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米グアムに中国人が不法上陸しスパイ活動?82年前、日本軍にすぐ白旗あげた米軍

米グアムに中国人が不法上陸しスパイ活動?82年前、日本軍にすぐ白旗あげた米軍の画像1
レーダー施設が並ぶ海兵隊のキャンプ・ブラズ=米領グアム

 米領グアムで中国への警戒感が高まっている。台湾有事の際、米軍の重要基地を有するグアムは「最前線」になるが、避難施設が十分ではなく市民の不安が募る。一方で中国人がグアムにボートで不法上陸しようとするケースが相次ぎ、スパイ活動との関連性が疑われている。

 観光地として有名なグアムは新型コロナの感染拡大による入国規制が撤廃され、日本や韓国からの観光客がようやく戻ってきた。ところが5月24~25日にかけて、大型で強い台風2号(マーワー)の直撃に遭い、発電施設や道路、港湾施設などに大きな被害が出た。台風がグアムに猛威をふるったのは約20年ぶり。今回の被害で、観光客を再び迎え入れられるようになるまでに約1カ月かかった。

 グアム市民の警戒心は現在、自然災害に向けられているが、島民が台風と同等に不安視しているのが中国である。

 グアムにはアンダーセン空軍基地、アプラ海軍基地、海兵隊のキャンプ・ブラズの3つの米軍基地がある。アンダーセン空軍基地は戦略爆撃機の活動拠点となる重要基地だ。キャンプ・ブラズは在日米軍の再編計画で海兵隊の移転先として誕生した。海兵隊としては約70年ぶりの新基地として1月に開設された。4000人にのぼる海兵隊員が2024年以降、ここでの活動を本格的にスタートさせる。

 米国のシンクタンクなどは、台湾有事の際に中国人民解放軍はグアムのアンダーセン空軍基地を攻撃対象にしていると指摘している。2020年9月に人民解放軍が公表した動画に、アンダーセン空軍基地に似た施設が攻撃対象として描かれていたことから波紋を広げた。また人民解放軍の中距離弾道ミサイル「DF26」は「グアムキラー」との異名があり、アンダーセン空軍基地は戦闘の初期段階で狙われる可能性がある。

 米中対立の「最前線」としての緊張感は、観光地としてのにこやかな表情からはうかがい知ることはできないが、ロシアによるウクライナ侵攻に起因して台湾海峡の緊張が高まったことで、グアム市民の中国への警戒心は一段と高まっている。

 グアム大学で5月6日、「台湾危機を理解する」と題したシンポジウムが開かれた。シンポジウムにはグアム政府やアンダーセン空軍基地、マリアナ統合司令部、グアム港湾局、駐グアム台湾文化センターの各幹部、地元シンクタンクの安全保障専門家らが出席した。

 グアム市民は先住民のチャモロ族を中心に、グアムが戦場になった場合に米軍がグアムから退避してしまうのではないかと懸念している。第二次世界大戦で日本がグアムを占領した際の経験があるからだ。

 1941年12月8日、日本軍がハワイのパールハーバーを奇襲した2日後の12月10日、日本軍は夜明け前にグアム攻撃を開始した。米軍と、当時のグアム島軍は反撃を試みたものの、30分ほどの抵抗であきらめ、同日午前5時45分には降伏し、午前6時には米海軍隊長とグアム知事が降伏書面に署名した。グアムの米軍には、自らの身の安全のためにさっさと白旗をあげてしまったという過去がある。

 グアムは、米国本土もさることながら、ハワイからもはるかに遠い。防衛のための重要度は本土・ハワイに比べればかなり軽いだろうとグアム住民は自覚している。

 シンポジウムでの議論でもこの点が注目ポイントとなった。マリアナ統合司令部のマイケル・スミス大佐は「ここは米国の領土だ。我々の故郷だ。私たちはここに留まるために、ここにいる」と強調した。

 また、グアム政府のクライントン・リッジェル知事室首席補佐官代理は、米軍がグアムのミサイル防衛システム強化を推進していることを引き合いにして「(米軍は)南北、東西にミサイル防衛施設を設置することを協議している。これは米軍がここを離れないというサインだ。自国の資産を守ることを真剣に考えていなければ、これほどまでに多額の資金を(ミサイル防衛強化に)使うことはしない」と述べた。

 しかし、グアムには市民が避難するシェルターなどは整備されていない。台湾では有事などに備えて全土で約10万5000カ所のシェルターが設置され、人口の3倍以上の人が避難できるようになっている。台湾との落差に、この日のパネリストから「避難所はどこにあるのだ」と行政を批判する声があがっていた。

 中国の脅威は、直接的な軍事行動に対するものだけではない。グアムの北北東約170キロに位置する北マリアナ諸島からボートに乗ってグアムに不法上陸しようする中国人が絶えない。6月11月には6人、6月21日には21人がグアム当局に上陸を阻止された。

 北マリアナ諸島はサイパン島がある米国の自治領。グアムとは統治の形態が違うが、外国人が北マリアナ諸島に仕事をするために入国するには米国のビザが必要だ。27人の中国人はビザを取得して北マリアナ諸島に入ったが、ビザの期限が切れ、オーバーステイの状態だった。正式な形ではグアムに移動できないためボートによる不法上陸を企てた。

 中国人によるこうした違法な上陸は1990年代後半から2000年代初めにかけて多くあったが、最近、再び増加しているという。

 仕事を求めての移動とされるが、グアム当局は中国人の供述をすべて額面通りに信じてはいない。これまでの取り締まりで押収されたボートの中には、新品の強力なエンジンが取り付けられているものもあった。不法上陸の背景には組織の影がちらついているという。

 アンダーセン空軍基地の滑走路を一望できる丘の上に中国人の農民が小屋を設置して滑走路を監視していた疑いもある。不法上陸した中国人の中にスパイ行為に携わっている人間がいる可能性をグアム当局は認識している。

言問通(フリージャーナリスト)

フリージャーナリスト。大手新聞社を経て独立。長年の米国駐在経験を活かして、米国や中南米を中心に国内外の政治、経済、社会ネタを幅広く執筆

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最終更新:2023/07/10 09:00
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