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櫻井翔や中丸雄一らが“見誤っている”ジャニーズ性加害問題の本質

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ジャニーズ事務所

 ジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー喜多川氏が未成年の所属タレントに対して性加害を行っていた問題について、続々と現役ジャニーズタレントが口を開き始めた。

 5月14日に藤島ジュリー景子社長の“謝罪”動画公開と公式見解を示す文書の発表があったのを受け、5月21日にまず口火を開いたのは東山紀之。『サンデーLIVE!!』(テレビ朝日系)において、「告発された皆さんにどう対処するべきなのか、そもそも『ジャニーズ』という名前を存続させるべきなのか」などの議論を続けながら「外部の方とともに、すべてを新しくし、透明性を持ってこの問題に取り組んでいかなくてはならない」とした。

 東山は「この件に関しましては(所属タレントの中で)最年長である私が最初に口を開くべきだと思い、後輩たちには極力待ってもらいました。彼らの心遣いに感謝します」と、東山が先陣を切るまでは後輩にストップをかけていた事情をうかがわせていたが、“東山発言”の後、5月28日には『シューイチ』(日本テレビ系)でKAT-TUN・中丸雄一が、そして6月5日には『news zero』(同)で嵐・櫻井翔がそれぞれ性加害問題について言及することに。

 櫻井は月曜キャスターを務める『news zero』で2分にわたって自身の意見を語った。櫻井は、自身が「問題の責任が問われている事務所に所属している」「大きな意味では自分は被害者に見られうる立場に置かれている」ために、「コメントすることは難しいと考えていました。今もまだ、どの立場でどうお話できるのか、難しい」と説明したうえで、「かつて同じジャニーズJr.として、同じ時間を共にしてきた大切の中には……すでにこの世界とは全く違うところで新しい人生を歩んでいる人たちもたくさんいます。そういう人たちも含めて、あらぬ臆測を呼び、今回の問題の対象となってしまうことは、何よりも避けなくてはいけない」「だからこそジャニーズ事務所は、話したくない人の口を無理やり開かせることなく、しっかりとプライバシーを保護した上で、どのようなことが起こっていたのかを調査してほしい」「二度とこのような不祥事が起こらない体制を整えなければならないと思います」と言及。「最後に、あらゆる性加害は許してはならないし、絶対に起こしてはならないと考えています」と締め括った。

 櫻井は声を震わせながら、ときおり深呼吸をするなどかなり緊張した面持ちで語り、真摯な発言だったと評価の声がある一方、「遅すぎた」との声も少なくない。また、「言うべきこと言ってるようで全く言ってない」と発言の中身に対する批判もあるようだ。

「櫻井の発言は、そもそも自分の立場からはコメントが難しいというスタンスのうえで、憶測や誹謗中傷は避けてほしいという訴え。『週刊文春』(文藝春秋社)の報道によれば、外部の専門家などで構成された第三者委員会の設置について賛成の立場を取ったのが櫻井と中丸だったものの、副社長らからの強い反対にあい、設置が見送られたとあり、櫻井があの場で改めて実態調査の必要性を訴えたのは、彼なりに踏み込んだ発言だったと思われます」(女性誌記者)

 ジャニーズ事務所が被害実態の調査に及び腰なのは、ある事情が考えられるという。

「元ジャニーズJr.のタレント・作家で、『ジャニーズ事務所被害者の会』を結成しようとしている平本淳也は、被害者の数を『単純計算しても2500人以上』とぶちあげていたが、それはさすがに眉唾としても、1960年代から“セクハラ被害”報道は存在しており、ジャニー氏による優越性地位を背景にした性加害は実に半世紀以上にわたって行われたことになる。#MeToo運動の発端となったワインスティーン事件でも被害者は100名以上とされるが、ジャニー氏による被害者は優に超える可能性が高く、しかもほとんどが未成年者であると考えられるため、“人類史上最悪の性犯罪者”として歴史に名を刻みかねず、それはなんとしても避けたいだろう。そもそも半世紀となると正確な実態は掴めそうにないが、調査をしたとしても、被害者の数は最後まで理由を付けて公表を拒むのでは」(週刊誌記者)

 事務所は5月26日に外部取締役を迎えるなど3点を柱とした対応策を発表したが、保護者の不安を取り除くためか、その裏ではひっそりと「ジャニーズJr.活動指針」なるものが発表されており、「保護者同伴の説明会の実施」「未成年者の保護者宅からの活動参加」などを強調している。

 一方、“東山発言”の翌週には中丸もコメント。レギュラーを務める『シューイチ』にて、MCの中山秀征から意見を求められる形で語ったが、“ジャニーズ事務所がちゃんと変わろうとしている”という説明を中丸にさせるという構図で、「体感としては、先代(ジャニー氏)が亡くなる1年前ぐらいですか、今から5年前ぐらいから急速に社内の体制を整えるといいますか、そういう動きはあったかなと思います」として、一例としてタレントに対する薬物使用チェックを「かなり早く」導入したとアピールする場面も。

