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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.736

役所広司&菅田将暉共演『銀河鉄道の父』 宮沢賢治はリアル“でくのぼう”だった?

自主的に役づくりに取り組んだ菅田将暉

役所広司&菅田将暉共演『銀河鉄道の父』 宮沢賢治はリアル“でくのぼう”だった?の画像3
農民からお金を取ることを嫌った賢治は、日蓮宗に傾倒する

 菅田将暉、森七菜、役所広司らの活気ある演技が、物語を淀みなく進めていく。中学校を舞台にした『ソロモンの偽証』や今年1月に公開された国際色豊かな『ファミリア』では、ワークショップ形式で多数の新人俳優たちを起用した成島監督だが、作品によって演出は変わるものだろうか。

成島「演出は変わりません。シナリオをどう捉え、カメラの前にどう立つかということは、新人もベテラン俳優も同じなんです。今回のキャストはみなさん忙しい方たちばかりでしたが、そこはプロですから、しっかり役づくりした上で、撮影に入っています。菅田くんもクランクイン前に花巻まで行って、役づくりしています。僕が『髪型はどうします?』と尋ねると、『ちゃんとやりましょう』と言って自主的に坊主頭にして、現場に入ってくれたんです、気合い入ってるなと思いましたね(笑)」

 役所広司とは『油断大敵』『ファミリア』に加え、『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』(11)でもガッツリ組んでいる。役所広司の存在は極めて大きい。

成島「役所さんはシナリオの読み合わせの段階で、完全に役をつくってくるんです。他の若いキャストも、すごく刺激を受けています。今回の菅田くんもそうだし、『いのちの停車場』(21)に出てくれた松坂桃李くんも、『孤狼の血』(18)で共演した役所さんからとても影響を受けたと語っていました。役所さんから、波動みたいなものを感じているようです。僕の作品に限らず、役所さんは日本映画の宝物でしょう」

森七菜の迫真の演技「あめゆじゅとてちてけんじゃ」

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トシ(森七菜)の病気は、当時は不治の病とされた結核だった

 明治時代後期から大正、そして昭和初期にかけての、日本の家族像の“原風景”が『銀河鉄道の父』では描かれており、多くの観客は「宮沢家」の人々にどこか懐かしさを覚えるに違いない。だが、物語中盤からは宮沢家に「死の匂い」が漂うことになる。

 女学校の教員を務めていたトシだが、24歳の若さでこの世を去る。有名な「あめゆじゅとてちてけんじゃ」をトシが口にするシーン、森七菜の演技は鬼気迫るものがある。

成島「僕から『こういうふうに演じてほしい』という演出はしていません。僕からヒントを出すことはあっても、あくまでもトシを演じる森さんが自身のアンテナで捉えたもので、演じています。重要なシーンは、順撮りで撮影しました。テストを重ねていくことで、森さんはトシに近づいていったんだと思います。『次に生まれてくるときは、もっと強い体で、他の人の幸せのために生きられるように生まれてきたい』という劇中の台詞は、実際のトシが遺した言葉でもあるんです。トシの想いが、森さんに乗り移っているかのようでした」

 最愛の妹・トシを喜ばすために童話や詩を書いてきた賢治は、トシを失ったことで何も書けなくなってしまう。そんな賢治を、父・政次郎は温かく寄り添うようにして励ます。共に喪失感を抱える家族同士が支え合う姿は、胸に迫るものがある。

成島「トシを介護していた賢治も結核を患うことになるわけですが、史実的には一度は回復し、石灰会社に勤めて、そこでまた無理をして体を壊したり、賢治が始めたサロン『羅須地人協会』は共産主義寄りの集会だと疑われて警察の手が入るなど、いろんなことがあったんです。賢治は体調がいいと徹夜で小説を書き、また体を壊すという生活を繰り返したようです。菅田さんは賢治になりきるあまり、かなりの減量をしていました。『命に関わることだから、無理はしないで』と伝えたんですが、『どうしてもやりたい』と言うことだったので、『体を壊さないよう、お願いします』と頼んだほどです。役者のみなさんは大変だったと思います」

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