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RUNG HYANGインタビュー

瑛人やeillを輩出した私塾が話題のルンヒャンが語る、“求められること”と“やりたいこと”

瑛人をプロデュースしたことは大きな出来事だった

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写真/二瓶彩

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――コラボレーションも含めて、常に毎年何かしらリリースはあるイメージなんですけど、特にTOKYO CRITTERS(ZIN、菅原信介、Shingo.Sとのユニット)が終了してからは自分の名義の作品に集中している印象です。

 そうですね。音楽性もより明確になったというか。CRITTERSをやることで見えた景色もすごいあって。それまで私、ピアノ弾き語りが多かったんで、お客さんが座って観るっていうライブ経験しかあんまりなかったんですけど、お客さんと一緒に踊るっていうCRITTERSでのライブがすごい自分の中でフィットしてたし、それを自分のソロでも続けてやっていこうっていう流れが自然とできましたね。

――アーティスト表記をカタカナのルンヒャンからアルファベットのRUNG HYANGに変えたのもその流れ?

 そうですそうですそうなんです。「ルンヒャン」はどっちかっていうと弾き語りの匂いがしてて。確かCRITTERSらへんから、英語のRUNG HYANGに変えました。

―― なるほど。でもそれにしても、ハ・ミョンスさんとのアルバムに始まり、その後にDRAMATIC SOULあり、TOKYO CRITTERSありでコラボ作は多いですね。

 占い師さんにもよく言われるんですけど、私、多分本当は裏方なんです、気質的には。プロデュース業とかが向いてるっぽくて。ルンヒャンゼミもそうで。売れる売れないとかは正直わかんないですよ。でも、今この子には何が必要で、何がこの子にしかないものかっていうのはすごくよく見えるんです。だから瑛人にも「いいことを書こうとするな」って言って。きれいごとじゃなくて、自分のことを馬鹿でクズでって言ってて、人にずっと謝ってばかりで、でもそこがいい。そういうのがすごいよく見えるんですよね。でも、瑛人(のプロデュース)はやっぱり大きなことでした。自分の人生の中でもすごい面白い出来事で。「人生の中で取り上げるポイント」っていくつかあるんですけど、その中の1個だなとは思います。

 最近思うんですけど、自分がやりたいことと求められることって違うじゃないですか。一致するときもありますけど。でも求められてることを発揮してるときって“世の中ごと”になりやすいんですよね。動くんですよ。だから最近はやりたいことと求められてることを混ぜるっていうことをずっとやってます。それは自分の楽曲作りにも反映されてるかもしれないですね。

 

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写真/二瓶彩

――ルンヒャンゼミってもともとメーザー・ハウス(2020年に閉校した音楽学校)でやってたんですよね。

 メーザー・ハウスで11年前から始まって。3年ぐらい前に閉校になって。卒業した子たちもよく相談に来てたんで、行く場所がなくなっちゃうよなと思って。で自分の生徒もまだいっぱいいたし、閉校するんだったら外に作ろうかなと思って作ったって感じですね。

――現在は大阪音楽大学でもゼミをやっていますね。教授にも就任し、新しくシンガーソングライティングの学部が始まるとか?

 ルンヒャンゼミの『深イイ話』を音大の理事が見てオファーくださったんです。東京のルンゼミを見学しにも来てくださったり。この空気感を自分たちの音大の中でも作り上げていきたいっておっしゃってたんで、けっこう自由にやらせてもらってます(笑)。

――ゼミではゲストとしてプロのアーティストも招いてらっしゃいますね。

 個人的につながってる人に来てもらってて。メーザー・ハウスにいたときからたまにやってたんですけど、なんでか独立してから、それが活性化して。コロナの時期だったんで、生徒はほとんどライブができるチャンスがなかったんですよ。人前でやることができないから、全然客のいないなかで発表するんですけど、そこにプロでやってる人が1人来るだけでほとばしる緊張感がすごくて。だからライブやってるのと同じぐらいの熱量で定期的に彼らは発表ができたんです。自分と自分の周りのアーティストたちも、自分たちができることをすごく惜しみなくやってくれて、ほんと次の世代の子たちをみんなで育ててる感覚なんですね。

 クラポ(claquepot)もムカタイ(向井太一)も同じように、自分たちの音楽を大事にしながら、次の世代の人たちにもできることをやっていくっていう貢献をすごい自然にやってて。彼らにも審査員で来てもらったんです。生徒に、誰かのアーティストのオープニングアクトで一発かますとしたら?っていうテーマで何カ月か曲を準備させたんですよ、大阪も東京も同じタイミングで。それで発表の日にサプライズで2人が登場して、ここで「今日優勝した人はビルボードライブのオープニングアクトに出ます」みたいな、そういうことをやったんですよ。だから東京も大阪もすごい危機迫る空気感になりました。だから今回、3人の公演〈Billboard PARK〉も決まったんですけど、そのオープニングアクトは、ルンヒャンゼミと大阪音大の子たちがそれぞれ震えながら立つ状態です(笑)。