 また、終盤には「ジャニーズ事務所のいいところ」として「社会に貢献する気持ちが強い」という話を強調し、MCの中山が「中丸くんたちアイドルの人たちに『救われた』という人たちがいるのも事実」などと擁護するような形で締め括ったことで、批判を浴びることになった。

「ジャニー氏とメリー喜多川氏のトップダウン式の独裁体制だったところを、権力を分散させる体制に変えつつあるというのは5月14日のジュリー社長の公式見解に沿った内容ですし、さまざまな争点があるなかで第一に被害者のケアを、というのは東山や櫻井の発言と同じ。特に中丸は『~と思います』を連発しており、自分の言葉で語っているのはいいことですが、幹部ではなくタレントなので、組織の内部事情についてはあくまで“体感”による憶測を語るのみに留まり、消化不良感が強い。いち所属タレントが言及する限界が感じられる発言で、やはりジュリー社長が会見を開かなければ意味がないでしょう」(前出・女性誌記者)

 しかし、東山も中丸も櫻井も、あるいはテレビの報道も、この問題の「本質」には触れずじまいだったとの厳しい指摘もある。

「26日に発表された3つの柱のひとつ『弁護士をトップとする、外部専門家3人による再発防止特別チームの設置』について中丸が、『一見、「先代亡くなったのに再発も何もないじゃん」みたいにちょっと思ったんですけど、よくよく考えてみると、「なんでこの問題が起きたのか?」っていうのをプロの視点からしっかり分析しないといけない』とわずかに触れていたが、ジャニー氏が未成年タレントに性加害を働いていたことは大問題ではあるものの、これは極論をいえば事務所と被害者の間で解決すればいいこと。この件の最大の問題点は、ジャニーズ事務所と、テレビや新聞といった大手メディアが共犯関係を築き、ジャニー氏の性加害を長年“なかったこと”のように振る舞ってきたところにある。

 少なくとも2003年には文春による“セクハラ被害”記事について『重要な部分について真実であることの証明があったものというべき』と高裁で認められ、2004年に確定したにもかかわらず、以降も10年にわたって被害が続いたとみられているわけで、事務所はこの問題を軽んじ、何ら対策を打ってこなかった。大手メディアもこの問題をスルーし続けてきたわけだが、それはジャニーズ事務所によるメディアコントロールによって黙らざるをえない背景もあった。

 メディアがジャニーズに対して忖度し続けてきたのは、逮捕されたジャニーズタレントを容疑者ではなく『メンバー』と報じたり、他事務所の競合グループがなぜか特定の音楽番組に出演できなかったり、退所者が地上波に出演する機会がほぼなくなったり、大きな売り上げが見込めるジャニーズグループのカレンダー発売権を手にした出版社の週刊誌が今回の性加害問題に一切触れていなかったりするあたりからも、世間の人にもじゅうぶん伝わっている。先日は博報堂が発行する雑誌『広告』において、批評家の矢野利裕氏がジャニーズについて語る対談の中で『メディアの独占的なコントロールやハラスメントなどはその問題性を追及されるべき』と発言した部分が、『ビジネスパートナーであるジャニーズ事務所への配慮の観点』から博報堂広報室長の判断で削除された騒動も話題になったばかり。

 中丸は“再発”について、『多分ないとは思いますけど、何か同じような大きいリスクを背負っている可能性も、もしかしたらあるかもしれない』と的外れなことを言っていたが、性加害問題が被害者との間で解決したところで、ジャニーズとメディアの癒着構造にメスを入れないかぎり、ジャニーズ事務所に沈黙を強いられるという意味での“再発”はいくらでも起こり得るし、むしろ“問題は解決した”と大々的なプロモーションがメディアで展開される未来が待っているだけでは」(前出・週刊誌記者)

 ジャニーズ事務所が「3つの対応策」を5月26日に発表したのを受け、NHKや民放各局はこぞって定例会見の場で今回の問題について言及したが、口をそろえて「前提として性暴力は許されない」「慎重に見守りたい」という発言に留まり、「なぜこれまで報道、検証できなかったのか」について語る場面はなかったようだ。テレビ報道でも、キャスターが「伝えてこなかった責任」について言及はしても、「なぜ伝えられなかったのか」にまでは踏み込んでいない。

 このまま、あくまで「創業者の犯罪と、それを認識できなかった事務所の組織体制」だけが争点として語られていくのだろうか。

黒崎さとし(編集者・ライター)

1983年、茨城県生まれ。ライター・編集者。普段は某エンタメ企業に勤務してます。

Twitter:@kurosakisatoshi

くろさきさとし

最終更新:2023/06/07 12:00
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