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本日、追慕祭(山口二矢烈士墓前祭)

山上徹也容疑者のテロ行為を美化する風潮続く… “下級国民の神”に祭り上げる危険さ

山上徹也容疑者のテロ行為を美化する風潮続く… 下級国民の神に祭り上げる危険さの画像1
「週刊SPA!」(扶桑社)

 右翼にとって、1960年(昭和35年)10月12日、日比谷公会堂の演壇に立った浅沼稲次郎(あさぬまいねじろう)・日本社会党委員長を刺殺した山口二矢(やまぐちおとや)、当時17歳は永遠の絶対不可侵のヒーローだ。
https://youtu.be/L5eKFTkVYS0

 二矢が東京少年鑑別所で自殺した11月2日には毎年、右翼団体が二矢が眠る梅窓院(東京都港区南青山)で追慕祭(山口二矢烈士墓前祭)を開催している。

 2012年に公開された若松孝二監督の映画「11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち」の冒頭シーンは、二矢がシーツを裂いて縄状にして首を括るシーンから始まる。壁には「七生報国 天皇陛下万才」と書かれていた。沢木耕太郎の『テロルの決算』(文藝春秋)によれば、歯磨き粉を水に溶き、人差し指を筆にして一字一字丁寧に記したものだった。

 共に烈士と呼ばれる二人

「アメリカ帝国主義は日中両国人民の共同の敵」とした浅沼は、暗殺決行直前まで大日本愛国党員でもあった右翼少年、二矢から見れば、日本の赤化(共産化)を図ろうとする許し難き人物。天誅を加えられて当然の人物だった。

 野党第一党の委員長を白昼堂々、公然と刺殺するという許し難きテロ行為も、二矢が国のことを憂い、止むに止まれず行ったこととして右翼は二矢のテロを美化した。どこか、1932年5月15日、海軍の青年将校と陸軍士官学校本科生の計9人が首相官邸を襲撃し、時の犬養毅首相を殺害した「五・一五事件」の顛末を彷彿させる。この時も首相暗殺を実行した凶悪犯でしかない青年将校らの行動は「名も命も求めず、日本列島の捨石になるための決起」という美談にすり替えられた。

 今、7月8日に、奈良市で街頭演説中の安倍晋三元首相を銃撃し死亡させた山上徹也容疑者(42歳)がネット上の世界で、“山上烈士”と呼ばれている。最近でこそ、数は減ったものの、ツイッター上では#山上徹也、#統一教会というキーワードと共に、#山上烈士が飛び交う。

 自民党が長年にわたり、闇に隠してきた旧統一教会とのズブズブの癒着を安倍晋三元首相暗殺というテロ行為を通し、白日の下にさらした山上容疑者は、旧統一教会に苦しめられてきた山上と同じ2世信者や未だ正規の職に就けない就職氷河期世代からすれば、苦境にある自分たちに光を当ててくれたヒーローに映るのかもしれない。

 だからと言って、山上容疑者をこれら歴史上の“烈士”と同一線上の人物と同じに扱ってよいのだろうか?

 広辞苑の電子辞書によれば、「烈士」は、「節義の固い士。烈夫」となっている。加えて、我が国においては幕末と明治維新で、大義のために殉じた人物たちのことも指す。安政7年3月3日(1860年3月24日)、桜田門外の変で大老井伊直弼を暗殺した水戸藩や薩摩藩の脱藩浪士も「桜田烈士」と呼ばれることもある。

 父親の自殺、母親が教団に1億円以上の寄付をして破産したことや難病の兄の自殺など筆舌に尽くし難い不幸な生い立ちには同情を示しつつも、山上を烈士扱いする風潮にやはり嫌悪感を覚えてしまう。

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