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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.713

香川照之14年ぶりの主演作『宮松と山下』 多面体俳優が素顔に戻る瞬間

文=長野辰次(ながの・たつじ)

香川照之14年ぶりの主演作『宮松と山下』 多面体俳優が素顔に戻る瞬間の画像1
エキストラ俳優の宮松(香川照之)は何度殺されても、作品ごとに甦る

 映画は基本的にフィクションの世界であり、脚本や演出に基づいて、俳優は架空のキャラクターを演じてみせる。だが、観客はしばしば、スクリーン上に映し出されたキャラクターと演じている俳優とを重ねて観てしまう。どんなに巧妙に演じられているキャラクターであっても、演じている役の仮面が外れる瞬間があり、俳優の素顔が見えてしまうことがあるからだ。ある意味、すべての映画はドキュメンタリー的な側面があるとも言えるだろう。

 フィクションである劇中の役と、リアルな存在である俳優との関係性をテーマにした映画『宮松と山下』が劇場公開される。宮松と山下という2つのキャラクターを演じているのは、香川照之だ。売れっ子俳優の香川だが、長編映画への主演は黒沢清監督の『トウキョウソナタ』(08)以来、14年ぶりとなる。

 物語の主人公となるのは、端役専門のエキストラ俳優・宮松(香川照之)。京都の撮影所から物語は始まる。宮松は時代劇であっさり斬り殺される浪人を演じる日もあれば、ヤクザの抗争に巻き込まれて死ぬ一般市民を演じる日もある。死体役を黙々と演じることで、スタッフからは重宝されている。

 1日に何度も殺されることがある宮松はエキストラとしては売れっ子だが、それだけでは食べていけない。普段はロープウェイの作業員として働いている。地に足の着かない宙ぶらりんな感覚が、宮松には心地よいようだ。

 長年エキストラの仕事を続けていると、ごくたまに台詞のある役、メインキャストと絡むシーンが回ってくることもある。ご褒美のようなものだが、単調な日常生活を送る宮松には、どんな端役であっても何者かに変身できる撮影現場は、生きがいが感じられる世界だった。たとえ1シーンだけの死体役であっても、物語のマス目を埋めているような喜びがある。

 エキストラ俳優がドラマに主演することはないが、ドラマが失敗しても責められることもない。プレッシャーとは無縁である。そんな脇役人生を密やかに楽しんでいた宮松だったが、東京からひとりの男が撮影所を訪ねてきたことから、宮松の日常生活は音もなく崩れていく。

※以降、物語の核心に触れた部分があります

 撮影所に現れた男・谷(尾美としのり)は、宮松のことを「山下」と呼んだ。山下は12年前まで東京でタクシーの運転手をしていたが、あるトラブルから記憶喪失となり、そのまま失踪していたのだ。さまざまな役を演じてきた宮松だが、宮松という人物は現実世界には実在せず、記憶喪失状態の山下がみずから生み出したキャラクターであることが明るみとなる。

 二重三重ものフィクションが積み重なったメタフィクション構造の物語として、『宮松と山下』は展開されていく。

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