ける奈美の心情は、登美子には痛いほど分かった。ひとりで暮らす高齢の母親・絹代(長内美那子)のことを気に掛けながらも、奈美の夫の失踪した件についても、登美子は調べ始める。

 奈美の夫について調査する際には女探偵ばりのクールな顔を見せる登美子だが、自分の夫の声が録音されたテープを再生する時は、新婚当時に戻ったような甘い表情に変わっていく。愛する人を待ち続ける女の強さと弱さの両面を持つ登美子は、田中裕子ならではの奥行きのあるキャラクターとなっている。

 田中裕子演じる登美子に絡むことになるのは、尾野真千子、白石加代子といった演技力に定評のある女優陣だ。佐渡島の美しい海辺を背景に、女優たちが見事なアンサンブルを展開していく。登美子に何度も求婚しながらも断られ続ける春男役のダンカンも、物語のいいアクセントとなっている。(1/3 P2はこちら

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