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スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会#24

ホロコースト言及で猛批判のウーピー・ゴールドバーグとはどう違う?失敗から学ぶコメディのあり方

ホロコースト言及で猛批判のウーピー・ゴールドバーグとはどう違う?失敗から学ぶコメディのあり方の画像1
Mark Normand(GettyImagesより)

 アメリカのコメディ界で今、大きな注目を集めるマーク・ノーマンドのネットフリックス・デビュー作品『The Standups』が先日配信開始となった。

 ニューオーリンズ出身のマーク・ノーマンドは2006年に地元のクラブでデビューすると、程なくしてニューヨークに拠点を移し、その後も順調にキャリアを積み重ねてきた。テレビ番組『コナン』、北米最大のコメディフェス「Just For Laughs」、そしてコメディ専門チャンネル『コメディセントラル』での自身のスペシャル番組など、多くのコメディアンにとっての目標でもある舞台への出演を成し遂げ、常に世代のトップをひた走ってきた。そして今回、意外にもこれまで出演のなかったネットフリックスで、満を辞してステージの中心に立ち、マイクを握った。

『The Standups』は6人のコメディアンが約30分のネタをかける人気オムニバス作品で、本作がシーズン3にあたる。これまでもこのシリーズに出演したのち、ハリウッド映画の出演が決まるなど、コメディアンとして大きな飛躍を遂げた例が多く、マークも今後さらなる活躍が期待される。

 コメディ専門メディア『ラフ・ボタン』で「パンチの効いた際どいネタと、巧みな話術が持ち味」と評されるように、マークはその飄々とした佇まいからは想像もできないようなダークでウィットに富んだジョークを非常に早いテンポで放つことで知られている。10秒に一回爆笑が起こると言われているが、これまであまりのテンポ感に、観客がついていけないこともあったという。ステージ上での雰囲気や存在感は伝説のスタンダップコメディアン、ジェリー・サインフェルドを、またネタの切れ味は昨年急逝したノーム・マクドナルドをも想起させる。

 そんなマーク、毎回舞台に上がるたびに、右手を突き上げながら「Comedy! 」と叫ぶのがお決まり。絶妙に力の抜けたこの掛け声は、これから始まる「マーク・ノーマンド・ワールド」へと私たちをいざなう独特の魅力がある。

 本作でも、普段から慣れ親しんだニューヨークの観客を前に、冒頭からフルスロットルでジョークを投げる。そしてその矛先は全方位へと向けられ、ほかのコメディアンであれば腰の引けてしまいそうな話題でも、お構いなしに見える。

「トランスジェンダーをいじるのはむつかしい世の中だよね。なぜかトランスジェンダーを毛嫌いする人がいる。個人的な恨みがあるわけでもないのに、グループ全体を嫌うんだ。この前、ショーの後、トランスジェンダーの女性が僕のところにやってきて、
『あんたのコメディ、笑えないし嫌いなのよ』
 って言うんだ。だから僕は
『あんた、男らしいね』
 って言うと、彼女は、
『あんたはトランスジェンダー嫌悪の差別主義よ』
『違うさ、僕はただ君を傷つけたいだけさ。意地悪を言われたから仕返ししたまでさ。君はコメディアンが嫌いかい?』
『いいえ、あなただけよ』
『じゃあ僕と同じだね』」

 このライブ収録の直前に大御所スタンダップコメディアン、デイブ・シャペルがトランスジェンダー・ジョークで炎上したのを逆手に取ったかのようなジョークに会場は大いに湧いた。

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