――その〈Billboard PARK〉は、昨年EP『PARK』を一緒に発表したclaquepot、向井太一との3人での合同ライブですが、3人はいわゆる「ユニット」ではなく、ソロの集まりという考えなんですよね。

 そうなんですよ。ユニットではありません。DRAMATIC SOULのときにすごいユニットって言われてて、当時「別にユニットでもいいじゃん」って思ってたんですけど、竹本健一だけがユニットじゃありませんってずっと言ってたんです。すごいそれを頑なに言ってて、「別に広がったら何でもよくない?」って思ってたんですけど、今すごいわかるんですよその気持ちが。PARKは3人とも「ユニットじゃありません、ソロです!」っていう感じだし、去年1回ビルボードでやって、自分にはないものをそれぞれに見いだして。やっぱり負けたくないっていうのもあるし、リスペクトもあるし、私も私で〈Billboard PARK〉をやることでソロをもっと頑張らなきゃって思って。RUNG HYANGとしての活動をもっと広げていきたいってすごい思わされたんです。それを経て、今年〈Billboard PARK〉をまたやれるんで、みんな負けたくねぇって思ってると思うんですけど、多分ムカタイが一番思ってますね。あの人、殴り合いってよく言うんです(笑)。でもなんかいいですね、別にすごくしょっちゅう一緒にいるわけじゃないんですけど。なんかそういう存在って尊いなって。

――そんな〈Billboard PARK〉を3月に控えますが、今後の展望についてお聞かせください。

 〈OTOGRAPHY〉は今年自分が始めた中で自分にも新しい発見が多分ありまくるコンテンツなんだなって、ちょっと予感してて。求められてることと自分のやりたいことがフィットしてる状態だから、それは引き続き育てていきたいなって思いました。

 あとはとりあえずアウェーなとこにいっぱい出たくて、ライブにいっぱい出たいんですよ。フェスとかライブとかに呼ばれるのも、理由はシンプルだと思ってて。曲、ほんと曲だと思ったんです。良い曲をよりビルドアップしていく道しか、私にできることはないって。何の計算も何の営業もなく、独り歩きするぐらいリスナーの力が今はでかいから、そういう人たちがウッとなる、いいぜっていうものを、そこに寄せるわけではなく、結果的に作れたらラッキーだなと思って、とりあえず楽曲のビルドアップだけは永遠に続けていきます。

 

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●RUNG HYANG(ルンヒャン)
福岡県・筑豊生まれの在日コリアン3世。卒園ソングをテーマにした「さくらびより」がYouTubeで話題を呼び2012年にメジャーデビュー、情報番組や音楽番組に多数出演。自身の活動のみならず多くのプロデュースも手掛けるほか、eill、瑛人、YAMORI、松本千夏など話題のアーティストを輩出する「ルンヒャンゼミ」が各方面で注目を集め、TVでも特集が組まれるほど。SIRUP、韻シスト、向井太一、claquepotといった音楽シーン重要人物とのフィーチャリング楽曲も次々と発表し話題。誰かの生活を覗き見しているようなリアルなリリックと、Jazz、Hip Hop、Soul、フォークと様々なジャンルを取り入れた「雑食」スタイルで進化を続けるシンガー ”ソウル” ライター。
パーソナリティーを務めるblock.fm『恋と音楽のマッチングサプリ』(通称『ラブサプ』)は第二第四火曜日23:00-24:00生放送。番組内ではリスナーの無茶振りに応える「お題セッション」や、お悩みに応える即興アンサーサプリソングが話題。
2022年より大阪音楽大学 特任教授就任。
ニューシングル「オトナの時間」3月1日(水)配信リリース!
rung-hyang.jp

【ライブ情報】
■ RUNG HYANG×claquepot×向井太一 Billboard PARK 2023
3月5日 東京 Billboard Live TOKYO/3月31日 大阪 Billboard Live OSAKA

■ RUNG HYANG × 奇妙礼太郎 Billboard Live 2023
5月2日 横浜 Billboard Live YOKOHAMA

末﨑裕之(ライター/編集者)

ライター・編集者。音楽を中心に、俳優・ドラマ~映画の取材まで。共著に『新R&B教本 2010sベスト・アルバム・ランキング』(スペースシャワーブックス)。まれにラジオ出演(NHKラジオ第1、FM802他)、作詞(アイドリング!!!他)も。
Twitter:@hsuezaki

すえざきひろゆき

最終更新:2023/03/14 14:06
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